住宅を購入する際には多くの場合、マンション業者やハウスメーカー、不動産会社の提携金融機関が作成した資金プラン案が提示されます。そこに記載されたままの金利タイプ、返済期間で住宅ローンを決めると、後悔することになりかねません。住宅ローンは自分で調べ、理解して、納得の上で選ぶようにしましょう。

住宅ローンは、わからなくて当たり前!

住宅を購入する多くの人は住宅ローンを活用しますが、初めて住宅ローンを組むときは、わからないことばかりで、何をどう検討したらよいか戸惑う方が多いのではないでしょうか。
住宅の購入を決めると、マンション業者やハウスメーカー、不動産会社は、提携している金融機関が作成した資金計画案を顧客に提示します。そこには、諸費用、借入額、金利タイプ、適用金利、返済期間などが記載されています。
顧客の中には、提案された金融機関の住宅ローンを使わないとダメだと思っている方もいますが、そんなことはありません。どの金融機関から借りても結構です。自分にとって有利な住宅ローンを自分で選び、条件も自分で決めればよいのです。

以下に、私のところに相談に来られたお客さまの事例を示し、住宅ローンを決めるときのポイントを考えてみましょう。

この方は、物件価格4,700万円の新築マンションの購入を決めて手付金100万円を払い、マンション業者から住宅ローンの借入返済案を提示されました。2ヶ月後までに住宅ローンを具体的に決めて欲しいと言われています。
お客さまは、提携金融機関からの借入返済案をそのまま鵜呑みにして借りることに抵抗を感じていました。「もっと他の金融機関が自分にあった住宅ローンを提供しているかもしれない」、また、「金利タイプや返済期間なども、自分にあった条件があるかもしれない」と思っているからです。しかし、初めてのことでよくわからず、自分で調べるにもどこから手を付けていいかわからない、また、期限が切られているために焦る気持ちもあり、ご相談に来られました。

初めて住宅ローンを決めるときは、わからなくて当然ですが、借りる額が大きく、返済も長期間に及ぶだけに、決める条件次第で負担額も大きく異なります。そのため、提示されるままに決めてしまわないほうがいいでしょう。住宅ローンの特徴を自分でしっかり理解し、将来のライフプランへの影響も考慮して、自分にとってできるだけ有利なローンを、ムリのない条件で借りるようにしたいものです。

<事例>

■プロフィール等
・夫:38歳
 会社員、60歳定年、現在の年収700万円、退職金予定額2,000万円、65歳まで再雇用制度あり(ただし、収入は5割に減る予定)
・妻:33歳 専業主婦、末子が小学生になったらパートの仕事をする予定
・長女:4歳
・長男:1歳
 子供の教育について、基本的には高校までは公立学校、大学は私立学校を想定しているが、本人の希望により、高校・大学が私立学校になる可能性あり。

■取得予定の住宅等の情報
・新築マンション:物件価格4,700万円
 手付金:100万円(支払い済)
 諸費用:約200万円
 自己資金(現在の貯蓄から住宅取得に活用できる金額):800万円
 住宅取得直後の貯蓄額:200万円

<提携金融機関からの借入返済案>

・借入額:4,000万円
・金利タイプ:0.625%<変動金利(半年型)>
※提示時期の金利。実際の適用金利は借入時の金利。
・返済期間:35年
・返済方式:元利均等返済方式
・毎月返済額:79,544円
・ボーナス返済額:159,273円

事例の情報をもとに住宅ローンの条件を評価する!

