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住宅ローンを組む際に一番心配なのは、将来にわたってきちんと返済していけるかどうかです。返済が厳しくなったときには、返済期間を延ばす、返済額を減らすなどの対応がありますが、マイホームを賃貸に出して返済を続けることも対策として考えられます。今回は、マイホームを賃貸に出して、その家賃で返済を継続できる家賃返済特約付き【フラット35】についてみてみましょう。

そもそも返済が困難になったらどうなる?

そもそも、【フラット35】の返済中に返済が困難になった場合には、どうなるのでしょうか?
【フラット35】では返済が厳しくなった際、あるいは厳しくなることが予想される場合には、

(1)返済期間を延ばす(失業中などの場合は、さらに一定期間の利息のみ返済)、返済額を一定期間減らすなどの返済困窮者対応特例措置の適用を受ける(http://www.flat35.com/user/henkou/hensai_type.html)参照
(2)住宅ローン返済をしている住宅を賃貸に出し、賃料で返済を続ける

といった対策が可能です。ただ、返済期間を延ばしたり、返済額を減らしても、収入の復活、安定が見込めなければ、再度返済が難しくなる可能性がありますし、総返済負担額が増える、完済時期が遅くなるなどのリスクを抱えることになります。
また、自分で賃貸に出す場合には普通借家契約となるので、解約や更新拒絶を行いたい場合には正当事由・立退料が必要となりますし、空き家や空室リスクを負わなければなりません。これらのリスクに対応できる仕組みとして作られたのが、家賃返済特約付き【フラット35】です。

家賃返済特約付き【フラット35】ってどんな制度?

家賃返済特約付き【フラット35】は、将来返済が厳しくなった場合、移住・住みかえ支援機構(以後「JTI」)の「再起支援借上げ制度」を活用できる特約がついた【フラット35】です。

「再起支援借上げ制度」とは、収入の減少などで住宅ローンの返済が一時的に厳しくなった場合、JTIの「マイホーム借上げ制度」を利用してマイホームをJTIに借り上げてもらい、家賃を住宅ローン返済に充てることができる制度です。

通常、JTIが実施する「マイホーム借上げ制度」では、利用者には50歳以上という年齢制限がありますが、再起支援借上げ制度の場合「住宅ローンの返済が一時的に厳しくなった場合への対応」ということで、この年齢制限がなくなり、利用者の年齢にかかわらず、JTIの「マイホーム借上げ制度」を利用することができるのです。借り上げたマイホームは3年の定期借家契約で転貸しますので、状況が改善したら3年ごとに家に戻ることができます。

「マイホーム借上げ制度」では、一度でも転借人(※1)がつけば、その後に空き家や空室が出た場合でも、一定の賃料をJTIが最低保証してくれるため、実家などに転居でき、「特例措置後の毎月返済額≦JTIが最低保証する賃料」であれば、家計への負担なしに、安定的に返済を継続できることになります。また、JTIが行う転貸は、賃貸借期間が満了したときに自動更新がない定期借家契約(期間は原則3年)ですので、転貸中に収入が安定すれば、期間満了で解約して明け渡してもらい、自宅に戻ることも可能です。つまり、貸した家が返って来ない、という心配もありません。

※1 JTIが一度借り上げ、JTIが転貸に出すので、実際に住宅に住む人は転借人

適用を受ける際の流れは?

適用を受ける際の流れは以下の通りです。

【フラット35】借入時に覚書によって、特約として設定
⇒返済困難時に債務者が取扱金融機関(※)に適用申請
⇒住宅金融支援機構が定める返済困窮者対応特例措置に該当していれば、住宅金融支援機構がJTIに賃料査定を依頼
⇒住宅金融支援機構は、査定された賃料に基づき「特例措置後の毎月返済額≦JTIが最低保証する賃料」となっているか、JTIが最低保証する賃料(実際の受け取り家賃=JTIの査定賃料の85%が目安)で継続的に返済が可能かを考慮しながら適用の可否を診断
⇒適用可能と判断されれば、家賃返済の適用を受けられる
⇒一方で、JTIは、耐震性など借上げ住宅としての基準を満たしているかを診断し、借上げ
可能であれば、すぐに転借人(実際に住宅に住む人)の募集をかける。
⇒転借人の入居によって、家賃による住宅ローン返済が始まる

もちろん、この家賃返済特約を付けていても、自分で賃貸に出すことも可能ですし、必ずしも特約を使わなくてはいけないということではありませんので、いざというときのオプションとして有効だといえますね。なお、家賃による返済が始まるのは、転借人が入居した後からとなるため、家賃返済特例の申し込みをしてから家賃返済開始までの3~4ヶ月程度は今まで通り、収入や貯蓄からローンの返済を続けなければなりません。返済が実際に厳しくなってから申し込みをしたのでは、家計が破綻し、手遅れとなる可能性もあるので、利用する際には早めに検討しましょう。

※2015年5月時点で家賃返済特約付き【フラット35】を取り扱っている金融機関は、アルヒ株式会社(旧SBIモーゲージ)、日本住宅ローン株式会社、日本モーゲージサービス株式会社、株式会社優良住宅ローンの4社です。

返済が苦しくなったときのために、つけておいても損はない家賃返済特約付【フラット35】!

どんな活用法がある?

