【フラット35】を利用するなら、団体信用生命保険加入よりも生命保険?

住宅ローン利用の際、ほとんどの金融機関で加入が必須の「団体信用生命保険」。しかし【フラット35】の場合は任意加入なので、代わりに生命保険で万一に備える方もいます。しかし、生命保険は年齢等で保険料が異なり、一概に「割安」なわけではありません。生命保険を選んだ場合のメリットや注意点を確認してみましょう。

【フラット35】は、団体信用生命保険への加入は任意

「団体信用生命保険」とは、住宅ローンの利用者が死亡・高度障害となった場合に保険金でその時点の住宅ローンの残高が完済される保険です。住宅ローン利用の際にはほとんどの金融機関で加入が必須で、その保険料は金融機関が負担(ローン金利に含まれる)します。
しかし、【フラット35】は団体信用生命保険への加入は任意で、途中解約も可能です。【フラット35】利用者向けの「機構団体信用生命保険特約制度」を利用する場合は、利用者は住宅ローンの返済とは別に「機構団体信用生命保険特約料(以下特約料)」を毎年支払う必要があります。
特約料はローン残高に応じて計算されるので返済初期ほど特約料が高く、その後年々下がっていきます。一部繰り上げ返済を行ってローン残高が減少した場合などは、次回の特約料の計算に反映され、特約料は下がります。特約料に年齢や性別による違いはありません。

<表1:機構団信特約制度の毎年の特約料支払額の目安>

・借入金額3,000万円、借入金利1.0%、元利均等返済、返済期間30年の場合
・特約料総支払額の目安は、1,728,100円

  特約料(円)   特約料(円)
1年目 107,300 20年目 42,300
5年目 95,100 25年目 22,800
10年目 78,400 30年目 2,300
15年目 60,800 - -

【フラット35】住宅金融支援機構ホームページにて試算

団体信用生命保険の代わりなら、収入保障保険

ローン返済中の万一に備える費用を節約しようと、機構団信の代わりに収入保障保険などの生命保険を選ぶ方もいます。
「収入保障保険」は、保険期間中に死亡・高度障害となった場合に、年金が支給される保険です。たとえば、年金月額10万円、保険期間30年の契約で、10年経過後に死亡したら、残る20年の保険期間中毎月10万円が給付され、年金受取総額は2,400万円になります。年金形式に代えて一括で保険金を受取ることもできますが、受取総額は年金形式で受け取るより少なくなります。

<表2:収入保障保険の保険金受取の例> 「アクサダイレクトの収入保障2」

性別:男性  契約年齢:35歳   保険期間:65歳満了  年金月額:10万円
年金支払保証期間※:2年 の場合
支払事由該当年月
契約日から
該当時の年齢(歳) 年金受取の場合の
受取総額(万円)
年金受取に代えて一括受取にした場合の受取額(万円)
0年1ヶ月目 35 3,600 2,962
5年1ヶ月目 40 3,000 2,547
10年1ヶ月目 45 2,400 2,103
15年1ヶ月目 50 1,800 1,629
20年1ヶ月目 55 1,200 1,122
25年1ヶ月目 60 600 580
29年1ヶ月目 64 240 236

※年金支払保証期間:死亡・高度障害状態になった時に、保険期間満了日までの期間が年金支払保証期間よりも短い場合、保険期間が満了を迎えた後も毎月年金を受け取ることができる期間のこと。
「アクサダイレクトの収入保障2」アクサダイレクト生命保険ホームページにて試算
https://www.axa-direct-life.co.jp/res/lifeweb/simulator.html?topbnid=r_est

収入保障保険の年金月額を、毎月のローン返済額以上の金額で契約しておけば、ローン利用者死亡後、遺族は毎月の年金でローン返済を続けることができます。年金に代えて一括受取した場合の保険金額がローン残高よりも多ければ、ローン残高を一括返済することもできます。
収入保障保険の保険料は年齢や性別によって異なり、さらに、保険会社所定の条件を満たせば、健康体割引や非喫煙者割引などが適用される場合もあります。

