経済アナリストの森永康平さんと株式会社クヌギの石川真太郎編集長が語る「金融リテラシー」とは?

キャッシュレス決済の普及や老後2,000万円問題など、お金に関する話題が相次ぐ中、金融に関する知識や判断力を指す「金融リテラシー」の向上が求められています。そこで、株式会社マネネCEOで経済アナリストであり、ARUHIマガジンのコラムでもお馴染みの森永康平さんと、株式会社クヌギの取締役でお金やクレジットカードに関する自社メディアを運営する石川真太郎さんによる対談を実施。金融リテラシーに関する見識や、経済・金融に関する情報収集の秘訣、話題のキャッシュレスについても語っていただきました。

森永 康平(経済アナリスト)

株式会社マネネCEO / 日本証券アナリスト協会検定会員
証券会社や運用会社にて日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOを兼任。著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
twitterは@KoheiMorinaga

石川 真太郎(WEB編集者)

株式会社クヌギ 取締役 / 「クレジットカードを知る」編集長
文章好きが高じ、小説家を志す。その後、ライター職を志すうち、縁あって株式会社クヌギに入社。WEBサイト運営業務に従事。ユーザー目線の記事作成で頭角を表し編集長に抜擢、現在は複数の自社運営メディアの編集長を務める。
クレジットカードを知る:https://www.woshiru.com/creditcard/

金融リテラシーを高める方法と、その効果は?

――近年、「金融リテラシー」という言葉をあちこちで聞くようになりましたが、「金融リテラシーが高い人」とはどのような人でしょうか?

石川さん:森永さんがTwitterで発信していたことですが、私も「自分で情報を知って動ける人」はリテラシーが高いと思います。取得した情報をいかに自分で処理し、次の行動をとるか。アウトプットできるかどうかが大切です。

森永さん:最近「金融リテラシー」という言葉が流行り出し、「金融教育」という言葉を聞くことも増えてきました。ただ、日本では金融教育というとNISAやiDeCoといった投資ばかりフューチャーされますが、お金は投資するだけでなく、使うことや貯めること、詐欺に騙されない知識も必要です。もっと全般的なお金の知識や判断力があってこそ、「金融リテラシー」を身に着けたと言えるのではないでしょうか。

――金融リテラシーを高めれば、プライベートや仕事にも生かせるでしょうか。

石川さん:プライベートに関しては、お金を使う際も、貯める際も生きてきます。例えば、クレジットカードの知識があれば効率的にポイントを貯めながらお得に買い物ができますし、投資の知識を身に着ければ、積立NISAなどで長期的に少しずつお金を増やしていくこともできます。

仕事にも生かせるかどうかは、その人の職種によって異なるでしょうね。私自身は株式会社クヌギでメディア運営を通じて金融関連の記事を提供しているため、金融リテラシーを向上させることで正しい知識を記事に落とし込み、読者の皆さんに正しい情報を広めることができています。

森永さん:プライベートでは、様々な誘惑に対して正しい判断を自分で出来るようになるといえます。例えば仮装通貨に対して過剰な期待をして詐欺に遭う人がいる一方で、危ないという話を聞いて必要以上にリスクを感じてしまう人もいます。金融リテラシーがあれば、「これさえすればお金が増える」という誘惑に惑わされず、物事を正しく判断できるでしょう。

仕事に関しては、私はそもそも金融が一つの業種のように扱われていることがおかしいと感じています。業種を問わず、どんな仕事をするにもお金が絡んでくるので、お金の知識があれば、どの業種でも仕事の質は上がるはずです。

情報を収集する方法と、その活用法とは?

――お2人は収集した金融・経済面の情報を、仕事でそれぞれどうアウトプットしたり、活用されたりしていますか? また、そうした情報を知るのにオススメのメディアも教えてください。

石川さん:朝は新聞を、昼は「ITmediaビジネスオンライン」や「ダイヤモンド・オンライン」、「日本経済新聞」などのビジネスメディアを、夜はテレビでのニュースチェックが日課です。

森永さん:私も似ているのですが、ここ1年半ほどは基本的に、Twitterでニュース系のアカウントをフォローし、記事の見出しと最初の数行をチェック。気になった記事は本文も読みます。また、できるだけ海外のメディアにも目を通しています。「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「フィナンシャル・タイムズ」といった英語系の媒体や、中国の話題は中国語の記事を読むことで、日本のメディアで追い切れない、深堀りした情報を得ています。

「英語の記事なんて読めない」という人が多いのですが、日本人の多くがネイティブの会話を聴き取ることができなくても、文字情報であれば読む力を持っています。翻訳された記事を待っていたらタイムラグが生じますし、日本駐在記者が書く記事よりも、現地メディアが報じた記事のほうが深く入り込んだ内容を網羅しています。

石川さん:森永さんのTwitterを拝見していると、「ロイターニュース」や「ブルームバーグ」といった海外メディアも網羅していて「どれだけ広範囲に情報収集をしているのだろう」と気になっていました。

――中国語の記事まで読まれているんですね。国内外問わず、情報の信憑性をどう見極めていますか?

