住宅ローンの返済中に予期せぬ事態!? 万が一のリスクヘッジ「団体信用生命保険」とは

住宅ローンは借入額が高額で、返済も長期にわたることがほとんどです。ローン返済中であるにも関わらず、契約者に万が一のことがあると、残された家族が残りの住宅ローンを支払わなければなりません。そんな時のリスクに対応する団体信用生命保険は、契約者が死亡したり高度障害状態になった場合に、保険金によって住宅ローンの完済を行ってくれます。 ただし、団信への加入や保険金の支払いには一定の条件があるので、注意が必要です。

住宅ローンの団体信用生命保険とは何か

住宅ローンには、団体信用生命保険(通称「団信」や「団信保険」ともいいます。)という制度があるのをご存知でしょうか。団信とは、住宅ローンの返済途中で契約者に万が一のことがあった場合に、残りの住宅ローンがなくなる生命保険です。
住宅ローンは借入額が高額で、返済も長期にわたることがほとんどなので、団信に加入することで、返済期間中の万が一の事態に備えておくことが重要です。もし団信に加入していない場合は、残された家族にマイホームだけでなく住宅ローンも相続されてしまうため、残っている住宅ローンを支払っていくことになります。

実際には、団信への加入を住宅ローン借り入れの条件にしている金融機関が多く、この場合は保険の特約料が金利に組み込まれているため、別途特約料の支払いが発生しません。一方で、一部の民間金融機関の住宅ローンや【フラット35】のように、団信への加入が任意のものもあります。遺族年金や現在加入している生命保険、契約者以外の収入などで充分に家族の生活が守られるというのであれば、団信に加入する必要はないといえるでしょう。

しかし、民間生命保険会社の収入保障保険などでカバーするには、契約者の健康状態や喫煙の状況、年齢などで大きく保険料が異なってくる上、様々な保険会社の商品を比較・選択し、なおかつ団信よりもお得になるように保険料を設定できるような知識が必要です。

また、万が一の不測の事態で収入が激減すれば、たとえ一般の生命保険に加入していても、受け取った保険金を生活費にまわさざるを得ず、住宅ローンの返済が難しくなるかもしれません。総務省が発表している家計調査(2014年9月)によると、2人以上の世帯の月間平均消費支出は、1世帯当たり275,226円となっています。高校生や大学生の子どもがいる家庭だと教育費がかかりますので、さらに支出は多くなることでしょう。生活費の中でも住居にかかるお金は特に大きいものなので、どのような返済プランにするかは、住宅購入時にきちんと考えておく必要があります。

団信の特徴

先述した通り、団信のメリットは、ローンの返済途中で契約者が死亡したり高度障害状態になってしまった場合に、生命保険会社が残債を債権者に支払い、弁済する点が挙げられます。

ただし、団信の加入に際しては次のような点に注意しましょう。

途中加入ができない!

団信への加入ができるのは住宅ローンの契約時のみで、返済途中から加入したり、一度脱退した後に再加入することは原則としてできません。

健康でないと入れない?

健康上の理由で通常の団信に加入できない場合もあります。健康上の理由以外に、年齢制限もあり、たとえ健康であっても加入できない場合もあります。審査内容の明確なラインは公表されていないので、審査に通過するかどうかは実際に審査をしてみてなければ分かりませんが、審査に落ちたからといって必ずしも諦める必要はありません。
そのような場合には、「引受条件緩和型団体信用生命保険(ワイド団信)」という選択肢や、法定相続人を保証人にすることでローンの審査を通過することもあります

ワイド団信のネックとは?

通常の団信に加入できない方向けに、加入条件を緩和したものがワイド団信です。団信への加入を健康上の理由で断られた場合、ワイド団信であれば審査を通過することもあります。ワイド団信はネット銀行、地方銀行、メガバンクなどで徐々に取り扱いが増えていますが、すべての金融機関で対応しているわけではありません。また、引受会社にとってのリスクが高まるため、ワイド団信付きの住宅ローンを借りる場合、0.2~1.0%ほど金利が高くなります。ただし、通常の団信と同様、年齢制限はありますので、誰でも借りられるわけではありません。

保障は死亡と高度障害のみ?

