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住宅ローンの審査は、年収や借入時の年齢などを見て、総合的に判断されます。その中でも年収は、金融機関が「借入者(契約者)が継続して返済していけるか」を見極める重要な要素と言えるでしょう。年収が高く、安定している場合は「返済能力あり」と金融機関から判断されることが多いですが、年収が低くても問題なく住宅ローンは組めるのでしょうか。今回は“年収300万円以下の世帯”に焦点を当てて見ていきたいと思います。

年収が低くても住宅ローンの申し込みはできる?

住宅ローンの審査基準は各金融機関によって異なりますが、“年収が低い”という理由だけで住宅ローンの申し込みができないということはありません。

一部の金融機関では、“年収300万円以上であること”など年収に制限を設けているようですが、一般的には“年収○○万円以上であること”を申し込みの条件にはしていません。

 

<各金融機関の利用者の条件>
金融機関と商品名 利用できる人(※)
三菱東京UFJ銀行 住宅ローン ・年齢が借入時に20歳以上70歳の誕生日まで、完済時に80歳の誕生日までで、保証会社の保証を受けられる人
・団体信用生命保険に加入できる人
・日本国籍の人または永住許可等を受けている外国人
みずほ銀行 みずほ住宅ローン ・満20歳以上71歳未満で、最終ご返済時の年齢が満 81 歳未満の人で、保証会社の保証を受けられる人
・団体信用生命保険に加入ができる人
・安定した収入のある人
・原則、日本国籍の人または永住許可等を受けている外国人
三井住友銀行 三井住友住宅ローン ・満20歳以上満70歳の誕生日までの人で、完済時満80歳の誕生日までの人で、保証会社の保証を受けられる人
・団体信用生命保険に加入できる人
住信SBIネット銀行 ネット専用住宅ローン ・ 満20歳以上借入時満65歳以下で、最終返済時の年齢が満80歳未満である人
・ 安定かつ継続した収入がある人
・ 三井住友信託銀行指定の団体信用生命保険に加入が認められる人
・ 国内にお住まいの人
住宅金融支援機構 【フラット35】
(取り扱い金融機関の例
  アルヒ株式会社 ARUHIフラット35)
・申し込み時の年齢が70歳未満、最終返済時80歳未満の人
・日本国籍または永住許可を有する人
・年収に占める、すべての借り入れの年間返済額(本件融資を含む)の割合(=返済負担率)が下記基準を満たしている人
  年収400万円未満…30%以下
  年収400万円以上…35%以下

※ご利用条件の一部を抜粋。申し込みにおいては記載以外の条件もありますので、詳しくは各金融機関へお問い合わせください。

上表のように、年収に制限はないものの、年収によって借り入れできる金額は変わってきます。

一般的に年収が上がれば、借り入れできる金額も上がります。その基準として、返済負担率(=年収に占めるすべての借り入れの年間返済額(本件融資を含む)の割合)があります。

各金融機関によって、返済負担率の基準は異なりますが、【フラット35】では、以下のようになっています。

 

年収 400万円未満 400万円以上
基準 30%以下 35%以下

年収300万円世帯の人が住宅ローンを借りる場合は、返済負担率が30%以下であることが条件となりますね。

ただし、返済負担率には車のローンやカードの分割払いなど、住宅ローン以外の借り入れも含めて計算されますので、注意しましょう。

では実際に年収300万円の人が住宅ローンを組む場合、いくらまで借りることができるのか、シミュレーションしてみましょう。

年収300万円世帯の人の住宅ローンシミュレーション

【フラット35】で住宅ローンを組む場合、返済負担率が30%以内に収まるようにしなければなりません。
したがって、

300万円×30%=90万円(年間返済額)

となります。つまり年間の返済額を90万円、月々の返済額を7万5,000円までに抑えれば良いわけです。

では、今月の金利で計算してみましょう。

条件
・年収300万円
・全期間固定金利【フラット35】0.93%(融資率9割以下、返済期間21年以上35年、2016年7月実行金利)
・返済期間35年
・元利均等返済、ボーナス返済なし
・住宅ローン以外借り入れはないものとする
月々返済額 借入可能額 返済負担率
7万5,000円 約2,600万円(10万円以下切り捨て) 30%(限度)
6万2,500円 約2,200万円(10万円以下切り捨て) 25%
5万円 約1,700万円(10万円以下切り捨て) 20%

