教育資金の貯蓄ができる住宅ローンの組み方は? FPが実際に受けた良くある相談事例

住宅ローンを組む際に、「子どもが大きくなって本格的に教育費がかかる時期でも、無理なく返済できるだろうか」と不安に思う方も多くいるかと思います。将来、教育費がかかる家庭では、住宅ローンの借り方・返し方でどのようなことに注意をしていけばいいでしょうか?

年代でみた教育費負担

総務省が発表している「家計調査年報」を見ると、世帯主の年代ごとにかかる教育費の大まかな傾向をつかむことができます。
30代前半では月2万円程度だった教育費が、40代後半には月8万円を超える負担になっていることがわかります。高負担な状態は50代前半まで続きます。もしも30代前半で、家計の中でぎりぎり返済できるくらいの住宅ローンを借りた場合は、収入増や元々の貯蓄がなければ、家計がかなり厳しい状況に陥ってしまうことでしょう。

<図表1 年代別教育費の負担(月額) 単位:円>img_00079_01

 

総務省「家計調査年報」平成26年より執筆者作成

借りるときは教育準備と並行できるようゆとりのある住宅ローンを組む

一般的に教育費がピークとなるのは、子どもが大学生のときです。その時期は教育費の負担が大きいため、毎月の家計では負担しきれない可能性もあります。その場合、それまでに用意した教育資金を取り崩したり、奨学金を利用したりして捻出しなければなりません。

<図表2:幼稚園から高校までの学費>

  幼稚園 小学校 中学校 高校(全日制)
公立 私立 公立 私立 公立 私立 公立 私立
学費総額(年間) 22万円 50万円 32万円 154万円 48万円 134万円 41万円 100万円
合計(小学校6年、他は3年) 67万円 149万円 193万円 921万円 145万円 402万円 123万円 299万円

※資料:文部科学省「子どもの学習費調査(平成26年度)」をもとに執筆者作成


<図表3:大学でかかる学費>

 

区分 入学費用※1 在学費用(年額)※2 自宅外通学を始める費用※3 仕送り(年額)※4 初年度 2年目以降 4年間合計
国公立 自宅 82万円 94万円 - - 176万円 94万円 458万円
自宅外 45万円 125万円 346万円 219万円 1,003万円
私立 文系 自宅 107万円 142万円 - - 249万円 142万円 675万円
自宅外 45万円 125万円 419万円 267万円 1,220万円
理系 自宅 106万円 178万円 - - 284万円 178万円 818万円
自宅外 45万円 125万円 454万円 303万円 1,363万円

※1 受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※2 授業料・施設整備費など学校納付金、教科書代、通学費、習い事等の費用
※3 アパートの敷金、家財道具の購入費等
※4 自宅外通勤者への平均仕送り額
※資料:日本政策金融公庫「平成27年度 教育費負担の実態調査結果」をもとに執筆者作成

子どもの教育の選択肢を広げるためには、住宅ローンを返済しながら将来の教育資金の貯蓄もできる、余裕のある住宅ローンを組むことが大事です。

住宅ローンの毎月返済額を決める目安として、「現在の家賃」と「住宅のための毎月の積立」を合わせて購入物件の予算を試算する方法があります。その場合、現在「住居費」としてあてている金額(この場合、「現在の家賃」と「住宅のための毎月の積立」を指す)を住宅購入後の「住居費」として考えがちです。しかし、その際に「教育資金の積み立て分」を差し引いて計算することで、子どもの教育資金を貯めながら、ローン返済をしていくことができます。

例えば、年収500万円、今の家賃が10万円、住宅用積立が月平均5万円(年60万円)の人がマンション購入を考えているとしましょう。この場合、15万円が新居にあてられる毎月の「住居費」として考えられるでしょう。
また購入しようとしているマンションの管理費・修繕積立金が2万円、固定資産税が月平均約1万円だとして、上記の計算を行うと「新居での住宅ローンの毎月返済額」は10+5-2-1=12万円となります。しかし、教育資金の積み立て分を加味して、子どもの教育資金を月2万円積み立てるとすると、12-2=10万円が、毎月の返済額の目安となります。

<図表4 無理なく返済できる毎月の住宅ローン額>img_00079_04

上記の例の場合、【フラット35】35年返済(金利1.480%)で試算すると、月12万円の(教育費を積立しない)場合、借入可能額は3,930万円、月10万円の(教育費を積立する)場合、借入可能額は3,270万円となります。これに頭金や諸費用を加味して購入予算を算出しますが、教育資金の積立を想定した場合と、教育資金の積立を想定せずに買った場合では、その後の生活も違ってくることでしょう。月2万円の返済額の差は、決して小さくはありません。
また、収入面から考えた場合には、一般的には、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合(返済負担率)は25%以内が目安と言われています。返済負担率が低いほど負担は軽くなり、将来の教育費がかかる時期の負担も軽くなります。
冷静に考えれば当然のことですが、欲しい物件を入手することばかりを考えるあまり、教育資金のゆとりを忘れてしまう、少し背伸びをして住宅ローンの返済額の負担を増やしてしまう例もありますので、注意したいものです。

返済期間中は繰り上げ返済も要注意

子どものいる世帯では、繰り上げ返済も慎重に行う必要があります。最も避けるべきは、教育資金の貯蓄を一切行わずに繰り上げ返済(期間短縮型)を行ってしまい、後悔する事態に陥ることです。教育資金の積立を計画的に行い、その上で繰り上げ返済を行う分には問題はないでしょう。その繰り上げ返済も、できれば期間短縮型よりも返済額軽減型にしておけば、毎月の返済額を少しでも軽減でき、教育費のピークに備えやすくなります。

教育費がピークになる前に繰り上げ返済で完済する方法も

一方で、前項と矛盾しますが、完済したい「目標となる時期」があり、家計の状況に無理がないのであれば、一気に繰り上げ返済をしてしまうのも一法です。実際に、住宅を購入直後の方から返済方法の相談を受けたこともありますが、どれくらいのペースで繰り上げ返済を行えば、第一子が大学に入る前に完済できるか試算してほしい、というものでした。実際の家計の状況からも無理はなさそうでしたので、繰り上げ返済を実施するようアドバイスしました。

まとめ

住宅資金と教育資金は人生の3大資金の2つで、どちらも大事です。将来の教育費のピークに備えて住宅ローンの借り入れに余裕を持つことは、賢い行動といえるでしょう。そのために、教育資金の貯蓄ができるゆとりをもった住宅ローンを組みましょう。
また繰り上げ返済も、子育て世帯は教育資金積立を行いながら、余力があったときに行いましょう。計画的に繰り上げ返済を行う場合は、本当にその額を捻出できるのか、家計を確認した上で実行したいものです。

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(最終更新日:2019.10.05)
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