京急川崎駅周辺が大きく変わる⁈ 大型アリーナ建設と再開発計画で期待高まるエリアを取材

東京と隣接する川崎市の中心部にはJR3路線が利用できる川崎駅、京浜急行電鉄京急川崎駅の2つがありますが、そのうち、これまであまり開発が行われてこなかった京急川崎駅近くで再開発が計画されています。加えて駅至近の自動車教習所の土地を利用、新アリーナが建設される予定。品川駅まで10分圏内と都心アクセスが軽快な川崎で今、京急川崎駅近くが大きく変わりそうです。

京急川崎駅
京急川崎駅。高架下にコンパクトな駅があります。2016年にホテル、商業施設などが入った駅ビルが開業しています(筆者撮影)

昭和60年前後から川崎駅周辺が変化

泉岳寺駅(東京都港区)から品川駅、京急蒲田駅を経由して京急川崎駅、横浜駅を経て三浦半島へ向かう京急本線の拠点駅のひとつ、京急川崎駅周辺が変わろうとしています。

西口に音楽ホール、大型複合商業施設が誕生

神奈川県川崎市の中心部にはJR川崎駅、京急川崎駅と2つの駅があり、JR川崎駅周辺では西口を中心に1985(昭和60)年前後から駅前の低未利用地の開発が行われてきました。

ラゾーナ川崎プラザ
川崎のイメージを変えたとも言われる大規模複合商業施設ラゾーナ川崎プラザ。地元はもとより、広く来訪者を集めています(筆者撮影)

2003年から2004年にかけて川崎駅の隣接地に音楽のまち・かわさきの拠点となるミューザ川崎が誕生、その後、2006年には長年にわたって東芝の製品生産、技術開発の拠点となってきた旧東芝川崎事業所跡地に大規模商業施設ラゾーナ川崎プラザが生まれ、川崎駅西口の風景は大きく変わりました。

国際戦略拠点、市役所なども新しく

また、川崎市内では2011年の自動車工場の跡地整備からスタート、羽田空港の対岸に殿町国際戦略拠点「キング スカイフロント」を創出。羽田空港とキング スカイフロントを結ぶ多摩川スカイブリッジが2022年3月に開通するなど、国際化に向けてのまちづくりが進んでもいます。

川崎市庁舎
中央に見えているのが新しい川崎市庁舎。火災などがあり、竣工が少し遅れ、2023年の6月になりました(筆者撮影)
川崎市制100周年
2023年は東海道の川崎宿が起立して400周年、2024年は川崎市制100周年という節目の年です(筆者撮影)

現在も2023年6月の完成を目指して川崎市庁舎の建設が行われており、近年、川崎市は急速に変わってきています。ちょうど2023年は東海道の川崎宿が起立して400周年、2024年は市制100周年という節目の時期でもあり、イベントなども予定されています。

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京急川崎駅近くで2つの大きなプロジェクト

アーケード
駅の近くには銀座街というアーケードのある商店街があり、通っていくとさらに銀柳街とアーケードが続きます(筆者撮影)

その流れの中で、これから大きく変わりそうなのが京急川崎駅周辺です。京急川崎駅はJR川崎駅の東口側、古くから栄えてきたエリアの一画にあり、直線距離にすると300メートル強ほど離れた場所にあります。

東海道かわさき宿交流館
寺を除けば歴史を感じさせる建物などのない旧東海道沿いですが、唯一、歴史について学べるのが東海道かわさき宿交流館。さまざまな資料が用意されています(筆者撮影)

すぐ東側にはかつての東海道が走っており、商業施設、飲食店なども集まった繁華な場所ですが、その分、駅周辺の道はJR川崎駅前に比べると細く、区画も小さくなっています。古い低層の建物も多く、駅前という立地を活かした使い方がされていないエリアも散見されます。

駅隣接地の再開発は道路などにも影響大

そこで、京急川崎駅の西側では2028年10月の開業を目標として京急電鉄が指定開発行為者を務める「京急川崎駅西口地区第一種市街地再開発事業」が予定されています。

再開発予定地
再開発予定地を歩道橋から見下ろしたところ。中央に赤い電車が見えているところが京急川崎駅で、その周辺、奥に比べると手前側には低層な建物しかないことが分かります(筆者撮影)

