思わぬ怪我や不慮の事故は、意外と家庭内での発生が多いことがわかっています。一人で家にいるときに事故が起きれば、すぐに助けを呼べない可能性もあるでしょう。

危険を避けるには、家庭内の事故にどのような種類があるのかを把握し、あらかじめ対策をしておくことが大切です。

この記事では、家の中で起きやすい事故の種類と特徴、対策について詳しく解説します。

意外と多い! 家庭内の不慮の事故

まずは、家庭内での事故がどれくらい多いか、どの年齢層に多いのかを解説します。

死者数は交通事故の5倍
厚生労働省の「人口動態統計」(2021年)によると、家庭内の不慮の事故による死者数は1万3,352人(※1)です。同年の交通事故死者数が2,636人(※2)なので、その5倍の人が家庭内での事故で亡くなった計算になります。

死に至るほど大きな事故ではないものの、家の中で怪我をするケースも多々あります。

階段やベッドなどの段差から落ちたり、足を滑らせて転倒したり、やけどや切り傷を負ったりと、日常生活を送るなかで思わぬ事故が起きることも多いので注意しましょう。

※1 出典:政府統計 家庭における主な不慮の事故による死因(2021年
※2 出典:警察庁 交通事故の現状

ほとんどが高齢者
政府の統計によると、不慮の事故死者のうち65~79歳が4,153人、80歳以上が7,570人と約87.8%が高齢者です。また、65歳以上と65歳以下では、前者の重症度が高いという調査結果も出ています。

家庭内の事故に高齢者が多いのは、加齢で筋肉が衰え、体の柔軟性や反射神経が落ちることが原因の一つです。

転びそうになったときにとっさに体を支えることが難しく、体へのダメージがより大きくなります。骨も弱くなるので、それほど衝撃が強くなくても骨折してしまうケースがあります。

また嚥下機能も低下するため、食べ物をのどに詰まらせる事故も少なくありません。

若い世代には問題なくても、高齢者にとってはリスクが高い生活環境や生活習慣もあるので、注意したいところです。

出典:政府統計 家庭における主な不慮の事故による死因(2021年)

家庭内の不慮の事故の種類

家庭内の不慮の事故には、大きく分けて転倒・転落、溺死・溺水、窒息・誤えんの3種類があります。それぞれの事故について、詳しく見ていきましょう。

転倒・転落
家庭内の事故で多いのが、転倒や転落です。転倒・転落には「つまずきなど平面上での転倒」「階段などからの転落」「建物からの転落」などがあり、平面上の転倒が一番多く発生しています。

平面上の転倒は、電化製品のコードに引っかかったり、カーペットやラグに足を取られたり、わずかな段差につまずいたりすることが原因です。床に置いてある洗濯物や毛布、ビニール袋を踏んで足を滑らせるケースもあります。

転倒の際に歯ブラシや割りばしをくわえていれば、のどに刺さって大怪我をしてしまうことも考えられます。

また、前章で紹介した政府統計では、転倒・転落の死者が65~79歳で724人、80歳以上では1,460人と、ほかの年齢層と比べてかなり多い結果でした。運動能力や骨の強度が落ちている高齢者は、転倒・転落によるダメージも大きくなるので、さらに注意が必要です。

溺死・溺水
同統計でもっとも死者数が多かった事故が、溺死・溺水です。65~79歳が1,849人、80歳以上が3,205人と、ほかの事故と同じく高齢者の割合が最多でした。

溺死や溺水が主に起きる場所はお風呂です。たとえば飲酒後は普段より血圧が下がるため、脱衣所や浴室、湯船との寒暖差で貧血を起こしてしまうことがあります。湯船の中で気を失えば、水位が低くても溺れてしまうリスクは高いといえるでしょう。

ヒートショックにより浴槽で溺死してしまうケースも多く、高齢者にとっては、特に気をつけるべき事項の一つになっています。ヒートショックとは、温度差で急激に血圧が上下することで、脳卒中や心筋梗塞が引き起こされることです。

お風呂で溺れるリスクは、小さな子どもにもあります。一緒に入っている親が洗髪などで目を離した隙に、浴槽で溺れてしまうこともあるので注意しましょう。

窒息・誤えん

お餅をのどに詰まらせる事故は後を絶たない

同統計では、窒息・誤えんによる死者も大きな割合を占めています。窒息や誤えんの死者は65歳以上が最も多く、65~79歳が916人、80歳以上が1,991人でした。

高齢者のなかでも特に多いのは、食べ物をのどに詰まらせる窒息です。加齢で奥歯を失ったり、入れ歯になったりすると、歯が生えそろっていた頃よりも噛むことが苦手になります。よく噛まないと唾液が出づらく、飲み込んだ食べ物の滑りが悪くなり、のどに詰まりやすくなります。

