配偶者控除が廃止されるかもしれないと聞きました。そもそも配偶者控除とはどういうものでしょうか? 廃止された場合、どうなるのでしょうか?(30代/女性/パート)

★ファイナンシャル・プランナー 金子千春さんからのアドバイス

まず、細かく見ていく前に、「収入」と「所得」の違いから確認します。会社員の方で考えると、「収入」とはいわゆる税金や社会保険料が引かれる前の額面の収入、いわゆる「年収」のことです。一方で、「所得」というのは、税金を計算する際の基となる金額で、上記の収入(年収)から給与所得控除などの「税金を安くするための金額」を差し引いた金額になります。これを踏まえてみていきましょう。

配偶者控除とは?

「配偶者控除」とは、年間の合計所得金額が38万円以下(給与収入のみであれば103万円以下)など一定の条件を満たす控除対象配偶者(内縁は含まず)がいる場合に、一定の金額を所得から引いて税金を計算してもらえる制度です。
所得から控除される金額は、以下の通り。

●一般の控除対象配偶者 38万円
●老人控除対象配偶者  48万円
(その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の場合)

※なお、配偶者が障害者の場合、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)を受けることができます。

例えば、妻のパート収入が103万円(ほかの収入なし)の夫婦の場合で考えてみましょう。パート収入は「給与所得」という所得区分になりますので、給与収入では最低65万円を給与所得控除として収入から引いて税金を計算してくれます。給与所得控除とは、会社員の「みなし経費」のようなものです。

妻の年間の合計所得金額=103万円(給与収入)-65万円(給与所得控除)
=38万円

つまり、合計所得金額が38万円となるので、「配偶者控除」の対象となり、夫の所得から38万円を控除して税金を計算してもらえます。

一方、妻の所得はどうなるのかというと、合計所得金額38万円から妻自身の基礎控除38万円を引いて所得はゼロ、妻には所得税がかかりません。(なお、この場合でも住民税は課税されるので要注意です。一般的には、収入金額(給与収入)から必要経費(給与所得控除)を差し引いた所得金額が、35万円以下(給与所得者の場合、年収100万円以下)のときは、個人住民税も所得税も課税されません。)

このように妻の年間の合計所得金額を38万円以下に抑えることで、実質的に世帯にかかる税金を減らすことができるのです。これは、サラリーマンである夫の年収が500万円(社会保険料控除を68万円と仮定)の場合に、所得税にして年間3万8,000円の節税の効果を果たしているといわれています。もちろん、別途、住民税の節税効果も期待できますので大きい効果ですね。実際に、配偶者控除を受けたいために、配偶者がいるパート女性のうち、103万円以内に収入を調整して働く人も多いようです。

ただ、パート収入が103万円を超えたからと言って、すぐに控除額がゼロになるわけではありません。「配偶者控除」が受けられる要件に加えてさらに一定の要件を満たしていれば、「配偶者特別控除」を受けられます。追加要件は、「夫(納税者が夫の場合)の年間合計所得金額が1,000万円以下」「妻の年間合計所得金額が38万円超76万円未満」です。つまり、パート収入のみの妻であれば、パート収入が103万円超141万円未満です。この場合には、「配偶者控除」として、妻の所得金額に応じて、最低3万円~最高38万円までの所得控除を夫が受けられるわけです。

「配偶者控除」が廃止される?

実は、「配偶者特別控除」は変わりありませんが、「配偶者控除」が2017年を目安に廃止され、代わりに夫婦であれば収入にかかわらず受けられる「夫婦控除」を設けることが検討されています。詳細はこれから検討されますが、背景には、配偶者控除をなくし、「103万円の壁」をなくすことで、女性の働き方の違いによる不公平感をなくすと同時に女性の働き手を増やす狙いがあります。
これまで、配偶者控除を気にして勤務時間を抑えていたという人は、自身の年収にかかわりなく使える「夫婦控除」が制定されれば、「103万の壁」を意識せず働けるようになるわけです。一方で、「夫婦控除」の金額が38万円以下になる場合には、実質的には増税となります。

年収130万円の壁が引き下げられる

また、もうひとつ、パートなどの主婦を悩ましているのが「130万円の壁」といわれるものです。夫が会社員や公務員の場合、妻の年収(所得ではありません)が130万円までであれば、年金や健康保険の被扶養者になり保険料負担が必要ありませんが、年収130万円を超えると、年金や健康保険の保険料を自分で支払わなければなりません。
この「年収130万円のライン」が一部の人にとって「106万円」に引き下げられます。2016年10月から、パートなどの短時間労働者の厚生年金適用の基準が拡大され、週20時間以上、1ヶ月の賃金が8.8万円(通勤費込 見込年収106万円)以上、勤務期間が1年以上見込、勤務先が従業員501人以上の企業などの一定の基準を満たす場合には、厚生年金・健康保険に加入して、自分で保険料を支払わなければなりません。これはかなりの負担増です。どうやらその後も、従業員数の規制を緩めて対象者を増やす方向のようです。

こうしてみると、増税、社会保険料負担増額など嫌なことばかりかと思いますが、発想の転換も必要です。もし、これまで税金や社会保険料負担を抑えるために、働くことを抑えていた場合には、社会保険(年金、健康保険)が夫の扶養からはずれて、自分自身で厚生年金や健康保険の保険料を支払っても、世帯収入が減らない目安の年収160万円超までしっかり働くという考え方もあります。
また、厚生年金に加入して自分で保険料を支払えば、その分、自分自身の年金額が増えることにもつながりますし、健康保険に加入すれば、病気やケガなどで会社を長期間休む際には、傷病手当金も支給される、というプラスの側面もあります。
働き方によってどう家計に影響が及ぶのかをチェックして、今のうちから対策を考えたいものですね。

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この記事の筆者
金子千春 ファイナンシャル・プランナー

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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