2016年も残すところ数日となりました。今年の住宅ローン金利は史上最低水準と言われ、【フラット35】を見ても過去最低金利を更新しました。マイナス金利政策やイギリスのEU離脱、さらにはアメリカ大統領選でのトランプ勝利が、住宅ローン金利にどう影響を与えたのか、今年の動きを振り返るとともに、来年の住宅ローン金利の動向を考えてみたいと思います。

2016年は史上最低と言われるまで金利が下がった

2016年の住宅ローン事情といえば、まず思い浮かぶのは、「過去最低金利の更新」でしょう。
【フラット35】の金利動向を振り返ってみると、2016年5月には、借入期間15〜20年の金利が0.96%と1%を切り、7月には借入期間21〜35年でも0.93%と1%を切りました。そして、8月には0.90%と史上最低金利をさらに更新したことは大きな話題になりました。

関連記事はこちら>>「住宅ローン【フラット35】過去最低金利をさらに更新! 2016年8月金利」

なぜ2016年は、これほど住宅ローン金利が下がったのでしょうか。住宅ローン金利は、ある指標に連動して上下するのですが、その仕組みを簡単におさらいしてきましょう。
長期固定金利は、「国債の金利(新発10年国債の利回り)と、変動金利・短期固定金利は、「短期プライムレート」と、連動していると言われています。
「新発10年国債」とは、新規に発行される償還年限が10年の国債のことで、毎月発行されています。信用度が高くこの国債の金利が長期金利の代表的な指標となり、住宅ローンの長期固定金利にも影響を与えています。
また、「短期プライムレート」とは、銀行が最優良な企業に貸し出す時の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、1年以内の短期貸出金利のことを「短期プライムレート」といい、住宅ローンの変動金利や短期固定金利に影響を与えています。
この指標の金利が上下すると、連動して住宅ローン金利も上下に動くのです。それでは、なぜこれほど金利が下がったのか振り返ってみましょう。

マイナス金利政策で金利が低下

日銀は、2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、その目標達成策の一環として、今年2月よりマイナス金利政策を実施しました。
このマイナス金利政策は、金融機関が日本銀行にお金を預けるときに、利子がつくどころか逆に預金している分の利子を日本銀行に払わなければいけないというものです。そのため、金融機関としては日本銀行に預けていたお金を、他に貸し出さなければならなくなりました。さらに、マイナス金利の影響で新発10年国債の金利も低下したため、住宅ローンの金利は大きく下がっていったのです。

イギリスのEU離脱決定が住宅ローン金利にも影響

さらに、6月にはイギリスがEUを離脱することが決まり、このことも住宅ローン金利を引き下げる方向に働きました。EU離脱を受けてポンドが下落、投資家はリスクを避けようと各国の国債を買う動きを強めました。
その結果、日本の長期金利の指標となる新発10年国債の利回りは、過去最低を更新したのです。
7月、8月と【フラット35】の金利が過去最低を更新した背景には、こうした動きが影響しているといえるでしょう。

アメリカ大統領選挙、トランプ勝利の影響は?

マイナスの金利となった新発10年国債の金利を上昇させようと、日銀は9月に、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を実施しましたが、さまざまな要因も重なり、効果は思うように出ない状態が続きました。
そのような状況の中、11月8日に行われたのがアメリカ大統領選挙です。トランプ氏が当選したため、アメリカの10年国債金利が1%台後半から2.3%を超える水準まで上昇し、そのお陰か日本の新発10年国債の金利も、マイナスから12月には0.05%から0.06%と上昇しました。
とはいえ、昨年より低い金利水準である状況に変わりはありません。

来年の住宅ローンはどうなる?

そこで気になるのが、今後の住宅ローン金利の動向です。今年、底を打った感のある住宅ローン金利ですが、来年は上昇するのでしょうか。
まず国内外の動向を見てみましょう。
日本経済への影響力が強いアメリカの状況を見てみると、この12月に米連邦準備理事会(FRB)が、2015年12月のゼロ金利政策解除以来、1年ぶりに利上げを行いました。
来年は、年に3回、利上げが行われるのではないかという予想も出ています。そうなれば、その影響で日本の長期国債の金利が上がり、連鎖して住宅ローン金利の上昇する要因にもなりかねません。アメリカの金利の上昇が続けば、円安ドル高の要因ともなります。 
しかし、イタリアなどヨーロッパ経済の先行き不安やアメリカの金利上昇を不安視する諸外国もあり、安定通貨として日本円が買われ、円高ドル安になる可能性もあり、諸外国の動向も見逃せません。
すでに就任後のトランプ氏の経済政策への期待から、日本でも円安ドル高が進み、株価や長期金利の上昇が起こっています。当面は、来年1月20日の就任以降の政策が、どのように日本に影響するか注視されるところです。2017年はトランプ次期大統領の言動に要注意といえるでしょう。
国内では、先ほどもお話したように、日銀が消費者物価の前年比上昇率を2%と目標を定めており、今後の政策次第では金利が上昇するかもしれません。しかし、最近になって日銀の黒田総裁が、2%の目標達成を2017年度中から2018年度中に先送りすると発言したことは記憶に新しいところです。となると、金利が上昇していくかどうかは疑問ではないでしょうか。

国内においては、残念ながら急速に景気がよくなり、金利が大きく上昇をする要因はないといえます。そのため、住宅ローン金利も急激な上昇はないように思えます。
ただ、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、建築資材や人件費などの高騰による住宅購入価格の値上がりは、首都圏に限らず全国規模にすでに始まっています。来年は、この傾向がより顕著になることが予想されます。
住宅購入をお考えの方は、住宅ローン金利と物件価格の動向を見ながら、慎重に判断していただきたいと思います。

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この記事の筆者
牧野寿和 ファイナンシャル・プランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者
「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務の他、不動産投資、賃貸経営のアドバイスも行っている。著書に「銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法」(河出書房新社)がある。

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