誤えん性が高い食べ物でおなじみの餅は粘性が高く、のどや食道の粘膜にはりつきやすい食品です。胃の手前で引っかかった餅が息を吸ったはずみで気道に移動し、窒息を起こしてしまいます。

なお、餅は温度が下がるほど硬くなるので、よく噛めないでいると、その間に粘性も上がり詰まりやすさが増します。餅による窒息事故は、お正月をはじめとする冬場に起きやすいので注意しましょう。

家庭内の不慮の事故を防ぐために

家庭内での不慮の事故を防ぐにはどういう点に注意すべきなのでしょうか。高齢者が注意すべき点を中心に解説します。

転倒・転落対策

ウォーキングなどで下半身の筋肉を鍛える

高齢者の転倒・転落事故は、主に加齢にともなう下半身の筋肉の衰えが根本原因です。また筋力低下によって心身が弱り、生活機能が落ちることで、家庭内の事故のリスクが高くなります。

加齢による筋力低下は「サルコペニア」、筋力低下で心身が脆弱になった状態を「フレイル」と呼び、適切な対処で改善が見込めるとされています。

筋力低下の対策として挙げられるのは、日常的な運動です。散歩の習慣をつくったり、徒歩での移動を意識的に増やしたりして、下半身の筋力をつけましょう。社会活動に参加したり、家族・友人と会ったりする機会を増やせば、外出へのモチベーションも保てます。

持病がある場合はできる範囲でコントロールし、食事の栄養バランスなどにも気をつけて、体調をなるべく安定させるのも大切です。体調が改善すれば、行動する意欲が生まれやすくなります。

階段・廊下に足元灯や手すりを設置するなど、あらかじめ家の中に対策をしておくのもよいでしょう。

溺死・溺水対策

浴室暖房を使用して寒暖の差をなくす

浴槽での溺死・溺水対策で意識したいのが、ヒートショックの防止です。特に冬場は脱衣所や浴室が冷えやすく、熱いお湯との寒暖差でヒートショックが起きやすくなるので注意しましょう。

ヒートショックの対策では、浴室・脱衣所を暖かくして、温度差をなくすことが重要です。脱衣所に暖房機を置いたり、浴室用の暖房を設置したりして、入浴前になるべく室温を上げておきます。

また、血液がドロドロな状態では心筋梗塞などのリスクが上がるため、入浴前には十分に水分を摂っておきましょう。湯船で貧血を起こしたり、消化不良につながったりするため、飲酒後や食事後、服薬直後などの入浴を避けるのも大切です。

家族がいる場合は、入浴中に定期的に声をかけて安否を確認することも、事故の予防につながります。また、お風呂内にインターホンを設置しておくと、浴室で何かあっても助けを呼びやすいでしょう。

窒息・誤えん対策
高齢者が窒息・誤えんを起こす主な原因は、歯の機能や嚥下能力の低下だと考えられています。これらの原因にアプローチすれば、窒息や誤えんのリスクを下げられるでしょう。

噛んだり飲み込んだりする機能の低下は「オーラルフレイル」と呼ばれています。舌やほほ、唇の体操をして筋力をつけたり、唾液腺を刺激する口腔マッサージを行い、唾液の分泌を活発にしたりすると、オーラルフレイルの対策ができます。

また、早いうちから歯の健康を意識して、少しでも多く自分の歯を残すことが、噛む機能を維持するうえでは重要です。口腔ケアをこまめに行って口内細菌が減らせば、誤えんした唾液や食べ物が感染源となる誤嚥性肺炎のリスクも下げられます。

食事の最初に飲み物や汁物でのどを潤したり、噛みにくい食べ物を小さく切ったり、飲み物や汁物にとろみをつけておくことも、窒息・誤えん対策になります。

まとめ

家庭内の不慮の事故による死者数は交通事故よりも多く、なかでも高齢者に多い傾向にあります。高齢者が思わぬ怪我をすれば、予後が悪く起き上がれない状態になる事態も考えられます。

起こりうる事故をしっかりと把握し、適切な対策をして防ぐことが何よりも大切です。今回紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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