森永さん:記事と合わせて、元データを必ず確認しています。データが前年比なのか、前月比なのかといった加工の仕方によって読み手の受ける印象を大きく変えたり、事実を歪めたりすることもできてしまうからです。なので私は、元データをダウンロードしてグラフにし、事実を突き詰める行為を繰り返すようにしています。そうすると、掲載されている記事が忖度した内容なのか、実態から意図的に歪曲して表現している記事なのかといったこと、更に言えば媒体ごとの特徴が見えてきて、情報の取捨選択がスムーズになるんです。現地の記事を読み、現地の統計局からデータをダウンロードしてまとめる作業はどうしても時間がかかりますが、作業の一部は自動化してデータ収集を効率化しています。

石川さん:私も、メディアだけでなく総務省の「家計調査」や国税庁の「民間給与実態統計調査」などのデータも見ながら、相対的に判断しています。新聞は2紙以上、ニュース番組はNHKと民放局など2番組以上を見比べて相対的に判断するなど、情報が偏らないようにすることも大切にしています。

――そうして見極めながら得た情報を、お2人はどう整理していますか?

石川さん:時事的な話題はSNSのタイムラインやメディアのトップに表示されるものをその場で読みますが、面白系の記事は「はてなブックマーク」にまとめて後で読み返せるようにしています。

森永さん:メッセージツールのSlackで自分用のワークスペースを作成していて、「Twitterに投稿する記事」「後で読む記事」など、チャンネルを作って振り分けています。ただ、基本的に情報は溜めず、その日のうちに読んでおくべきだと思っています。そして情報がアップデートされたときに、元の情報と比較することも大切です。

――情報収拾のコツを会得されているお2人ですが、はじめの頃はどのように金融知識を得ていたのでしょうか。

石川さん:昔は紙の新聞から情報を得ていました。でも、今の若い世代にとっては、紙の新聞は就活などの目標がないと、とっつきにくいと思います。私自身、今ではすっかり電子版派ですね。あとは、漫画で経済学を解説する書籍なども、初心者にはとっつきやすいかもしれないですね。

森永さん:私は最初、運用会社に入社したのですが、日経新聞は朝刊と夕刊を全てスクラップしていました。気になる記事があると切り抜いてノートに貼り、分からない言葉にマーカーを引き、意味を調べて書き出す。その作業を6年ほど続けていました。最初は先輩の見よう見まねで作業をすることで精いっぱいでしたが、1、2年継続していると理解が深まってそのうちに言葉を調べなくて良くなり、中身に集中できる瞬間がきたんです。そうして最終的には、記者の勉強不足が分かったり、そうした記事にはケチをつけたくなってきたりしました。

紙の新聞のいいところは、見開きで全ての記事が載っているため、読む気のない記事も含めて自然と目に入ること。インターネットでも同様の記事は読めますが、自分が読みたいものしか読みにいかないため、知識が狭くなってきます。日本経済新聞は政治欄など、金融経済系ではない記事もコンパクトにまとまっているため、様々な知識を得やすかったですね。

キャッシュレス決済はどう活用している?

――石川編集長は、クレジットカードの媒体の編集長をされていますよね。消費税率の引上げにともない、今キャッシュレス決済が推進されています。キャッシュレス決済の利用も金融リテラシーが必要に思えますが、お2人は利用されていますか?

石川さん:私は支払いはほとんどがクレジットカードです。家計管理ツール「マネーフォワード」を連携させることで、引き落とし金額などをアプリからチェックできるようにしています。「〇〇Pay」系の決済サービスは、還元率の最大化を意識すると新規のクレジットカードやポイントサイトへの登録が必要になるので、基本的には利用していません。

森永さん:私は現金とクレジットカード、時々交通系電子マネー「Suica」を利用しています。私も「〇〇Pay」系は利用していません。クレジットカードは個人用と法人用を持ち歩き、私費と経費で使い分けています。

その一方で、金融教育のためには現金を使うことも大切だと感じています。私には3人の子どもがいますが、決済をする場にできるだけ立ち会わせるようにしています。いきなりクレジットカードを使ってしまうと、子どもからすればなんでも買える魔法のアイテムのように映ってしまうので。

石川さん:確かにアプリゲームに課金する際も、クレジットカード決済が主流ですし、お金の重みを知る機会が減っているように感じます。しかも最近は子どもが親の財布からカードを抜き取り、無断で課金してしまうトラブルが後を絶たないとか。まさしく、お金の重みが分かっていないから起こしてしまった行動ですよね。

森永さん:私の家では子どもに貯金箱を持たせて現金を手渡し、お金を入れる経験をさせています。上の子は6歳なので、ある程度は理解できていますが、下の子は2歳と4歳ですから、その金額がどれくらいの価値があるかはよく分かっていないと思いますが、お金を入れると貯金箱が重くなり、ぬいぐるみを買ったら貯金箱が軽くなることは理解できます。お金を使って人形が買えて嬉しい気持ちも、お金が減って悲しい気持ちも大切な感覚です。その経験を若い時からしておけば、大人になった時に失敗するリスクを軽減できるのではと思っています。

――最後に、現在20〜30代の読者は情報とどのように向き合い、どう活用すべきかご教示ください。

石川さん:まずは、金融情報に触れる習慣をつけて欲しいですね。新聞を読むことでも森永さんのツイートをフォローすることでも、最初はなんでも構いません。何かしらに興味を持てば、そこから世界が広がると思います。

森永さん:経済は、同じことの繰り返しです。古くはオランダでチューリップの球根価格が高騰した「チューリップ・バブル」や1929年の「世界恐慌」など、常にバブルが発生し、クラッシュしています。情報を継続して追っていれば、いつ頃にバブルの波が来るのか、ある程度予想することができるようになります。バブルがいつ弾けるかは誰にも分かりませんが、確かなのは「いつかは弾ける」ということ。その事実を知っていると、投資において「そろそろ一度、利益を確定しておこう」といった判断できるようになりますし、そうなれば「金融リテラシーが身についた」と言えるのではないでしょうか。

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