住宅ローン契約時に必須の“火災保険”。その仕組みと注意点を解説

住宅ローンを組む際に、金融機関などから火災保険に加入することを求められます。火災保険への加入は、金融機関と住宅ローン返済者の両者にとって、住宅を購入する上で大変重要です。今回は、住宅ローンと切っても切れない火災保険について、知っておきたい仕組みと留意点についてお伝えします。

住宅ローンの借り入れには火災保険加入は必須

住宅ローンの返済期間分の火災保険料をまとめて支払う場合、数十万円~百万円近い負担になることがあります。頭金に充てないで手元に残しておいた大切な貯蓄が、あっという間に心もとなくなってしまったという声もよく聞きます。そのような大きな負担があるのに、なぜ火災保険への加入を求められることが多いのでしょう。それは、万一の時のトラブルを避けるためです。

住宅ローンの返済は、最長35年間と長い期間に渡るので、その間に火災や天災などでマイホームが大きな被害を受ける可能性も否めません。仮に、火災でマイホームが燃えて無くなると、他の住まいに引っ越しながらも、存在しないマイホームのための住宅ローン返済を以後もずっと続けていかなくてはならないのです。新居の家賃の支払いとマイホームの復旧に要する費用を負担しながら、住宅ローンの返済も続けることが困難なのは明らかです。このようなときに保険金が支払われれば、生活を再建する助けとなることは間違いないでしょう。

火災保険は様々な住まいの損害をカバーするもの

火災保険は、火災だけでなく様々な住まいの損害をカバーする保険です(図表1)。
基本的な補償は「火災・落雷、破裂・爆発」です。タバコやコンロなどからの出火だけでなく、落雷が原因で火災になった場合も補償の対象になります。台風や雪での損害は「風災・ひょう災・雪災」でカバーすることができます。その他、図表1のように様々な補償の種類があります。パッケージになっているものや自分で選べるものなど、保険会社や商品によって補償内容は異なりますが、自然災害や日常生活の中のリスクなどに対する補償範囲は幅広くなっています。

<図表1 火災保険で補償される主な損害>img_00025_01

また、火災保険は「建物」のみならず「家財」にもかけることができます。「家財」にもかけておくことで、例えば水災で床上浸水になり家電製品が使えなくなった、落雷の影響でパソコンが壊れたなどの損害も補償されます。

住宅ローンを組む際に契約を求められる火災保険は、「建物」の火災保険(図表2)になりますので、家具や家電、パソコンなどの「家財」の補償もつけたい人は、「建物」の火災保険に入る際に併せて申し込むか、あるいは、別途他社の火災保険などを手配しておくと良いでしょう。

<図表2 火災保険の入り方のバリエーション>

  賃貸の場合 持ち家の場合
建物 大家さんが加入しているので、賃借人は加入不要 住宅ローンを組む際に、多くの場合加入することが要件
家財 賃貸借契約時に、加入が要件となることが多い 加入するかどうかは自由。補償が必要であれば、自分で加入手続きが必要

金融機関にとっても重要な火災保険

金融機関にとっては、住宅ローンを返済してもらうことがとても重要です。したがって、火災や天災などでマイホームが損害を受けても、保険金を受け取って修理費用や住宅ローン返済に充てられるような対策を求めるのです。

また、住宅ローンは、マイホームを“担保”にお金を貸す有担保ローンです。担保にされたマイホームは、万が一住宅ローン返済が行き詰まると競売にかけられ、まずは金融機関の住宅ローンの残債の返済に充てられる仕組みになっています。マイホームが火災に遭うということは、この“担保”が燃えて無くなることを意味しています。つまり、火災保険に入ることは、金融機関にとって“担保”を保全する上でもとても重要なことなのです。
このようなことから、住宅ローンを借り入れする要件の一つとして、火災保険に加入することを必須としている金融機関が多いのです。

さて、そのような中、2015年10月以降は10年を超える火災保険には加入できなくなるとの報道がありました。どういうことなのでしょうか。

火災保険の長期契約ができなくなる

現在の火災保険は、1年ごとに更新する方法のほか、最長36年の長期契約をすることも可能です。火災保険の保険料は、長い保険期間分をまとめて支払うほど割引があり、単純に年間保険料×年数で計算した保険料よりも割安にできます(図表3)。
長期契約の場合には、「年間保険料×長期係数」が保険料となります。保険期間10年であれば年払いで8.2年分 、20年なら15.25年分、30年では21.45年分の保険料で済むという仕組みです。

<図表3 長期契約による割引例>

保険期間 長期係数
3年 2.7
5年 4.3
10年 8.2
20年 15.25
30年 21.45
35年 24.25

ところが大手損害保険会社は2015年10月以降、保険期間が10年を超える一般住宅向け火災保険の販売を停止する方針であることが報道されています。つまり最長でも10年まで(※注)になるということです。

その理由は、近年自然災害が増えているためです。東日本大震災を始め、土砂災害や竜巻、洪水などの報道を目にする機会が増えていますが、こうした異常気象の影響で、損害保険会社の保険金支払いが増えてきているのです。通常では、保険金支払いが増えてくれば、翌年以降の保険料に反映されます。直近では、住宅総合保険の保険料が2015年7月以降に平均3.5%程度はアップするのではないかと言われています。ところが、住宅ローンを組む際に入る火災保険は、多くの人が住宅ローンの返済期間分に相当する長期間の保険料を一括で支払っています。つまり、保険会社からすれば、その後に保険金支払いが増えて加入者の保険料をアップしたいと考えても、追加で保険料をもらうことができないのです。

このままでは、長期の火災保険契約で支払うことになる保険金を適正に予測して、保険料を算出するのが難しいということで、これまで最長36年で引き受けていた火災保険の保険期間を、今年の10月以降、最長で10年までにすることにしたわけです。

※注 火災保険に付帯して加入する「地震保険」は最長で5年までになっています。地震保険については今までどおりの予定です。

火災保険も見直ししておこう

長期契約したい人にとっては、保険期間10年で加入して10年ごとに更新する形で契約せざるを得なくなるので、当然保険料の割安感が小さくなり、満期が来るごとに更新する手間も生じることになります。
もちろん、たとえ割安とはいえ一度に大きな保険料の負担を負うことにデメリットを感じる人は、無理をする必要はありませんが、今年の秋までに引き渡しの物件を購入する人で、火災保険の長期契約で保険料の総額を抑えたいなら、9月末までの契約がおすすめです。

現在長期で加入している場合でも、未経過分は解約返戻金として戻ってきますので、満期を待たずに見直しすることも可能です。住宅ローンの返済が終わっても火災保険が重要であることには変わりありませんので、住宅ローンの返済期間より長く入っておいても良いでしょう。

今後は20年、30年といった長期契約ができなくなる予定ですので、この機会に火災保険の補償内容や契約年数について検討してみてください。

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(最終更新日:2019.10.05)
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