資産価値の調べ方と算出方法|不動産の資産価値を決める7つの要素とは?

財産の相続・贈与・売買を予定している場合、対象となる財産の資産価値が重要になります。資産価値とは財産の評価額のことで、相続税や贈与税の計算や売買価格の決定における基準となるものです。財産にはさまざまな種類がありますが、資産価値の概念はとりわけ不動産においてよく用いられます。

この記事では、資産価値とはどのようなものかを解説します。そのうえで、不動産の資産価値の調べ方と計算方法、不動産の資産価値を決める要素について詳しく説明していきます。

資産価値とは?

資産価値とは、対象となる資産を財産として評価した場合の価格のことです。評価時点における市場での取引価格にほぼ等しく、現時点の財産の価値を表す指標ととらえればよいでしょう。資産価値が重要とされるのは、相続税や贈与税を計算したり、売買価格を決定したりするためのベースになるからです。

資産価値は、特に不動産で用いられるケースが多くなっています。不動産の資産価値は、大きく「土地の資産価値」と「建物の資産価値」に分けられます。不動産の資産価値を決定付ける7つの要素については、後の章で詳しく解説しましょう。

資産額の大きな不動産は、価値を見誤ると多大な損失につながりかねません。所有する不動産の資産価値を正しく把握しておくことが重要です。

不動産の資産価値の調べ方とは?

不動産の資産価値を正確に知るには、不動産鑑定士に依頼して調べてもらうのが最も確実です。不動産鑑定士によって算定される「鑑定評価額」は土地本来の普遍的な価格を表すものとされ、法的な効力を持っています。

法的な証拠が必要となる不動産の相続や贈与を予定していたり、親族の間で不動産を売買する予定があったりする場合などは、不動産鑑定士への依頼が不可欠です。ただし、依頼には費用がかかります。一般的な相続や売買であれば鑑定評価額を求める必要はありません。

通常の相続や売買にあたって土地の資産価値を求めたいときは、公表されている路線価や公示地価を調べれば確認できます。

路線価とは、国税庁が毎年7月ごろに公表する、路線(道路)に面する土地1平方メートルあたりの価格を表したものです。相続税や贈与税を算定するにあたっての基準となります。
(参考)国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」

土地の相続税を計算する際、一般的に用いられるのが「路線価方式」と呼ばれる計算方法です。相続税は、路線価×土地面積×補正率で求めた相続税評価額に、税率を掛け合わせることで算出されます。

公示地価とは、国土交通省土地鑑定委員会の調査により毎年3月下旬に公表される土地の価格です。全国の標準地における土地1平方メートルあたりの価格を表します。一般の土地取引における指標としての役割を果たすほか、公共事業用地の取得価格算定における規準にもなります。
(参考)国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」

通常、公示価格は実際の取引価格(実勢価格)に比べて低めの設定です。公示価格から求めた土地価格の1.1〜1.2倍程度を資産価値の目安と考えればよいでしょう。

不動産の資産価値の算出方法とは?

土地の資産価値は前述の方法で計算できますが、不動産(建物)の資産価値は別に求める必要があります。建物の資産価値を求めるのに使われるのが、「原価法」「収益還元法」「取引事例比較法」の3つです。

原価法
原価法とは、対象となる不動産を再度取得しようとした場合にかかる費用(再調達原価)に注目して、不動産の資産価値を求める方法です。原価法では、次の計算式により資産価値を求めます。

資産価値(積算価格)= 単価 × 物件の面積 ×(耐用年数 – 築年数)÷ 耐用年数

計算式にある「単価」は、建物構造や築年数に応じて定められるものです。原価法は、戸建て住宅における建物の資産価値を算出する際によく用いられます。

収益還元法
賃貸マンションなど収益物件の査定によく使われるのが収益還元法です。収益還元法では、その物件から将来得られると想定される収益に注目して資産価値(収益価格)を求めます。収益性が高いと考えられる物件ほど資産価値は高くなります。

収益還元法で用いられるのは、「直接還元法」と「DCF法」という2つの計算方法です。直接還元法は、年間純収益(年間の総収入から諸経費を除いたもの)を利回りで割り戻して、資産価値を求めます。直接還元法では含まれない、将来の家賃下落や空室発生のリスクも盛り込んで、対象不動産が将来生み出すであろう各期間の純収益を現在価値へと換算して計算するのがDCF法です。

取引事例比較法
取引事例比較法は、周辺エリアの類似物件における実際の取引事例を参考に、不動産の資産価値(比準価格)を求めます。不動産会社が、戸建ての土地部分や区分マンションの資産価値を求める際によく使われる計算方法です。

類似する取引事例を複数ピックアップしたうえで、各事例の取引内容をベースに標準となる単価を求めます。標準単価に対象となる不動産の面積を掛けたうえ、物件固有の事情を踏まえた個性率(流動性比率)を掛け合わせて、資産価値を算出します。

不動産の資産価値を決める7つの要素とは?