京急線は羽田空港や都営浅草線を経由して成田空港への玄関口として国際化に対応するまちづくりを進める川崎市にとっては重要な地点。その駅周辺が安全、快適に利用できるようにすることは、周囲への波及効果も大きいものと言えます。

京急川崎駅西口地区第一種市街地再開発事業
京急川崎駅西口地区第一種市街地再開発事業は京急川崎駅とJR線路の間で行われます。ピンク色に縦線の入った部分は道路になる予定で、車での通行が便利で安全なものになります(出典:川崎市(原案概要)地区計画の決定(京急川崎駅西口地区)

具体的な計画としては、敷地中央、京急川崎駅に近いA-1街区に地上24階、高さ約119メートルの高層ビルを、川崎駅に近いコンパクトなA-2街区に地上11階、高さ約46メートルの中層ビルを整備することになっています。どちらの街区も住宅は含まれておらず、主に商業、業務、駐車場機能のあるビルという予定です。

2025年度に着工、2028年度に完成予定で、まだしばらく時間はかかりそうです。

再開発エリア
JRの高架を潜って出たところ。正面が再開発エリアになります。写真左端の白い建物の下あたりが京急川崎駅です(筆者撮影)

この開発ではビルだけでなく、新しく道路も整備されます。現状では駅西口側からJRの高架をくぐる道路は細く、急カーブを描いていますが、この道幅を広げ、駅周辺の車の通行を安全にスムーズにするという意図があります。また、同時に広場なども設けられる予定で、現在の建物が密集する駅前のイメージが変わりそうです。

世界に開かれたエンタメ施設を建設

もうひとつ、2023年3月にニュースリリースが出たのは、京急川崎駅隣接地に約1万人が収容可能な新アリーナを軸としたまちづくりが検討されているというもの。これは前述の京急川崎駅西口地区第一種市街地再開発事業の指定開発行為者となっている京急電鉄と株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)が共同で取り組む計画で、リリース前には建設予定地の地権者と共同開発者である二者で土地の賃貸借契約を締結したとも発表されました。

予定地
予定地は2つの線路に挟まれた土地で、現在は自動車教習所として使われています。周辺ではマンション建設も行われていました(筆者撮影)

予定地は現在自動車教習所として使われている京急線とJR線の間の約1万2,400平方メートルで、多摩川にも近い場所です。

建設予定地
建設予定地。海外からもアクセスしやすい立地です(出典:DeNAと京急電鉄による10,000人収容の新アリーナを核とするまちづくりへの共同検討を開始

予定地は羽田空港から最短13分、品川駅からも最短10分と交通利便性が高く、日本国内にとどまらず世界中から人が集まる世界に開かれた複合エンターテインメント施設の立地としては、人の集まりやすい場所と言えます。

イメージイラスト
多摩川側から見た複合施設のイメージイラスト(出典:DeNAと京急電鉄による10,000人収容の新アリーナを核とするまちづくりへの共同検討を開始

計画ではプロバスケットボール「B.LEAGUE」試合開催時に約1万人を収容できる新アリーナおよび宿泊施設、飲食施設、公園機能等を備える商業施設を含む複合エンターテインメント施設の建設・開業を目指しています。

新アリーナに関しては、DeNA傘下のプロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」がホームアリーナとして2028-2029シーズン(2028年10月開幕)より使用する予定があるそうです。こちらも駅前の再開発と同時期となっており、これから数年で京急川崎駅周辺は劇的に変わりそうです。

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遊びも楽しい便利な街、川崎

ラ チッタデッラ
「ラ チッタデッラ」入口。戦前からこの地には映画館街があったそうで、終戦後もいち早く復活したとか。映画好きの土地柄のようです(筆者撮影)

元々、川崎は遊ぶ楽しみがたくさんある街です。代表的なものが川崎駅東口の近くにある複合商業施設「ラ チッタデッラ」でしょう。イタリアを模した街並みの中にはレストラン、ショップに各種リラクゼーション施設、ライブホール、12スクリーンからなるシネマコンプレックスなどがあり、いつもにぎわっています。