また、生命保険を利用するメリットとしては、保障期間などを自分で決められる点もあります。
機構団信に限らず、団体信用生命保険は住宅ローンの融資実行時(一般に物件の引き渡し時)から保障が開始するため、住宅が完成する前の工事期間中等は保障対象になりません。したがって最近は、住宅完成前の死亡・高度障害に対応する「短期団信」が利用できる住宅メーカーなどもあります。
生命保険を利用する場合は、建物着工時には保障が開始されるように保険に加入すれば、住宅ローン返済中はもちろん、「住宅完成前までの万一の事態」に備えることも可能になります。

30代半ばまでは、収入保障保険のほうが割安?

機構団信の特約料には年齢による違いはありませんが、収入保障保険の保険料は若いほど安くなります。機構団信と収入保障保険の費用負担や年齢による違いを見てみましょう。
表3は【フラット35】を3,000万円借り入れ、返済期間30年、毎月返済額が9.7万円の場合の機構団信特約料と、収入保障保険(年金月額10万円)の保険料を比較したものです。機構団信の「特約料総支払額」が約173万円であるのに対して、収入保障保険の「全期間累計保険料」は、契約年齢30歳の場合は約100万円、35歳の場合は約145万円と割安ですが、40歳男性の場合は約221万円と割高になっています。商品や契約内容によっても異なりますが、大体30代半ばくらいまでは収入保障保険のほうが割安ですが、それ以上の年齢になると、特約料に年齢差のない機構団信のほうが有利になるようです。

<表3:機構団信特約料と収入保障保険の保険料の比較>

【フラット35】借入金額3,000万円、金利1%、返済期間30年、毎月返済額9.7万円 の場合
機構団体信用生命保険特約制度 1年目の特約料 107,300円
特約料総支払額:1,728,100円
収入保障保険「アクサダイレクトの収入保障2」 
年金月額10万円、年金支払保証期間2年の場合
契約年齢・満了年齢 月払保険料
年間保険料
全期間累計保険料
30歳男性・60歳満了 2,790円
33,480円
1,004,400円
35歳男性・65歳満了 4,030円
48,360円
1,450,800円
40歳男性・70歳満了 6,140円
73,680円
2,210,400円

※【フラット35】住宅金融支援機構ホームページ、アクサダイレクト生命保険ホームページにて試算
https://www.axa-direct-life.co.jp/res/lifeweb/simulator.html?topbnid=r_est

生命保険を利用するなら、早めに手続きを

「保険料試算の結果生命保険のほうが割安なので、機構団信の代わりに生命保険を利用しよう」と決めた場合は、自分自身で、早めに動き出すことが大切です。機構団信を利用する場合と異なり、ローン担当者の手は借りられないので、自分自身で生命保険を比較検討し、選び、申し込み手続きを進めなければなりません。審査や手続きにかかる期間も早めに保険会社に確認しておきましょう。生命保険の保障開始は、申込書に署名押印した後、生命保険会社が契約を承諾した場合には(1)告知あるいは診査、(2)第1回保険料充当金の払い込み、のいずれか遅い時です。
希望条件に合う生命保険が見つからなかったり、生命保険の審査に通らなかったりして、「やはり機構団信に申し込もう」という事態になることも考えられます。機構団信の申込書提出期限は、「融資の契約手続き時(金銭消費貸借契約時)」までです。遅くとも「融資の契約手続き時(金銭消費貸借契約時)」前には保険の審査結果がわかるように早めに動きましょう。生命保険の検討や手続きが間に合いそうになければ、いったん機構団体信用生命保険を利用し、その後、生命保険を十分比較検討し納得できる商品に加入してから、機構団信を途中解約するという方法も考えられます。
大切なのは、住宅ローン返済中に万一の事態が起こった場合に、遺族が返済に困らないようにすることです。機構団信にも生命保険にも加入できなくなったり、保障のない期間が生じたりすることのないように注意しましょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
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