※団体信用生命保険料は別途年払いで払うものとする。

年収300万円の人が【フラット35】を借りる場合、今月の金利で上限まで借りるとすると約2,600万円借り入れることができます。

ただ、借り入れできるだけ借りてしまうというのはあまりお勧めできません。住宅ローンの返済は長期にわたるので、無理なく返済していけるかどうかが大切です。

一般的には、返済負担率25%以内が無理なく返済していける目安となりますので、今回の例ですと、借入額を約2,200万円以下にしておいた方が良いでしょう。

年収300万円世帯の人は3,000万円の物件を購入できる?

今回の例では、年収300万円世帯の人は約2,600万円までしか借り入れることができません。

そのため、3,000万円の物件を購入しようとすると借入可能額を大幅に上回り、審査に通ることが難しくなります。

審査を通りやすくするには、事前に良い材料を揃えておくことが求められます。

年収に不安がある相談者に対し、筆者がよくお勧めするのは以下の対策です。

1:頭金を少しでも増やす
前項のとおり、返済負担率で年間返済額の上限が決められているので借入額にも限度があります。

購入したい物件が借入額の限度を超えている場合には、頭金を多めに出し、借入額の限度内に納まるようにしましょう。

頭金を貯めるのには時間がかかりますが、希望物件の相場が収入と比較して高めの場合は有効な手段と言えます。

2:夫婦合算を最大限使う
意外とよくあるのが、「年収300万円以下というのは夫だけの年収で、他に妻のパート収入が60万円程度ある」のようなケースです。

パートである上、月に5万円程度なので合算できると思わなかった、という人が多いです。

収入合算をどこまで認めるかは金融機関により差があり、「世帯主の収入の半分を上限」「収入合算者の収入の半分を上限」「収入合算者の収入全額」などさまざまです。

パート収入では合算不可の金融機関がある一方、全額合算を認めてくれる金融機関もあります。年収300万円超で審査を申し込みたい、という場合は、収入合算を広く認めてくれる金融機関を選ぶといいでしょう。

3:物件価格を抑える
頭金に相当する金額はあるものの、子どもの教育費がかさむので手元に資金を残しておきたいといった場合や、妻が産休・育休中で収入合算することが難しいなどの場合は、やはり年収に見合った価格の物件の購入をお勧めします。

頭金を用意するのも、物件価格を抑えるのも、どちらでも借入額が低くなるのは同じです。

状況や時間的余裕に合わせて使い分けや併用を行いたいですね。

4:必要書類を複数用意しておく
どんなに事前準備をしても、審査基準がすべて公開されているわけではないので審査に通らないことはあります。

1つの金融機関に絞ってしまうと、審査に落ちた時に次の候補を探し、また必要書類を揃え直して……という手間も余分にかかります。

必要以上に複数の金融機関に申し込むのはお勧めしませんが、万が一のことを考え、必要書類を取得する時に複数用意しておくなど、最初から準備をしておくことで、効率的に手続きを進めることができるでしょう。

「年収300万円でも、ローンを組むことは可能なのか?」その答えはYesです。

ただし、住宅ローンの審査は「人」や「物件」など総合的に判断されることを覚えておきましょう。

また条件や借入可能額には制限があります。それがご希望の物件購入費用に足りない場合は、上記に挙げたさまざまな対策を検討され、納得のゆく住宅ローンが組めるよう1つ1つ取り組んでください。

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この記事の筆者
横山晴美 ファイナンシャル・プランナー ライフプラン応援事務所代表 AFP FP2級技能士 住宅ローンアドバイザー 2013年にFPとして独立。企業に所属せず、中立・公平の立場で活動する。新規購入・リフォーム・二世帯住宅を問わず、家に関することなら購入額から返済計画まで幅広く対応。また、住宅購入は家計・教育費・老後資金・相続など多くの視点が必要なため、ライフプランを見据えた相談を行う。
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