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我が家の住まいについて購入するか、賃貸を選ぶか。多くの人が迷い、なかなか答えを出せない「難問」です。そこでマイホームを購入して住むケースと賃貸物件に住むケースを取り上げ、金銭面、住み心地の面、ライフスタイルの面の3つの視点で比較し、購入と賃貸、どちらがより大きなメリットがあるのかを考えていきましょう。

購入or賃貸 比較1 金銭面ではどう違う?

購入の場合~かかる費用の内訳

マイホームを購入する場合において、一時的に負担する費用と毎月支払う費用、年に1回支払う費用に分けて見ていきましょう。

まず、一時的に負担する費用として、登録に関連する諸費用と住宅ローンに関する諸費用があります。登録に関する諸費用としては、例えば売買契約書の印紙代、登記費用、都市計画税、登録免許税や固定資産税(※)、不動産取得税、印紙税などがあります。

またマンションの場合は将来の修繕に備える修繕積立基金などもあります。住宅ローンに関連する費用としては事務手数料、保証料、団体信用生命保険の特約料、火災保険料、そして頭金(頭金を入れずに組める場合もある)などが必要になります。

これらの購入にかかる諸費用の目安は、一般的に新築では購入価額の3~5%程度、中古では仲介手数料が発生するため、購入価額の6~10%程度と新築より高めになります。

毎月支払う費用としては、マンションの場合は、管理費、修繕積立金、住宅ローンの返済額があります。そして、年に1回支払う費用には、固定資産税(※)があります。また住宅ローンによっては、団体信用生命保険の特約料を毎年1回払うこともあります。

少々分かりづらいので、下記の表にまとめました。あわせて見てみてください。

 
  • 費用の詳細
一時的に負担する費用
  • ■登録に関する諸費用
  • ・税金(登録免許税、固定資産税(※)、不動産取得税など)
  • ・登記費用
  • ・修繕積立基金など
    ■住宅ローンに関する費用
  • ・融資に関すること(事務手数料、保証料など)
  • ・保険に関すること(火災保険料、団体信用生命保険の特約料など)
  • ・頭金
毎月負担する費用 管理費、修繕積立金、住宅ローン返済額など
1年に1回負担する費用 固定資産税(※)、(団体信用生命保険の特約料)

※固定資産税は、登録時にも支払います。

賃貸の場合~かかる費用の内訳

賃貸する場合は、購入よりも初期費用がかかりません。まず賃貸契約時に家主に支払う礼金が家賃の約2ヶ月分、部屋の補修費などに充てるために預ける敷金が約2ヶ月分(原則として退去時に戻る)、不動産会社の仲介手数料が約1ヶ月分(消費税別)、入居を開始する月の前家賃が1ヶ月分の合計約6ヶ月分です。礼金や仲介手数料が不要な物件もあるので約6ヶ月分は目安と考えてください。

購入と賃貸~負担額の比較

では実際に、都内にあるタワーマンションの販売用の部屋と賃貸用の部屋で比較してみましょう。

<物件の概要:都内タワーマンション>

  購入の場合 賃貸の場合
条件
  • ・販売価格(借入金額) 4,800万円
  • ・利用ローン 全期間固定金利タイプ
  • ・金利 1.6%
  • ・返済期間 30年(ボーナス併用なし)
  • ・元利金等返済
  • ・頭金 0円
  • ・諸費用 240万円(販売価格の5%として設定)
  • ・住宅ローン毎月返済額 16万7,971円
  • ・管理費・修繕積立金 2万2,000円
  • ・10年ごとの室内修繕費  30万円
  • ・家賃(管理費・共益費込み) 18万8,000円
  • ・24ヶ月で更新。更新の年は更新料として家賃1ヶ月分18万8,000円が加算される
  • ・初期費用 75万2,000円
  • 以下内訳
  • 礼金家賃2ヶ月分(37万6,000円)、敷金家賃1ヶ月分(18万8,000円)、仲介手数料家賃1ヶ月分(18万8,000円)
毎月の負担額 18万9,971円(管理費込み) 18万8,000円(管理費・共益費込み)
年間の負担額 18万9,971円×12ヶ月+固定資産税15万円
=242万9,652円
18万8,000円×12ヶ月
=225万6,000円

※購入の場合、固定資産税は15万円として設定しています。部屋の広さが50㎡以上(登記面積)であれば住宅ローン控除の対象となり、年末残高(限度額4,000万円)の1%の控除が受けられます。