私のこれまでの相談経験では、提携金融機関の借入返済案を持参されたお客さまのほとんどが、金利タイプは金利が最も低い「変動金利(半年型)」、返済期間は住宅ローンで設定できる最長の「35年」となっていました。この条件は顧客にとって毎月の負担が最も軽く見えるプランです。
しかし、このままで本当によいのでしょうか。

お客さまの年齢や家族構成、将来のライフプランなども考慮して、おもな借入条件を決めるポイントを考えてみましょう。

返済期間

現在の夫の年齢は38歳です、借入返済案の35年返済では完済時年齢が73歳になります。
定年は60歳。その後も65歳までは再雇用制度を使って働くことができますが、収入は5割に減る予定です。65歳からの収入は公的年金だけになります。
この方の場合、老後のことも考えると、返済期間は60歳の定年までの22年までにするのが理想です。しかし返済期間を短くすると毎月返済額、ボーナス返済額がアップします。将来の子供の教育費負担を考えると、ローン返済で家計を圧迫するのはできるだけ避けたいところでしょう。
これらのことを考えると、返済期間は60歳定年までの22年を理想としつつ、勤労収入がある65歳までの27年、それでも家計が厳しいようなら30年くらいを目途に設定してはいかがでしょう。なお、返済期間はできるだけ短くするのが総返済額の負担軽減のコツです。

金利タイプ

「変動金利(半年型)」が提案されていますが、今後長期に渡る返済期間の中では金利が上昇するリスクがあり、そうなると返済額はアップします。金利が上昇しそうな局面になると繰上返済をして元金を一気に減らせる家計であればいいのですが、この方の場合、取得直後の貯蓄額も200万円程度とさほど多くなく、その後も教育費の支出が予定されています。妻が将来パートで働くと家計は助かりますが、子供が高校から私立学校に通うようになれば、教育費負担が大きくなります。下のお子さんが大学を卒業するのは22年後で、その年に夫は60歳で定年を迎えます。つまりこの家計は、将来、繰上返済のために貯蓄するゆとりができない可能性があります。
ゆとりのない家計では、変動金利(半年型)ではなく、固定金利タイプを選択するのが適しています。固定金利タイプであれば市場金利が上昇しても返済額は変わりません。返済額が変わらなければ、その後のライフプランを変更しなくてもすみます。もちろん、現時点だけみると変動金利よりも固定金利のほうが金利は高いのですが、それでも現在の固定金利タイプは過去最低水準を示しています。

ボーナス返済

ボーナス返済を活用するかどうかは、勤務先のボーナス支給のしかたを考えればよいでしょう。ひと口にボーナスと言っても、その支給の考え方は会社によってマチマチです。会社の業績や本人の能力次第でボーナス額が大きく変動する会社もあれば、一定額までは固定で一部のみ業績や能力次第で変動する会社もあります。なかには、年齢や資格等級によってボーナス額が決まっている会社もあります。
ボーナス返済は、安定額の範囲内で活用するのがポイントです。たとえば、業績がよければ1回ボーナスが100万円、業績が悪いとまったく出ないような会社に勤めている人は、ボーナス返済を使わず、毎月返済のみで返済したほうがいいでしょう。逆にボーナスの額が基本給の1ヶ月分は確実に支給され、上乗せ部分は業績に連動するような会社の場合だと、返済額が1ヶ月分の基本給の範囲内に収まるようにボーナス返済を活用してはいかがでしょうか。

このように、年齢や家族構成、今後のライフプランに配慮して金利タイプや返済期間を決めることができれば、自分でインタネットを活用してシミュレーションをしながら金融機関を比較・検討しやすくなり、選ぶことができるでしょう。

住宅ローンは、みずから仕組みを理解すれば自分に合ったものを選ぶことができるようになります。適切な選択ができると納得感も高まります。「どうせわからないから・・・」と人任せにするのではなく、「せっかくの機会だから納得できるように、ちゃんと学習して自分に合った有利な選択をしよう」という考えで取り組んで欲しいものです。

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この記事の筆者
中村宏 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、住宅ローンアドバイザー

個人相談、セミナー講師、新聞や雑誌・Webの記事執筆や取材協力が主な業務。
暮らしのお金に関するお役立ち情報として、無料のメールマガジン「生活マネー ミニ講座」(平日:毎日)を配信中。

FPオフィス ワーク・ワークス代表

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