住宅ローンの選定で“金利以外”に重視したいところは? FPが実際に受けた相談事例

住宅ローンのご相談で、よく「金利が低いので、この住宅ローンを組みたいのですが」と言われることがあります。多くの方は、実際に適用される金利を重視して住宅ローンを決めてしまいがちです。金利が高くなれば当然支払う利息も増えるので、“金利”は重要な要素ではありますが、住宅ローンは金利だけでなく、総合的に判断しなければなりません。では具体的にどんな点に注目すれば良いのか、3つのポイントをご紹介しましょう。

住宅ローンの諸費用も考慮しよう

住宅ローンでは、事務手数料や保証料などの諸費用が発生します。諸費用は商品や各金融機関によって差があるため、事前に内容を把握しておくことが必要です。では、その内容を、具体例も用いて見てみましょう。

<Aさんの場合>

物件価格:3,500万円
物件種別:新築マンション
住宅ローンの借入額:3,000万円頭金500万円
返済期間:35年
全期間固定金利【フラット35】融資比率9割以下(21年以上35年):1.10%(2016年6月時点)
団体信用生命保険加入

住宅ローンの諸費用

金融機関により多少の差はありますが、主な諸費用は以下の通りです。

種類 内容 Aさんの場合
住宅ローン契約書にかかる印紙税 借入額により決定
(例えば1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円、5,000万円超の場合は6万円)
2万円
 事務手数料 定額制(3万円~10万円程度)や定率制(借入額の1.0%や3.0%程度)がある 借入額の2.16%(税込み)=64万8,000円
 住宅ローン保証料 金額は借入額、返済期間、与信状況によって異なり、支払い方法には「一括前払い」と「分割払い(金利上乗せ)」がある
・「一括前払い」の場合、借入額3,000万円、返済期間35年で60万円程度
・「分割払い(金利上乗せ)」の場合、0.2%程度の上乗せとするケースが多い。近年は保証料無料の金融機関も増加
【フラット35】の場合、保証料は無料なので0円
 団体信用生命保険の特約料 借入額、借入期間、保障内容、商品によって異なる
(特約料が金利に含まれているものが一般的だが、金利に上乗せされるもの、別途年払いのものもある)
【フラット35】の場合は、別途年払い
10万7,400円(初回)
※残高に応じて支払う金額は変わる
 火災保険料・地震保険料 地域・建物構造・保険期間によって異なる。一般的に、一戸建て住宅よりマンションの方が割安
(例えば、一戸建ての場合、保険料は1年間で2万円前後だが、マンションの場合、保険料は1年間で1万円程度になる)
※例は1年契約の場合。商品にもよるが、通常5年・10年といった長期契約も可能。長期契約の場合は年払い、もしくは一括前払いなども選択可能
火災保険料(地震保険付き)で、1年あたり保険料は9,350円
※契約期間は5年契約とする
 抵当権設定にかかる料金 「登録免許税」と「登記手数料」など。借入額や司法書士によって異なる
(登録免許税は借入額の1.5/1,000、抵当権設定は借入額の1/1,000となる。例えば3,000万円借り入れる場合の登録免許税は4万5,000円、抵当権設定にかかる税金は3万円)
※ともに軽減税率適用。司法書士報酬は個別に異なるが6~8万円程度が一般的
登録免許税:4万5,000円
抵当権設定費用:3万円
司法書士報酬:8万円

住宅ローンに関わる諸費用のうち、金融機関ごとに大きく差が出るのは、事務手数料・保証料・団体信用生命保険の3つになります。詳しく見ていきましょう。

「事務手数料」は、住宅ローンを組む際に金融機関へ支払うお金です。一般的に支払い方法は定額制と定率制のいずれかで、借入額が少ないなら定率制、金額が多いならば定額制の方がお得になります。ただし、定率制では最低金額が設定されていることもありますので注意しましょう。

「保証料」は、一括前払いと分割払い(金利上乗せ)があります。一括前払いの方が総支払額は少なくなるケースが多いですが、家計が苦しいようなら無理せず分割払い(金利上乗せ)タイプを選ぶことをおすすめします。なお、中には保証料無料の金融機関もありますので借入前にチェックしておきましょう。

保証料の傾向として、「保証料が安いと事務手数料が高め」「事務手数料が安いと保証料が高め」となっていることが多いです。また、事務手数料がなく、保証料の中に「手数料」という名目で保証料とは別の費用項目を設けている金融機関もあります。そのため、この2つはセットでいくらかかるのか、という視点で考えると良いでしょう。
「団体信用生命保険」については次の項目で詳しくご紹介します。

