家計の健全性をチェックする際には、家計収支と資産と負債のバランスを見ることが大切ですが、オーバーローンによって家計が債務超過の状態になるケースがあります。今回はオーバーローンについて見てみましょう。

オーバーローンってどんなもの?

オーバーローンとは、土地や建物など担保となっている不動産の時価よりも住宅ローンなどの借入金額が上回っている状態のこと、つまり債務超過の状態をいいます。例えば、3,500万円の新築マンションを購入して、自己資金を入れずに、3,500万円の住宅ローンを組んだとします。3年後、住宅ローンの残高がまだ3,200万円もあるのに、マンションの時価評価が3,000万円に下がっていたという場合、マンションを売却して住宅ローンを返済しても300万円の負債が残ってしまいます。この状態がオーバーローンです。
オーバーローン状態になると、資産価値よりも負債の方が多いわけですから、家を売却してローンを完済しても、住む家がないにもかかわらず債務が残ってしまうことになります。また、家を住み替える場合(つまり買い替え)に利用できる住宅ローンが少ない、金利や保証料が高くなる場合があることなどもデメリットといえるでしょう。借り換えをする際にも、条件が不利になったり、債務超過額が多額になると、希望する金額が借りられなくなったりするケースもあるので注意が必要です。

オーバーローンはどんなときに起こるの? 解消する方法は?

オーバーローンが一番良く発生するのは、「諸経費も含めて、住宅ローンを借り入れ、新築住宅を購入した」というケース、つまり頭金が非常に少ない場合です。住宅を取得する際には、物件価格の5~10%程度の諸経費がかかります。金融機関によっても取り扱いが異なりますが、住宅ローンでは物件価格だけでなく、この諸経費も含めて借り入れることができるようになっています。
仮に、物件価格4,000万円の物件を購入する際に、諸費用が300万円かかるとします。
例えば、住宅を購入する資金として800万円を準備している場合、住宅ローンの借入金額は3,500万円となり、たとえ購入後すぐに時価評価が購入価格から1割下がり3,600万円になった場合でもオーバーローンではありません。一方で、資金準備が十分でなく200万円しか用意できなかった場合、諸費用も含めて4,100万円のローンを組むことになり、購入直後にオーバーローンとなってしまいます。さらに、時価が下がった場合にはオーバーローン状態が長期間続いてしまうのです。
こういったことからも、物件価格の2~3割程度は頭金を準備しておくことがやはり大切といえますね。
もし、オーバーローンになってしまった場合には、住宅ローンの繰り上げ返済を定期的に行うと良いでしょう。繰り上げ返済は一度に大きい金額を返済するだけでなく、毎月少しずつ継続的に繰り上げ返済することも効果的です。ただ、少しずつこまめに繰り上げする場合には、繰り上げ返済手数料をチェックすることも忘れずに!

オーバーローンはどんなときに困るの?

もちろん、オーバーローンになっているからといって、きちんと金融機関の審査を受けて、正式に手続きをしているわけですから、毎月住宅ローンの返済をきちんと続けているぶんには、すぐに何か問題が生じることはありません。問題が出てくるのは、転勤や転職、介護、あるいは離婚、財産分与などで自宅を売却する必要がでたときです。
売却する自宅には金融機関の抵当権がついているので、売却する際にはその抵当権を外してもらうために住宅ローンを完済する必要があります。売却価格>ローン残高であれば全く問題ありませんが、オーバーローンの状態、つまり物件を売ってもローンが完済できない場合には、差額を現金で返済しなければなりません。
不足分を補てんできる現金が手元にあるケースや住み替えをする場合で買い替えローンを活用して、住宅ローンの完済資金を不足分も含めて別の金融機関が肩代わりしてくれるのであれば問題ありませんが、もっとも困るのは離婚などで財産分与をするケースです。

近年、共働き夫婦が増えたこともあり、住宅ローンを夫婦2人の収入で一緒に返済する収入合算で組むことが増えています。収入合算で組む場合には、夫婦の一方が主たる債務者となり、もう一方の配偶者は連帯保証人もしくは連帯債務者となります。
オーバーローンになっている住宅の場合、売却価格<ローン残高なので、その時点での価値はゼロと判断されますが、だからといって連帯債務者や連帯保証人のローン返済をする債務が免除されるわけではありません。仮に、500万円のオーバーローン状態であれば、連帯債務者や連帯保証人となっている妻(夫)が離婚後も返済する必要があるため、もめるケースもしばしばです。こういった場合は、離婚後も夫婦のどちらかが住宅に住みながら住宅ローンの支払いを続けるケースや住宅ローンを組んだ金融機関と話し合いを行い、住宅ローンを残したままで抵当権を解除してもらう任意売却という方法がありますが、いずれにしても、その後の生活に支障が出るケースも少なくありません。

このようにオーバーローンの場合には、住宅売却時に問題が発生します。家を購入した際に、将来売却することや離婚リスクまで考える人はあまりいないかもしれませんが、万が一のために、定期的に住宅ローン残高と自宅の時価を比較して、オーバーローン状態になっていないか、チェックしておくことをおすすめします。なお、自宅の時価を正確に評価するのはなかなか大変ですが、ここでは「いくらで売れそうか?」という値段がひとつの目安になるので、過去の不動産取引事例を参考にしてつけられている実勢価格を見ておくとよいでしょう。
手軽に調べるには、以下の方法があります。

①国土交通省の「土地情報総合システム」で調べる
②取り扱い物件が多い不動産情報ポータルサイト(例:アットホーム、ホームズ、スーモなど)、地元の物件に強い不動産仲介会社のサイトで自宅近くの物件を調べる

2~3年に一回程度は、住宅ローン残高と住宅の時価のバランスをチェックしておきたいものですね。

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この記事の筆者
金子千春 ファイナンシャル・プランナー

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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