がんや三大疾病などに備えた「疾病保障付きの団体信用生命保険」は入っておいた方がよい?

最近、種類も増えている「疾病保障付きの住宅ローン」は「病気で仕事ができなくなり、収入がなくなって住宅ローンの返済ができなくなったら…」という心配に応える商品です。ただし、商品によって対象となる病気や給付の条件、保険料などはさまざま。どんな商品があるのか見比べた上で、住宅ローン返済中の病気リスクへの備え方を考えてみましょう。

疾病保障付き住宅ローンとは

そもそも、住宅ローンを利用する際には、ほとんどの場合「団体信用生命保険」に加入することが必須で、保険料はローン金利に含まれています(【フラット35】の場合は任意加入で、ローン返済額の他に保険料負担が必要です)。「団体信用生命保険」は、住宅ローン返済中に利用者が死亡・高度障害(→表1)となった場合に、その時点のローン残高に相当する保険金が金融機関に支払われ、借入金が精算されるという保険です。死亡時だけでなく、生存していて高度障害状態にある場合にも保障されるのですね。

<表1:高度障害保険金の受取対象となる高度障害状態>

・両眼の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの

※生命保険文化センターHPより
http://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/life_insurance_q25.html

とはいえ、団体信用生命保険の保険金受取対象となるような高度障害ではなくても、返済期間中に病気によって働けなくなり、返済が難しくなる可能性もあります。その心配に答えるのが、通常の団体信用生命保険に加えて疾病に対する保障がある、「疾病保障付きの団体信用生命保険」です。所定の疾病にかかり条件を満たせば、一定期間の毎月返済額相当額が保障されたり、保険金でローン残高が一括返済されたりする仕組みになっています。加入可能年齢の上限は40代半ば~50代半ば程度まで 。加入の際の診査は通常は告知のみですが、借入希望金額が一定額以上の場合等は健康診断結果証明書等の提出が必要になる場合もあります。

対象となる疾病と保障のタイプは、主に「がん」「三大疾病」「8大疾病」(→表2)で、さらに、その他の病気やけがの保障、失業時の保障、妻の保障(女性特有のがん)なども保障するタイプもあります。 
がん保障の場合は「医師にがんと診断されれば」保険金の支払い対象となることがほとんどですが、「三大疾病保障」「8大疾病保障」等の場合は医師の判断する「所定の状態」や一定の「就業不能状態」が一定期間以上継続することなど、保険金の支払条件が細かく定められています。

保険料は、0.1%~0.4%程度をローン金利に上乗せして支払うタイプが多くなっていますが、無料のものもあります。金利上乗せではなく、年齢や性別に応じた保険料を支払うタイプが用意されている金融機関もあります。一般に、保障範囲が広いほど、保険料負担は重くなります。同じ疾病を対象としていても、支給条件や保障内容は異なる場合があるので注意が必要です。

<表2:疾病保障付き団体信用生命保険の種類の例>

保障のタイプ 概要 保険料例
がん保障 がん(上皮内がんは除く)と診断された場合に保険金が支払われ、残債の返済に充てられて、ローン残高はゼロに。 住宅ローン金利に0.1~0.2%の金利上乗せ。
三大疾病保障 がんの保障に加え、急性心筋梗塞、脳卒中で「所定の状態」が60日以上続いた場合に保険金が支払われ、残債の返済に充てられて、ローン残高はゼロに。 住宅ローン金利に0.3~0.4%の金利上乗せ。
●大疾病保障 三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に加え、高血圧症・糖尿病・慢性膵炎・肝硬変・慢性腎不全などの重度慢性疾患も対象。対象となる疾病数に応じて、「8大疾病保障付き」「11大疾病保障付き」等の名称となっている。一定期間以上「所定の状態」や「就業不能状態」が継続した場合に保険金が支払われる。第1段階として一定期間毎月のローン返済額相当額が給付され、その後も就業不能状態が継続した場合などに、第2段階として保険金が残債の返済に充てられて、ローン残高はゼロになるというタイプが多い。
●大疾病保障+α 三大疾病や重度慢性疾患の保障に加え、その他の病気やけがへの保障、妻の保障(女性特有のがん等への診断一時金)、失業などへの保障も付加されている。

※保障内容や保険金支払い条件は商品によって異なります。

返済期間中の「病気」は生命保険でカバーできる?