不動産の資産価値の計算方法を見てきましたが、資産価値はどのような要素で決まるのでしょうか。以下では、不動産の資産価値を決定付ける7つの要素を紹介していきます。

立地
立地は不動産の資産価値を大きく左右する要素です。駅や学校、商業施設・病院といった生活利便施設に近い不動産は利便性が高いと評価されるため、基本的に資産価値は高くなります。

また、都心部に近いエリアや人気の沿線にある住宅地、観光地や別荘地としての人気が高まっているエリアなどの不動産は、売買・賃貸ともに需要が見込めます。高ニーズの立地にある不動産ほど資産価値が高くなりやすいのです。

土地の広さと形状
土地の広さや形状も不動産の資産価値に影響します。土地は広ければ広いほどよいというわけではありません。広くても使いにくい形状であれば価値は低くなりますし、そもそも広すぎると土地価格が高くなってしまい購入できる人が限られるため、需要が下がってしまいます。

高い資産価値を持つと評価されるのは、宅地として利用しやすい広さや形状の土地です。面積は狭すぎず広すぎず、さらに正方形や長方形をした「整形地」は宅地として有効活用しやすく、一定の資産価値が期待できるでしょう。

一方、三角形や台形などいびつな形をした土地は使い勝手が悪く、資産価値は低くなります。「旗竿地」と呼ばれる間口の狭い土地は、車の出し入れがしにくかったり、再建築不可だったりすることなどから、特に資産価値が低くなりやすいため要注意です。

建物の広さと間取り
土地の広さ・形状に加え、建物の広さや間取りも不動産の資産価値を左右する要素です。土地と同様、建物も広ければよいというものではありません。広さと間取りが地域や時代のニーズに合っているかどうかが重要です。

たとえば、かつては家族一人ひとりの個室を設けるのがトレンドでしたが、最近はリビングを広く取り、個室は最低限に収める住まいづくりが主流になりつつあります。こうした広さや間取りに対する要望の変化にマッチする物件は、資産価値が上がりやすいでしょう。

建物の築年数
建物は経年劣化するものであり、建物の価値は時間経過とともに減少するのが一般的です。都心部では年を経るごとに資産価値が上がっていく「ヴィンテージマンション」もありますが、これはあくまでも例外的な事例です。通常、築年数が経っている物件ほど資産価値は低くなります。

建物と異なり、土地の価値は経年的に変化するものではありません。ただし、土地の価値に影響するエリアの人気や周辺の開発状況などによって、変化する可能性もあるでしょう。

建物の構造
建物の資産価値は、その建物がどのような構造で建てられているかによっても変化します。一般的に面積や間取りなど他の条件が同じであれば、最も資産価値が高いのはSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造です。次がRC(鉄筋コンクリート)造で、以下鉄骨造・木造と続きます。

資産価値の高い構造になるほど耐用年数も長いため、築年数による資産価値の減少幅も緩やかになるのが一般的です。

建物のメンテナンス状況
資産価値は物件の状態によって変わるため、建物のメンテナンスや管理が適切に行われているかどうかは重要なポイントです。築年数が経過すると資産価値は低くなりますが、メンテナンス状況が良ければ減少幅を抑えることができます。

中古マンションにおいては、住戸だけでなく共用廊下やエントランス、エレベーターなどの共用部の管理状況も重要です。また、管理費や修繕積立金のストック状況も資産価値に影響するため、中古マンションの購入や売却を検討中の人は、事前に確認をするようにしましょう。

収益性
賃貸用不動産の資産価値を決める要素として重要なのが物件の収益性です。先ほど紹介した収益還元法は、まさに収益性から資産価値を求めるものであり、賃貸用不動産の資産価値の高低に直結する要素といえるでしょう。物件から得られる賃貸収入のほか、空室率や賃貸ニーズなども収益性に大きく影響します。高い収益性を見込める不動産ほど、当然資産価値も高くなります。

まとめ

資産価値とは、対象となる資産を財産として評価した場合の価格のことです。特に不動産において用いられるケースが多くなっています。

土地の資産価値は、不動産鑑定評価や路線価・公示地価を参考に計算されるのが一般的です。建物を含む不動産の資産価値は、主に「原価法」「収益還元法」「取引事例比較法」という3種類の方法で算出されます。

不動産の資産価値は、立地や広さ、土地の形状、築年数など多くの要素によって決まります。所有する不動産の資産価値を正確に把握し、相続・贈与・売買などに備えるようにしましょう。

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