一般的な団信の保障範囲は、死亡時および高度障害時となっています。加えて、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の場合も保障する3大疾病特約や、さらに「高血圧性疾患」「糖尿病」「慢性腎不全」「肝硬変」の4つの生活習慣病をプラスした7大疾病特約、これに「慢性膵炎」を加えた8大疾病特約をつけることができる付帯もあります。
これらの付帯は、年齢や借り入れ内容、住宅ローンの残高によって特約料の負担が異なります。保障範囲は融資する金融機関によっても大きく異なり、住宅ローン借り入れの際の金利以外の判断基準の一つとしてよく挙げられます。検討要素としては、疾病特約の対象となる疾病の数はもちろんのこと、上乗せされる金利や特約料の金額をみるとよいでしょう。また、適用される条件も金融機関によっては差がありますので要注意です。例えば、住宅ローン借り入れ実行日直後の疾病でも適用される場合もあれば、実行後91日以降しか適用されない場合もあります。

病気で退職をしても住宅ローンの返済は終わらない!

がんや脳卒中のような大きな病気にかかると、生活が変わることで収入が著しく減ったり、治療のために退職するなどで一時的に無収入になったりすることも考えられます。しかし、もちろん病気にかかっている間も住宅ローンの返済は終わりません。そういったリスクが心配な方は、上記のような特約をつけることを検討してもよいでしょう。
ただし、すでに他の医療保険や生命保険に加入している際は、保障範囲が重なってしまうこともあります。住宅購入を期に、一度加入している保険を見直してみることが必要です。人生の買い物の中で、住宅と保険は最も支払い金額が大きいといわれていますが、この二つの支払いバランスを上手くとるだけでも家計にとって大きな節約につながります。

【フラット35】なら、団信への加入の有無はしっかり検討

【フラット35】のように、団信への加入が任意である住宅ローンもあります。一般的に、男性なら35歳、女性なら40歳までで、喫煙しない方であれば、団信に入らずに民間の生命保険でカバーするほうがお得になると言われています。逆に、喫煙や肥満、遺伝などから「リスクが高い」と思われる方は、健康診断の結果には異常がなくても、団信に入った方が安心だといえます。

保障内容をしっかり知ろう

一概に死亡時や高度障害と診断された場合に保険金が支払われるわけではありません。保険金が支払われないケースもありますので、注意が必要です。
例えば、【フラット35】の機構団信特約制度で高度障害時の基準を例にみてみましょう。

・両眼の視力を全く永久に失ったものは支払いの対象となります。
ただし、両目の視力を失った場合は保険が適用されますが、完全に失明していない場合は該当しません。

・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったものは支払いの対象となります。
ただし、消化器官の障害によるものは含まれません。

また、保障開始日前にすでに生じていた傷害または疾病を原因とする場合やリハビリにより障害状態が改善される可能性がある場合も対象とならないので注意が必要です。

さらに、特約としてつける方が多い3大疾病付機構団信についても、適用範囲と保険金支払いの開始時期に所定の条件があります。

がん

責任開始日以降に、生まれて初めてがんに罹患したと医師により診断確定された場合に保険金の支払い対象となります。
ただし、上皮内がん(子宮頸ガン0期、食道上皮内ガン、乳房・膀胱などの非浸潤ガン、大腸の粘膜内ガン、皮膚の悪性黒色腫の上皮内ガン)は対象外で、責任開始日前に罹患した場合は診断確定が責任開始日以降であっても診断給付金は支払われません。

急性心筋梗塞

責任開始日以降の疾病を原因として、急性心筋梗塞を発病し、その疾病により初めて医師の診療を受けた日から60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師によって診断された場合に保険金の支払い対象となります。
ただし、保障開始日以後の疾病であっても、保険期間中に急性心筋梗塞を発病し、その急性心筋梗塞により初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、労働の制限を必要とする状態(軽い家事等の軽労働や事務等はできるが、それ以上の活動では制限を必要とする状態)が継続したと医師によって診断されたときは該当しません。

脳卒中

責任開始日以降の疾病を原因として、脳卒中を発病し、その疾病により初めて医師の診療を受けた日から60日以上、言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師によって診断された場合に保険金の支払い対象となります。
ただし、保障開始日以後の疾病であっても、保守期間中に脳卒中を発病し、その脳卒中により初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されたときは該当しません。

条件が厳しいなと思われた方も多いのではないでしょうか。しかし、団信は万が一の場合に役立つものです。住宅ローンを借り入れた時は健康だったかもしれませんが、住宅ローンは20年、30年と返済期間が長期にわたり、返済期間中に予期せぬ事態が起こるかもしれません。団信に加入する場合は、生命保険も含めて保障内容の充実度を金融機関同士で比べてみてはいかがでしょうか。分からない場合は、専門の店舗やファイナンシャル・プランナーなどに相談してみるのもよいでしょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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