返済中に“支払えなくなる”というリスクも考えよう

住宅ローンの返済期間は長期にわたるため、返済中の病気や失業などのリスクがあります。それをカバーするのが団体信用生命保険(以下、団信)です。

団信は、ローン返済中に契約者(ローン返済者)が亡くなった、もしくは高度障害状態に陥った場合に、ローン返済者の保険金をもって住宅ローンの残高をゼロにする、という仕組みです。
これに加え、がんと診断された場合に保障される「がん特約」など、団信に上乗せできる様々な特約が登場しています。主なものを以下にあげます。

団信にプラスαとしてつける保険の種類 保障内容
がん特約 所定のがんと診断された場合、ローンの残高がゼロになる
3大疾病 がん・急性心筋梗塞・脳卒中と診断された場合、ローンの残高がゼロになる
8大疾病 3大疾病に加え、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎状態になった場合、ローンの残高がゼロになる
疾病・入院・失業特約 病気やケガ、失業状態になった場合、一定期間住宅ローンの返済が保障される。最長で1~3年と、利用上限を設けられているのもが多い
夫婦特約 夫婦どちらかに万が一のことがあった場合、住宅ローンの残高がゼロになる。通常、夫婦で連帯債務となって住宅ローンを組んでいる場合のみ利用できる
ワイド団信 引き受け条件が緩和されており、健康状態に不安があっても加入できる

※詳細要件は金融機関ごとに異なります。

このように多くの特約があるのは、ローンを返済できなくなる様々なリスクがあるということでしょう。
団信の特約料には、契約者が負担するものと金融機関が負担するものがあります。がん特約など、プラスαとして付ける保険の特約料については契約者が負担することがほとんどです。健康面に不安材料が多い方なら、多少費用がかかっても特約を付する価値はあります。しかし、健康面に不安が少ない方や他の保険で補える場合がある方については、特約をつけるかどうか必要に応じて判断しましょう。

ライフプランを考慮する

住宅ローン選びには、家族それぞれのライフプランも重要です。住宅ローンの返済は長期にわたりますので、「返済しやすく、リスクを抑えた」住宅ローンを選ぶことが大切です。
ライフプランを考慮して住宅ローンを決める際は、「どの金利タイプを選ぶか」と「保険の手厚さをどうするか」がポイントになります。まずは具体例を見ていきましょう。

「変動金利」を選んだAさんの場合(50代・夫婦共働き・子ども2人)

子どもは2人ですが、既に社会人です。夫婦共働きで家計に余裕があるため、返済期間を短くしても返済が可能であり、多少の金利上昇には耐えうることから、変動金利を選択しました。夫婦で連帯債務を選択したため、夫婦で団信のみに加入することになりました。保障が厚めの医療保険に加入済なので、特約は付けていません。家計に余裕があるうえに、健康面でのリスクヘッジも厚い家庭のため、金利の低い変動金利を選択することで毎月返済額を抑えることができました。

「全期間固定金利」の【フラット35】を選んだBさんの場合(40代・夫と専業主婦・子ども1人)

夫のBさんが世帯主として家計を支えています。金利の低い変動金利も検討しましたが、子どもの教育費のピークが間近なため、教育費のピークに金利が上昇すると家計が厳しくなることを踏まえ、毎月返済額が安定している全期間固定金利の【フラット35】に決定しました。妻が働いていないため、団信は入院・失業保険を特約としてつけました。変動金利と比較すると金利はやや高めなため、毎月返済額はやや高くなりますが、返済額が上がらないという安心感を持って返済することができます。また、教育費のピークが終わり次第繰り上げ返済を行い、総返済額を抑える予定です。

<AさんとBさんの状況比較>

  Aさん Bさん
年代 50代 40代
家計 夫・妻の収入 夫のみの収入
状況 教育費は支払いは終わっている 教育費のピークが目前で、そこを乗り越えるまで返済額は一定であってほしい
保険 団信のみ(夫婦) 団信+入院・失業保険(夫のみ)
金利タイプ 変動金利 全期間固定金利(【フラット35】)

まとめ

住宅ローンで金利以外に重視したいポイントを3つご紹介しました。これらのポイントを、どのように住宅ローン選択に生かせば良いのでしょう。考え方の順序は以下のようになります。

1.「ライフプラン」:家族の状況と今後の家計の余力を見極め、変動金利か固定金利かの金利タイプを決める
2.「返済中のリスク」:返済時の家計リスクを特定し、団信の特約をどの程度つけるのか決める
3.「諸費用」:保証料や事務手数料といった諸費用を商品や金融機関で比較し、いくら必要なのかチェックする

まず「ライフプラン」という大枠から金利タイプを選び、「返済中のリスク」の観点から団信の特約を決め、最後に「諸費用」をチェックする、という流れで住宅ローンを選択することが大切です。

多くの方が住宅ローン選定時に重視している「金利」はあくまで、最後の個別選択の要素の一つとなりますので、“金利が低いから”という目先の情報だけで判断するのではなく、上記1~3の流れのように総合的に判断して、自分に合う住宅ローンを選びましょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
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