住宅ローンの繰り上げ返済の効果はどう判断する? シミュレーション比較

住宅ローンの負担軽減は借り換えだけでなく繰り上げ返済も効果的です。繰り上げ返済の目的は「ローンの元金を減らすこと」にありますが、効果をどう判断すればよいのでしょうか? 繰り上げ返済効果について考えてみます。

住宅ローンの繰り上げ返済には2種類ある!どちらが得?

繰り上げ返済とは、定期的な返済以外に、手元の資金で住宅ローンを返済することです。

繰り上げ返済資金は、ローンの元金部分に充てられるので、それに対応する利息の負担がなくなり、結果、トータルの利息負担が軽減されるのです。

繰り上げ返済には、毎月の返済額は変えずに当初の借入期間よりもローン返済期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間は変えずに毎月の返済負担を軽減する「返済額軽減型」の2種類があります。

負担軽減額そのもので比べると、「期間短縮型」の方が有利ですが、必ずしも負担軽減額だけを見て期間短縮型を選ぶべきとは言い切れないのが住宅ローンのむずかしいところです。

具体的なシミュレーションをしてみましょう。

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<現在のローンの状況>

当初借入金額3,000万円 返済期間30年 全期間固定金利型 金利1.5% 元利均等返済 ボーナス返済なし
5年経過した時点で、約200万円の繰り上げ返済をする前提。繰り上げ返済手数料は無料。

<繰り上げ返済を実施した場合>

  期間短縮型 返済額軽減型
当初借入金額 3,000万円
ローン残高 25,888,107円
残りの返済期間 25年
金利 1.50%
当初の残返済総額 31,060,608円
毎月の返済額 103,536円 95,537円
繰り上げ返済額 195.4万円※ 200万円
繰り上げ返済効果 約84万円 約40万円
繰り上げ後の残期間 22年9ヶ月 25年

※期間短縮型の場合、繰り上げ返済の対象となる返済回数分の元金の和(積み上げ)が繰り上げ返済額となるため、複数回に分けた場合、実際に繰り上げ返済できる金額が調整されます。

では、期間短縮型と返済額軽減型のどちらが有利なのでしょうか?

このシミュレーションで、それぞれどれだけ利息額を軽減できるかを見ると、期間短縮型の方が効果は高く、かつ返済期間も短縮できることがわかります。

ただし、期間短縮型の場合には繰り上げ効果を実際に実感できるのは、一定期間が過ぎた後、つまり、ローンを完済する22年9ヶ月後です。さらに、月の返済額は変わりません。

一方で、返済額軽減型の場合には、返済期間は変わらず、利息軽減額は小さいですが、毎月の返済額を約8,000円も軽減することができます。

これはつまり、表現を変えて考えると、「今、約200万円を払えば、22年9ヶ月後に約84万円がもらえる(期間短縮型)」と「今、200万円を支払えば、来月から残りの25年、毎月約8,000円がもらえる(返済額軽減型)」というのを比較するようなものなのです。

こうしてみると、期間短縮型と返済額軽減型のどちらが得かは、家計の状態や考え方によっても異なることがわかります。

例えば、今の家計に余裕があって、とにかく早く返済したい、というのであれば期間短縮型が効果的ですし、子どもの教育費がかかる、少しでも今の家計負担を減らしたいのであれば、返済額軽減型が効果的です。

あるいは、返済額軽減型の繰り上げ返済で毎月の返済額を減額しておき、家計に余裕がでた月は期間短縮型の繰り上げ返済を実施する、という合わせ技も考えられます。

単なる金額の損得だけでなく、家計の状況や心理的な負担感の軽減も踏まえて考える必要があるでしょう。

繰り上げ返済は一気にまとめる?それとも毎年、毎月こまめに?

もうひとつ、良く疑問にあがるのが、お金を貯めて一気にまとめて繰り上げ返済をするのと、毎月、あるいは毎年少しずつ複数回に分けて繰り上げするのとどちらが有利か?という点です。

これも実際にシミュレーションで検証してみます。

ケースA:10年間お金を貯めて、10年後に約200万円繰り上げ返済
ケースB:毎年20万円、10年間で合計約200万円繰り上げ返済

<住宅ローンの条件>

借入金額3,000万円 返済期間30年 全期間固定金利型 金利1.5% 元利均等返済 ボーナス返済なし
※借り入れした後、期間短縮型の繰り上げ返済を実施、繰り上げ返済手数料は無料と仮定して試算

  ケースA ケースB
借入金額 3,000万円
返済期間 30年
金利 1.50%
総返済額 37,272,768円
毎月の返済額 103,536円
繰り上げ返済額※ 194.7万円 約145万円
総返済額 36,631,320円 36,655,241円
繰り上げ返済効果 約64万円 約62万円
繰り上げ後の返済期間 27年11ヶ月 28年4ヶ月

※期間短縮型で試算。
※繰り上げ返済の対象となる返済回数分の元金の和(積み上げ)が繰り上げ返済額となるため、複数回に分けた場合、実際に繰り上げ返済できる金額が調整されます。