表のとおり、購入した場合の毎月の負担額は18万9,971円(管理費込み)、年間の負担額は管理費合わせて、18万9,971円×12ヶ月+固定資産税15万円=242万9,652円になります。賃貸の場合では、毎月の負担額が18万8,000円(管理費・共益費込み)、年間だと225万6,000円という結果です。このケースでは購入の方が毎年17万3,652円負担が多くなります。

それでは仮に40年間同じ住宅に住み続けた場合、購入と賃貸でどのくらい金額の差が出るのか、シミュレーションをしてみましょう。

賃貸の場合、条件にあるとおり、家賃(管理費・共益費込み)は18万8,000円で、24ヶ月で更新とします。更新の年は更新料1ヶ月18万8,000円が加算されます。住宅ローンを返済している間は、購入よりも賃貸のほうが年間コストが17万3,652円少ないので、30年目までの総コストは、購入7,618万9,200円対賃貸7,125万2,000円というように約494万円の差が付いています。

しかし31年目からは住宅ローンの返済がなくなるため、購入の場合は、管理費・修繕積立金、固定資産税のみの支払いとなります。したがって、年間コストは購入41万4,000円対賃貸225万6,000円(更新年は244万4,000円)と大差がつきます。

その結果、40年間住み続けた時の総コストは購入8,062万9,200円対賃貸9,475万2,000円となり、購入の方が約1,412万円少ない負担となりました。

今回の比較では、住宅ローンの返済期間中は賃貸よりも購入の方が年間の負担が大きいものの、住宅ローン完済後は年間の負担が大きく減らせることがわかりました。

<購入と賃貸の負担額比較>img_00052_01<40年目の総負担額の比較>

購入の場合 賃貸の場合
約8,062万円 約9,475万円

購入or賃貸 比較2 住み心地はどっちがいい?

自分好みに使いやすく居心地のいい部屋にできる「購入」

同じエリアにある分譲と賃貸マンションに住むのであれば、当たり前ですが住み始めた当初は購入しても賃貸でもマンション内の環境も周辺環境も変わりません。ただ購入した部屋は専有部分、つまり「自分のもの」なので、マンションの規約の範囲内(ベランダ等の共用部分を除く)で自由に手を加えることができます。

内装を好みの色に塗り替えたり、キッチンを使いやすいものに入れ替えたり、さらには1LDKを2LDKにレイアウト変更することもできます。先のタワーマンションの例では規約でペットの飼育が許可されているので、犬や猫などを飼うこともできます。庭のある戸建て住宅であれば、ガーデニングも楽しめます。

また庭のレイアウトの変更も自由なので、一部を削って子ども部屋を増築するリフォーム例も多く見られます。屋根に太陽光発電装置を設置したり、屋根や壁、床を断熱改修するといったエコリフォームもできるでしょう。

しかし良いことばかりではありません。購入当初は素晴らしい住環境の場所を選んだはずですが、何年も住んでいる間に交通量が増えたり、近隣に高層の建物が建って日照や景観が損なわれることがあります。

マイホームを購入した場合では、簡単には他の場所へ動くことができません。今住んでいるマイホームを売って住宅ローンを精算し、別の場所に新たなマイホームを探して住宅ローンを組むという手続きが必要になるからです。マイホームの売却価格よりも住宅ローンの残高のほうが多いケースでは引っ越しは難しいでしょう。

また、隣人トラブルに見舞われた時も、環境の変化と同じ理由で引っ越しが難しく、相手と直接話し合うといった方法などで解決しなければいけません。

近年は災害も多く発生しています。火災・風災・水災などに対応した火災保険に加入していれば、全焼・全損であっても保険金で同じ家を建てることができます(再調達価額を保険金額に設定するタイプの場合)。

ただ、マンションでは分譲価格と同等の補償金額を掛けることができない(分譲価格には土地代金等が含まれているため)ので、保険金で他の同等のマンションを買うことはできないと考えてください。

自由に住まいを変えられる「賃貸」

一方、賃貸の場合、内装の変更などは貸し主の同意がない限り、原則として一切手を加えることができません。もし手を加えてしまった場合、退去時には原状復帰が求められます。

先のタワーマンションでは販売用の物件ではペットの飼育が許可されていますが、賃貸用の物件では不可になっています。この場合、ペットと暮らすのであれば他の物件を探さなければなりません。賃貸の戸建てであっても、原則として手を加えることができません。