現在のように低金利時代に住宅ローンを組んだ場合には、期間を延ばしたり、返済額の軽減をしても、月々の返済額を大幅に減らすのはなかなか期待できません。結果的に再度返済が困難になるケースも多いといえます。したがって実家に移り住める場合や安い住み替え先が一定期間は見つけられる場合には大いに家賃返済特約付【フラット35】を利用する検討の余地ありでしょう。もしくは、特例措置を受けて、「特例措置後の月々返済額≦JTIが最低保証する賃料(実際の受け取り家賃)」となる場合や、賃料だけでは月々の返済額をまかなえない場合でも、その足りない分を補てんできるのであれば、活用の価値が多いにあるといえますね。

住宅金融支援機構の場合、失業した場合や収入が20%以上減少して返済困難になった際には、(1)住宅ローンの返済期間を15年間延長、(2)当面3年間元本を据え置き、金利のみ支払い、(3)さらにこの間金利1%引き下げ、の3段階の緩和措置があります(3年後に状況が改善しなかった場合には、さらに3年間の元本据え置き期間延長措置あり)。具体例で見てみましょう。

当初借入金額 2,500万円 全期間固定金利2.5% 35年間借り入れ ボーナス返済なし 元利均等返済 月々返済金額 89,374円

5年間返済が終了した時点で、特例措置を受けると…

img_00053_01

(1)15年の期間延長 (2)3年間の元本据置 (3)さらに金利1%引き下げ
変更後月々返済額 69,816
延長後返済期間 45年
利払額 47,124 引き下げ後利払額 28,274
据置期間経過後残期間 42年
据置期間経過後要返済額 72,534円

img_00053_02再起支援借上げ制度を活用すると・・・・

借上げ家賃(JTIの査定賃料) 80,000円と仮定
JTIの最低保証賃料(実際の受け取り家賃) 68,000円
現在返済額 89,374円
正味返済負担 21,374 24%の返済負担率
3年後の残期間 27年

仮に、すべての特例措置を受けたとしても、返済額が軽減できるのは原則3年で据置期間が経過後の返済額は軽減前より2割程度しか減らず、金利負担が大幅に増える上に、年金生活に入った後も長期間返済を継続しなければなりません。一方で、再起支援借上げ制度を活用すれば、元本据置かつ金利引き下げを受けた場合以上に返済額を軽減することができ、さらに実際の受け取り家賃により通常の返済を継続するわけなので、返済期間は変わらず、総返済負担の増加も生じません。実家などに一時的に移ることができるのであれば、家計負担を軽減しつつも、返済を着実に継続できるという点で非常にメリットがあるといえます。

利用時の注意点は?

まず、ボーナス返済や元金均等返済方式を活用している人は、家賃返済適用時に毎月返済のみ、元利均等返済方式に変更する必要があります。ボーナス返済の割合が多い場合には、月々の返済額が大幅に増える可能性があるので、やはり借り入れ当初からボーナス返済に頼る資金計画には要注意ですね。
また、査定の結果、特例措置を受けても毎月の返済額をJTIが保証する最低賃料でまかなえない場合には、家賃返済特約付【フラット35】を適用することができません。ちなみに、JTIの最低保証賃料の上限は127,500円(2011年3月)です。
なお、定期借家契約が終了する(原則3年)と、新転借人を新たに募集することになり、その際、賃料も見直されるので最低保証賃料が変更される可能性があります。万が一、「特例措置後の毎月返済額>JTIが最低保証する賃料」となった場合には、家賃返済は終了となるので、その点も注意が必要です。

さらに、家賃返済特約付【フラット35】の適用を受けると、家賃収入が発生するため、不動産所得としての確定申告も忘れずに行う必要があります(もちろん、経費、減価償却などで赤字が出れば、他の所得と損益通算は可能です)。その他、家賃返済を利用するうえでの費用が掛かる点もチェックしておく必要があります。経費には、家賃返済特約を付ける際のコスト5,000円(消費税抜)やJTIの賃料査定費用5,000円(消費税抜)、借上げ申請時の事務手数料17,000円(消費税抜)などがあります。また移住・住みかえ支援適合住宅証明書発行のための費用、借上げ賃料に機構が設定する譲渡担保設定費用、借上げ実施時のハウスクリーニング代、最低限の補修、改修費用などがありますので、事前にしっかり確認しておきましょう。

住宅ローン返済中には、収入の減少、親との同居、介護のために実家に帰るなど、予期をしないライフスタイルの変化もありえます。そのような場合でも住宅ローンを安心して返済できるように、いざというときの「備え」として、家賃返済特約付き【フラット35】を活用しておく、という考えもありますね。
前述のように、家賃返済特約には経費がかかったり、家賃返済の申請をしてから家賃返済が始まるまでにはタイムラグが生じたりします。もちろん経費や入居が始まるまでの間の資金を両親に援助してもらうという方法もありますが、活用時には家計が破綻する前に早目に検討しましょう。

※主な利用条件は、一般社団法人移住・住みかえ機構のホームページを参照してください。

https://www.jt-i.jp/lease/comeback/index.html) なお、長期優良住宅など移住・住み替え適合住宅であれば再起支援借上げ制度を使わなくても、年齢にかかわらず、マイホーム借上げ制度を活用することができます。

 

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この記事の筆者
金子千春 ファイナンシャル・プランナー

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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