住宅ローン返済中の病気によって仕事ができなくなり、ローン返済が難しくなった場合への備えとしては、「就業不能保険」や「所得補償保険」があります。病気やけが(精神疾患など一部対象外となるものもある)によって入院したり、医師の指示のもと自宅療養を行ったりして就業不能となった場合に、あらかじめ契約した月額10万円、15万円といった年金形式で給付金が支払われます(一時金支払いの商品もあります)。保険料は、保険金額、保険期間、年齢等によって異なります。

就業不能保険や所得補償保険は、疾病保障付きの団体信用生命保険のように特定の病気が対象ではなく、保険期間や保険金額も加入者が選択することができます。また、受け取った保険金は住宅ローン返済に充てるだけでなく、生活費等の他の用途にも使えます。ただし、ローンの残債が保険金によって一括返済されるということはないので、保険金を受け取りながら返済を続けていくことになります。

保障と保険料の納得できるバランスを考えて

どんな保険を利用するにしても、保険期間中に保険金が受け取れるか、加入していてよかったと思える事態になるかどうかは、保険期間が終わってからでなくてはわかりません。

したがって、疾病保障付きの住宅ローンや就業不能保険等を利用するかどうかは、どんな病気が心配なのか、どんな保障が得られれば安心なのか、その保障に対して納得できる費用負担はどれくらいか、自分なりの基準を考えて、検討する必要があります。仮に、借入金額2,000万円、返済期間30年金利1.0%の住宅ローンに、金利が0.1~0.4%上乗せされた場合の返済額の違いは下記のようになります(→表3)。

<表3:上乗せ金利による返済額の違い>
借入金額2,000万円、返済期間30年、金利1.0%、元利均等返済、毎月返済のみの場合

金利(上乗せ金利) 1.0% 1.1%
(+0.1%)
1.2%
(+0.2%)
1.3%
(+0.3%)
1.4%
(+0.4%)
毎月返済額 6.5万円 6.6万円 6.7万円 6.8万円 6.9万円
総返済額 2,316万円(a) 2,350万円 2,383万円 2,417万円 2,451万円
保険料相当額
(総返済額-a)
34万円 67万円 101万円 135万円

※【フラット35】HPの「ローンシミュレーション」を利用して、筆者試算

たとえば、多くのがん保障付き団体信用生命保険は、対象となる疾病は「がん」に限られますが、「がんと診断されたら」保険金でローン残高が完済されます。保険料は上乗せ金利0.1%程度なので、「このくらいの保険料でがんに備えられるなら」と納得できれば、利用するのもよいでしょう。

「がん以外の病気も心配だ、上乗せ金利が0.3~0.4%程度あっても構わない」ということであれば、三大疾病保障付きや、8大疾病保障付きなどの保障がどんな場合に得られるかを詳しくチェックし、保障内容に納得できるかを確認しましょう。

「費用はかけたくないが、保障が少しでもついていれば安心」であれば、保険料無料の疾病保障付き住宅ローンもあります。ただし、保険金支払い条件がより厳しく、保険金支給の可能性が低い場合もあるので、詳細を確認しておきましょう。

また、多くの疾病保障付きの住宅ローンは、返済途中で疾病保障分だけを解約することはできません。残債が少なくなったり、家計に余裕ができたりした場合でも、返済終了まで上乗せ金利の負担が続くことも考えておきましょう。

得られる保障に対して費用の額が納得できなければ、疾病保障付き住宅ローンを利用しない選択肢ももちろんあります。多くの保障を備えていてもすべてのリスクには備えられませんし、保険料負担で家計が圧迫されて返済が困難になっては本末転倒です。
疾病保障付きの住宅ローンは、保険金を受け取ることなく住宅ローン返済が終わった場合でも、「保険料を払っていたおかげで安心して返済が続けられてよかった」と思えるような保障や保険料であるかを考えて、利用を検討されるとよいでしょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
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