もしも二世帯住宅で暮らすなら? 二世帯住宅の主なタイプと特徴

核家族化が進み、高齢者の一人暮らし世帯が増加している現在、親世帯と子世帯の二世帯が一緒に暮らす「二世帯住宅」を検討する方が増えています。親との同居を決める理由は、「親の老後が心配」「実家が老朽化していて建て替えが必要」「孫と会う時間を増やしてあげたい」「共働きなので親に子育てをサポートして欲しい」「自力ではマイホーム購入の資金が足りない」「大震災をきっかけに家族の絆を再認識した」など様々。また、2015年1月1日から、相続税の基礎控除額が大きく減額されたことも影響し、注目を集めています。

しかし、「過干渉になりがち」「気を遣うことに疲れてしまう」「生活時間帯やライフスタイルが合わない」といった悩みから、家族の関係がぎくしゃくしてしまうことも。失敗しないためには、どんな二世帯住宅を建てれば良いのでしょうか?
今回は、二世帯住宅の主なタイプと、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

写真はイメージです
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同居型二世帯住宅

親世帯と子世帯で、個室以外の全ての空間を共用するタイプです。

メリット
通常の戸建てとほぼ変わりませんので、工事期間や建築費用を抑え、必要なスペースも最小限ですみます。水道光熱費も一括のため、経済的です。世帯間で密接に関わることになるため、生活時間帯やライフスタイルの違いを気にしなくて良い、介護などのため目を離せないといった場合に適しています。

デメリット
世帯ごとのプライベートを確保しづらく、顔を合わせる時間が多くなりますので、互いが気を遣ってしまい、心が休まらないケースもあるでしょう。事前に同居のルールを作っておいたり、プライベートを確保しやすいよう個々の居室を広めにとったり、何かしらの工夫が必要です。

部分分離型二世帯住宅

その名の通り、一部を共用に、その他の生活空間を別々に設けるタイプの二世帯住宅です。玄関以外は全て別々のケースもあれば、リビングを世帯ごとに設け、浴室やダイニングキッチンは共用するケースなど、暮らし方によって多くのバリエーションがあります。

※玄関と浴室を共用にして、1階に親世帯、2階に子世帯を設けた2世帯住宅の一例。親世帯はワンフロアで生活が完結し、子世帯は浴室を共用にした分、2階に居室を広くしたり、増やしたりできるメリットがあります。
※玄関と浴室を共用にして、1階に親世帯、2階に子世帯を設けた2世帯住宅の一例。親世帯はワンフロアで生活が完結し、子世帯は浴室を共用にした分、2階に居室を広くしたり、増やしたりできるメリットがあります。

メリット
世帯ごとの生活パターンに合わせて、共有する場所、独立させる場所を分けることができます。共有スペースが増えるほど、建築費用や必要なスペース、場所によっては水道光熱費も抑えることができます。上手く計画すれば、プライバシーを保ちつつ、お互いの存在を感じて助け合うことができ、絶妙な距離感をもって暮らせるでしょう。
大きなポイントとしては、食事を一緒にとるのか(食事の内容や時間帯が同じか)、入浴時間は被らないかといったところが争点になるでしょう。トイレは世帯ごとに設けるか、複数のトイレを共用するケースがほとんどです。

デメリット
半同居型は、同居型と完全分離型の「いいとこ取り」と言える半面、どっちつかずになってしまうケースもあります。事前に「どこまで生活をともにしたいのか」じっくりと話し合ってから間取りを考える必要があります。お子様の有無や生活リズムの変化により、同じ家でも住み心地に変化が生じやすいので、長期的な視野に立ってプランニングをしなければならない難しさがあります。

完全分離型二世帯住宅

1階が親世帯・2階が子世帯、完全分離型の二世帯住宅に建て替えた小金井市・Sさんの実例は、「住宅購入者ストーリー」で紹介しています。
1階が親世帯・2階が子世帯、完全分離型の二世帯住宅に建て替えた小金井市・Sさんの実例は、「住宅購入者ストーリー」で紹介しています。詳しくはこちら

玄関から内部空間まで、一つの建物を上下階、もしくは左右で分け、世帯ごとに住宅としての全機能を持たせた二世帯住宅です。階段を使う必要がなくバリアフリーにしやすい1階を親世帯、2階(もしくは2・3階)を子世帯とするケースが目立ちます。親世帯の年齢が若く、お子様の足音などが気になりそうな場合や、両世帯とも庭が欲しい場合などは垂直に分けますが、階段が2つ必要になるなど、コストもスペースも必要となります。

※1階に親世帯、1階の一部と2階に子世帯を設けた2世帯住宅の一例。この場合、子ども部屋が親世帯LDKの真上にあるため、お子様の駆け回る音などが気にならないか、防音対策を講じたり、事前に話し合いをしたりする必要があるでしょう。
※1階に親世帯、1階の一部と2階に子世帯を設けた2世帯住宅の一例。この場合、子ども部屋が親世帯LDKの真上にあるため、お子様の駆け回る音などが気にならないか、防音対策を講じたり、事前に話し合いをしたりする必要があるでしょう。

メリット
世帯ごとにプライベートを確保しやすく、各々のライフスタイルで暮らすことができます。出勤や登校~帰宅の時間、食事はいつ、何を食べるのか、入浴のタイミング、就寝時間など、互いに気を遣わずに暮らせます。「親世帯とは顔を合わせない日もある」という声も多いタイプです。
玄関から別なので、両親が亡くなってしまった、子世帯が転勤のため家を空けなければならなくなったといった事情が生じても、賃貸として貸し出すことも可能。左右で分けた二世帯住宅なら、より貸しやすいでしょう。

デメリット
ほぼ2軒分の工事期間や建築費用が掛かります。縦割りの二世帯住宅を建てる場合は、土地の広さも求められます。水道光熱費も当然、丸々2軒分掛かります。

相続税を大幅に削減できる?二世帯住宅

2015年に相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、今まで相続税とは無縁だった世帯も課税対象者となりました。
そこで注目されたのが、「小規模宅地等の特例」です。二世帯住宅でお子世帯と子世帯が生活を共にすれば特例が適用され、二世帯住宅が建つ敷地全体の評価額が最大80%減額されます。税制改正のタイミングで二世帯住宅の要件が緩和されたため、上記で挙げた全ての二世帯住宅が特例の対象となります。(ただし、区分所有登記をしていると対象外となりますのでご注意を)。地価が高い都市部では、相続財産の大半を土地が占めるケースが多いため、二世帯住宅を建てることが相続税対策になる可能性が大きいのです。

二世帯住宅を建てる際は、通常の家づくり以上にじっくりと話し合い、全員が快適に暮らせる住まいの有り方を考える必要があります。資金の負担割合や住宅ローンの組み方、誰の名前で登記をするか、相続税対策まで見据える必要があります。
そして何よりも大切なのは、二世帯が近くで暮らすことを「ストレス」ではなく「安心」と思える距離感を保つこと。家族全員の生活習慣を考慮した上で、後悔のない家づくりを心掛けましょう。

(text 斎藤若菜)

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(最終更新日:2019.10.05)
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