多くの金融機関では、住宅ローンを組む際に、団体信用生命保険(以下、団信)への加入を要件としています。しかし、健康状態によって団信に加入できない場合でも住宅ローンを借りる方法はいくつかあります。今回はその代表的な方法と、それぞれの費用の違いや注意点をおさえておきましょう。

団信に加入できない場合の住宅ローンの借り入れ方法

団信とは、住宅ローンを借りた人に万が一のことがあった場合、ローンの残債分が保険金として支払われ、住宅ローンが完済される生命保険です。多くの金融機関では、団信に加入できない場合には、住宅ローンを借りることができません。

団信に加入できなかった場合、住宅ローンを借りるには主に次の2つの方法があります。

・「ワイド団信」に加入して住宅ローンを借りる
・団信に加入しなくてもよい住宅ローンを借りる

「ワイド団信」は一般の団信に比べて加入しやすい団信ですが、住宅ローン金利に一定の利率が上乗せされ、住宅ローンの毎月返済額が増えるというデメリットがあります。
「団信に加入しなくてもよい住宅ローン」はごく限られるのですが、代表的なものに【フラット35】があります。
また、一部の金融機関では団信に加入できない場合に、連帯保証人をたてることなどを条件として住宅ローンを貸し出すケースもあるようです。

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それぞれの方法の詳細を確認し、メリット・デメリットを整理していきましょう。

ワイド団信に加入し住宅ローンを借りる

「ワイド団信」とは?

「ワイド団信」とは、保険の引受範囲を拡大することで、一般の団信より加入しやすくしている団信です。例えば、高血圧症、糖尿病、肝機能障害などの理由で、団信に加入できなかった人も加入できる可能性があるとされています。
ただし、どの程度の症状であれば加入できるのか、明確な基準は公表されていないため、申し込み時点では加入できるかどうかはわかりません。

注意点

「ワイド団信」を利用したい場合は、住宅ローンを借り入れる金融機関で申し込みをしますが、ただし、現時点(2016年1月)では「ワイド団信」を取り扱っていない金融機関が多いのが現状です。つまり、借入先の選択肢が狭まるのが、デメリットです。
また、「ワイド団信」の保険料は住宅ローン金利に0.3%上乗せとなる金融機関がほとんどです。金利が上乗せされるため、毎月返済額が増えるのも大きなデメリットです。例えば、3,000万円を返済期間35年の元利均等返済で住宅ローンを借りると、「ワイド団信」の金利上乗せが0.3%の場合、毎月返済額は4,681円増え、35年の総額で約197万円増えることになります。

団信に加入しなくてよい住宅ローンを借りる(【フラット35】)

【フラット35】とは?

【フラット35】は民間金融機関と住宅金融機構の提携により提供されている、全期間固定金利型の住宅ローンです。【フラット35】では団信に加入する場合、特約料を金利とは別に支払う仕組みになっており、団信への加入は任意とされています。
つまり、健康上の理由で団信に加入できない人にとって、住宅ローンを借りるという点では、【フラット35】の利用が最もハードルの低い方法の1つです。
【フラット35】では、団信に加入しなくても住宅ローン金利は変わりません。特約料は不要になるため、むしろ総支払額は減ったと考えることもできます。

注意点

ただし、万が一のときでも、団信で住宅ローンの残債が無くならないのは大きなデメリットです。住宅ローンの返済は遺族が引き継がなくてはなりませんので、「遺族が住宅ローンの返済を続けられる」、あるいは「残債を無くすことができる対策」が必須となります。
では、団信に加入せずに住宅ローンを借りた場合、万が一の場合に備える方法を考えてみましょう。