マンション、戸建てを問わず賃貸物件では、借りた時の状態を変えずに住み続けなければなりません。ただ、そのような点は引っ越しするという方法で解決することができます。住まいが古くなってきたと感じたら別の新築の賃貸物件を探せばいいですし、住環境が悪化したら別の環境のいいエリアへ引っ越せます。隣人トラブルに関しても解決が長引くようであれば、引っ越し費用はかかるものの他の場所へ行ってしまえばストレスは解消します。

災害に見舞われた時も、購入物件のように再建の手間と時間を掛けずに、他の物件を探して住み替えることで短時間のうちに新生活をスタートさせることができます。水害や土砂崩れなどは同じ場所で繰り返し起こる可能性があるので、別の安全な場所を探す方が命を守れます。

このように、住み心地に関して、購入の方が自由に建物に手を加えられる分、自分好みの部屋にできるという利点はありますが、引っ越しが難しいことを考えると、変化する環境への対応力は賃貸の方が優れているといえます。

購入or賃貸 比較3 ライフスタイルで見てみると

“終の棲家”として安心感がある「購入」

ライフスタイルは時の流れと共に変化していくものです。夫婦二人の生活、子どもが生まれてからの生活、子どもが独立してからの生活ではライフスタイルも変わるでしょう。マイホームを購入した場合、例えば夫が転勤になった時、子どもを私立学校へ通わせたいと考えた時、長時間の通勤・通学を強いることになるかもしれません。

そうはいっても、悪いことばかりではありません。高齢になっても住み慣れたエリアの気に入ったマイホームに住み続けることができます。住宅ローンを完済すれば、毎月の負担額は大きく減ります。その時にはマイホームも老朽化してくるので大規模修繕や建て替えの問題も出ているかもしれませんが、「終の棲家」として住み続けることができるのは購入する大きな動機になりそうです。

身軽さがメリットの「賃貸」

それに比べ賃貸は、身軽さがメリットです。夫の転勤先の近く、私立学校の近くへ引っ越すことができます。住環境が悪くなれば別のエリアへ移ればいいでしょう。子どもが増えても広い部屋の物件を探して住み替えることも難しくありません。

同じエリアで広い部屋を探すと家賃も高くなることが多いのですが、エリアを変えて物件を探すといった方法もあります。ただし、収入が減る老後は、安い物件に引っ越したとしても家賃負担自体は続くので、それにどう備えるのかということは早い段階で決めておくべきでしょう。

万が一のときはどうなる?
住宅ローンの返済は20年、30年と続きます。返済中に世帯主(住宅ローンを借りた人)に死亡や高度障害状態といった万が一のことが起こるかもしれませんが、その場合は通常、住宅ローンを借りる時に団体信用生命保険(団信)に加入しているので、住宅ローンの残高相当の保険金が金融機関に支払われ、住宅ローンを清算することができます。
賃貸の場合は、住宅ローンのように保険金が支払われるわけではありませんので、現在の家賃を払い続けること、場合によっては家賃の安いところに引っ越さなければならないことなどがあります。

まとめ

マイホームを購入したことによる「安心感」は大きいといえます。購入では多くの人が住宅ローンを組むことになりますが、繰上返済などで計画的に返済し、完済時期を早くすることで、その後の家計への負担を大きく減らすことができます。住宅ローンを完済したマイホームは資産となり、老後も住み続けることができます。

その一方で「住み替えることが難しい」というデメリットがあるので、購入時には将来のライフスタイルの変化まで考えて物件を探すことが大切です。また環境の変化や災害、隣人トラブルのような事態に見舞われた時でも簡単には引っ越すことができないということも頭に入れておきましょう。

一方、賃貸では「住み替えのしやすさ」が最大のメリットです。よりよい住み心地を求めたり、ライフスタイルの変化に合わせて自由に住み替えていくことができます。住環境が悪化しても他のエリアへ移動すれば解決します。

ただ、老後の住まいに関しては不安が残ります。高齢になるほど、近くに病院やスーパーなどがあり移動も電車バスで簡単にできるエリアに住みたいものですが、便利なエリアほど家賃が高いため、年金生活に入ると厳しいかもしれません。

購入と賃貸のどちらがいいのかは一概には決められないものの、金銭面、住み心地の面、ライフスタイルの3つの視点で比較して考えると、個人的には購入した方がメリットが多いのではないかと思います。住宅の購入か賃貸か迷ったときには、自分にとって何が重要なのかを見つめながら、検討してみてください。

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この記事の筆者
山本信幸 金融ジャーナリスト

金融ジャーナリスト

法政大学経営学部卒業。自動車会社の広告代理店などを経て独立。経済、金融、ITなどを中心テーマとして経済誌、マネー誌などに寄稿。

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