西口のラゾーナ川崎プラザの中にも10スクリーンからなるシネマコンプレックスが入っていますから、映画好きには多彩な映画を楽しめる街と言えそうです。

聴く、参加するが楽しめる音楽のまち

ミューザ川崎シンフォニーホール
駅から直結のミューザ川崎シンフォニーホール。再開発で広々と生まれ変わったエリアにあります(筆者撮影)

また、川崎は「音楽のまち・かわさき」を標榜しています。前述のミューザ川崎には世界水準の音響と評されるシンフォニーホールがありますし、市のフランチャイズオーケストラである東京交響楽団のほか、2つの音楽大学、4つの市民オーケストラ、100を超える市民合唱団、企業の吹奏楽団や合唱団などがあるのだとか。聴くだけでなく、参加する楽しみもありそうです。

川崎競馬場
右手が川崎競馬場。奥に商業施設が見えています(筆者撮影)

また、良しとする人ばかりではないかもしれませんが、川崎競馬場、川崎競輪場といった大人の遊び場もあります。川崎競馬場内には芝生広場や子どもの遊び場、バーベキューエリアなどもあり、家族でも楽しめるような工夫もあります。隣接してマーケットスクエア川崎イーストという商業施設もあります。

スポーツ好きにも楽しい街

スポーツでもサッカーJ1川崎フロンターレをはじめ、前述の男子バスケットボールB.LEAGUEの川崎ブレイブサンダース、女子バレーボールのNECレッドロケッツなど複数のチームがあり、見る楽しみはいろいろ。

スポーツをする人であれば各種スポーツ教室やイベントなどが開催されており、かわさき多摩川マラソン、多摩川リバーサイド駅伝in川崎なども参加してみたいものです。

もうひとつ、川崎はブレイクダンスも盛んな土地です。2024年のパリ五輪の追加競技として初採用されたブレイクダンスは世間的な認知度はまだまだながら、若者には支持されてきました。時代を先取り、これからおもしろくなっていくスポーツが身近にあるのは他の街にはないことでしょう。

足回り、買い物や飲食の利便性は言うまでもなく非常に高い街ですが、川崎はそれに加えて遊びが楽しい街のひとつというわけです。

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どうなる、京急大師線地下化

京浜急行大師線
京急川崎駅近くを走る京浜急行大師線。5キロメートル弱に15の踏切がありました(筆者撮影)

ひとつ、これからの動向が気になるのが頓挫したままの京浜急行大師線(以下大師線)の地下化です。同線は京急川崎駅から川崎大師駅を経て小島新田駅に至る5キロメートル弱の路線で、川崎大師への参拝客を運ぶために造られた路線です。

一部地下化も残りは先行き不透明

大師橋駅付近の渋滞
2014年に撮影した産業道路と大師線が交差する大師橋駅付近の渋滞。現在は地下化され、これほどの渋滞はなくなっているようです(筆者撮影)

その後、沿線には多くの工場が立地。働く人達を運ぶようになりましたが、途中、15ケ所に踏切があり、産業道路のような通行量が多い幹線道路周辺では渋滞が起きていました。そのため、平成初期に都市計画決定を行い、地下化の事業に着手したものの、費用対効果や社会経済情勢の変化などから京急川崎駅から川崎大師駅までの区間は中止。

事業継続となった小島新田駅から川崎大師駅間についても、その半分までの小島新田駅から東門前駅までが2019年に地下化したものの、残りの部分については先行き不透明な状態になっています。

同沿線周辺は多摩川に近く、環境の良い場所でもあり、2000年代半ば以降、マンションが増えた地域です。大師線の地下化が進み、利便性が高まれば沿線にも再度注目が集まると思うのですが、さて、どうなることでしょう。

大師線の先行きは見えないものの、それ以外では確実に変化し続けている川崎。遊びがてら訪れてみて、住んで楽しい街の魅力を感じてみてはどうでしょう。利便性だけではない、楽しい暮らしの場が発見できるかもしれません。

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(最終更新日:2024.04.19)
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