(1)加入中の生命保険や勤務先の福利厚生制度でカバー
最初に行うべきなのは、既に加入している生命保険、勤務先の福利厚生制度などで、住宅ローン返済と遺族の生活費や教育費などの不足分をカバーできないかを計算することです。
筆者は生命保険についても多くの個別相談を受けていますが、自分が加入している保険の正確な死亡保障額を把握できている人は非常に少なく、死亡保障額が意外に高額になっているケースも珍しくありません。
また、企業の福利厚生制度で従業員を被保険者、つまり保険の対象として生命保険に加入していて、万が一の場合は従業員の遺族がまとまった金額を受け取れるようになっていることがあります。さらには、従業員の子息への育英年金が支給される企業もありますので、勤務先の制度をしっかり確認するとよいでしょう。

(2)団体定期保険に加入
次に確認すべきなのは、勤務先に従業員が選択して加入することができる、団体定期保険などの死亡保障の保険があるかどうかです。あれば、ぜひ検討してみましょう。保険料は割安なことが多く、健康状態の告知が比較的緩やかなものもあります。健康状態によって団信に加入できなかった人も、加入できるかもしれません。

(1)、(2)に挙げた方法で備えることが難しい場合は、引受基準緩和型の生命保険への加入を検討することになります。

(3)引受基準緩和型の生命保険に加入
引受基準緩和型の生命保険とは、健康上の理由から、保険に加入できなかった人も加入しやすい保険で、多くの保険会社が一般向けに販売しています。引受基準が緩和され、具体的には告知項目が限定されていて、告知書の質問事項に該当しなければ加入することができます。加入のハードルを下げているため、保険料は一般の保険に比べて割高です。

保険会社により告知書の質問事項は異なるため、健康状態によって団信に加入できなかった人も加入できる保険会社があるかもしれません。申し込み前に加入できるかどうかがわかる点もメリットです。ただし、この保険を団信代わりにして住宅ローンの借入額の全額をカバーするのは難しいと言わざるを得ません。

例えば、ある商品の最高保険金額は20~39歳で1,500万円、40歳~85歳で1,000万円となっており、あまり多くはありません。また、ほとんどの商品が終身保険、つまり住宅ローン借入期間だけの保障だけでなく一生涯の保障のため、保険料は非常に高くなります。
保険金額1,500万円の引受基準緩和型の商品に30歳男性が加入したとすると、保険料は月24,000円程度、35年間の総額で1,015万円程度を支払うことになります。65歳時に解約すると解約返戻金として615万円程度を受け取ることができるため、負担は差額の400万円程度と考えることができます。

ただし、この方法では65歳までは手元から1,015万円程度が無くなっていたことになり、支出の多い時期には手元のお金が不足しやすくなるデメリットがあります。この方法を利用する場合は、住宅ローン借入額の一部のみをカバーする位置づけにして保険金額を抑えた方がよいでしょう。

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まとめ

「ワイド団信」に加入して住宅ローンを借りるか、団信に加入せずに【フラット35】を借りるかは、住宅ローン返済額、万一の場合の保障を確保するための費用、その他住宅ローンの融資手数料や保証料といった費用も合計した総支払額で考える方がよいでしょう。しかし、住宅ローン自体の金利水準が与える影響が大きい点、保障金額や内容がそれぞれ異なる点などを考慮すると、どちらが良いかは一概には言えません。
また、「ワイド団信」の明確な基準は公表されていないため、金融機関へ申し込みをする時点では加入できるかどうかは分かりません。
団信に加入せずに【フラット35】を借りる場合は、加入中の生命保険の有無、勤務先の福利厚生制度の内容や団体定期保険の有無などで、万が一の場合に備えるための費用は大きく異なります。引受基準緩和型の生命保険は、告知書の質問事項に該当する健康状態であれば加入できず、質問事項は保険会社によって異なります。
健康状態によって団信に加入できなかった人は、どちらの方法も検討してみるのがよいでしょう。

 

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この記事の筆者
平野雅章 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー

住宅ローンと保険を中心に1,200件超の相談実績を持つ相談専門ファイナンシャルプランナー。2007年に独立し、横浜FP事務所を主宰。豊富な相談経験を活かし講師や執筆も多数。2011年より(一社)全国FP相談協会の代表理事として、FP相談普及にも尽力。

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