実際には繰り上げ返済手数料の負担も考慮しなければなりませんが、このケースでは、毎年少しずつ実施した方が、少ない金額で同程度の繰り上げ返済効果を得ることができています。

早いうちから繰り上げ返済に着手するほうがメリットが大きいからです。

しかし、繰り上げ返済の効果は金利情勢にも左右されます。現時点のような借入金利が低い状況では大きな差はありません。

毎月5,000円、1万円ずつでも繰り上げ返済を継続することで結果的には大きな利息軽減につながりますので、あまり気にせず自分の家計のペースで繰り上げ返済をしましょう。

なお、いつでも手数料無料で1万円からでも繰り上げ返済が可能、ネットであれば手数料無料で10万円以上から可能など、金融機関によって繰り上げ返済の取り扱いがかなり変わります。

もし、余裕がある月に少しずつ繰り上げ返済をこまめに実施したいのであれば、少額からいつでも手数料無料で繰り上げ返済が可能な住宅ローン商品を選んでおく必要もあるでしょう。

したがって、繰り上げ返済を毎月、毎年のように複数回に分けて実施したい場合には、いくらから可能かという繰り上げ返済の単位と手数料などのコストは事前にチェックしておくことが大切ですね。

また、繰り上げ返済をするよりも、金利の低い時に借入金利が低い住宅ローンに借り換えをしたほうが、返済負担削減の効果が発揮されるケースもあります。住宅ローンの借り換えとは、現在の借入残高分をより金利の安い住宅ローンで借り入れして、その資金で完済、その後は新たに借り入れたローンの返済を行っていくことをいいます。

低い金利に借り換えることでも利息の負担は減るので、その削減額が、繰り上げ返済をした時の削減額を上回る場合もあるのです。借り換えは新たに住宅ローンを組むことになるので、事務手数料や保証料などの諸費用が発生しますが、諸費用の額以上の利息軽減効果があれば借り換えをしたほうがお得ということになります。

また、繰り上げ返済と借り換えを組み合わせるケースも考えられます。

金融機関が提供しているシミュレーションツールを活用すれば、定期的に繰り上げ返済をした場合、1回だけ繰り上げ返済をした場合、借り換えをした場合、とさまざまなケースで試算することができるので、自分にとってはどんなケースが有利か、さまざまな条件を設定してシミュレーションしてみるといいでしょう。

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ちなみに、繰り上げ返済を実施する時期ですが、住宅ローン減税が受けられる10年間に限っては、年末よりも年始に実施する方が若干、控除額の面で得になるケースが多いです。

住宅ローン減税の控除額は「年末のローン残高×1%」で決まるからです。毎年1回実施する、というのであれば、控除額をできるだけ大きく取るために年始に実行すると決めてもいいかもしれませんね。

繰り上げ返済の効果を損得勘定だけで図るのは禁物!

繰り上げ返済の効果を判断する際、「利息軽減額や短縮期間がどれくらいになるか」という損得だけに注目がいきがちですが、繰り上げ返済をした場合に「その後の家計の資金繰りがどう変化するか?」という点に意識を向けることも非常に大切です。

確かに、繰り上げ返済は早ければ早いほど、金額が多ければ多いほど利息軽減効果は発揮されます。

ただ、国土交通省の平成26年度住宅市場動向調査によると、住宅取得時の世帯主の平均年齢は42.3歳。つまり、一般的に家を買うタイミングというのは、結婚して子どもが生まれ、今後、教育費や生活費などの支出が増加していく時期と重なります。

手元資金に余裕があれば別ですが、「教育費などの負担が大変なので、繰り上げ返済をして早めにローン返済を終わらせよう」と繰り上げ返済をした結果、家計に大きな影響を与えてしまう場合があります。

例えば、第2子が生まれてさらに生活費がかさむ、思ったよりも子どもの教育費が増えて足りなくなる、家族との思い出づくりに支出するお金が十分にない、いざという時に使える貯蓄がない、などライフプランで優先したい事項に使うべきお金が手元に残せなくなってしまう可能性があります。

先ほども見たように、期間短縮型の繰り上げ返済では、実際に効果が実感できるのは、ローンを完済した後です。つまり、繰り上げ返済を実施した時点で考えれば、家計においては、単純に、繰り上げ返済分だけ支出が増えているだけです。

現在は金利が非常に低い時代なので、高金利時代に比べると繰り上げ返済の効果も低くなっています。

借入当初から繰り上げ返済の予定を組み込んだ資金計画を立てておくのが理想ですが、必ずしも計画通りにいかない場合も多いことでしょう。家計支出が安定するまではあわてて繰り上げ返済をせず、ある程度、教育費などの見通しが立ってから少しずつ繰り上げ返済を実施しても大差はないので、利息軽減効果の損得勘定だけにとらわれずに、家計の資金繰りも踏まえた繰り上げ返済計画を考えましょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
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