高校の授業料が実質無料になることも!? 私立高校進学の経済的負担を減らす方法

私立高校と公立高校では、学校教育費に2.5倍程度の差があります。そのため、私立高校への進学を諦め、公立高校への進学を選択せざるを得ない人もいます。しかし、2020年に改正された高等学校等就学支援金制度により、親の収入によっては私立高校の授業料が免除になるなど、私立高校進学への道も開けています。
今回は、高等学校等就学支援金制度で授業料免除になる条件や、制度概要について解説するとともに、自治体が独自で行っている支援制度や貸付制度についても紹介します。

私立高校と公立高校の学習費の差は年間約50万円以上!?

文部科学省の調査によると、私立高校にかかる学習費は年間平均約105万であるのに対し、公立高校の学習費は年間平均約51万円と、年間約54万円以上の開きがあります。

学習費とは、学校教育費、学校給食費そして学校外活動費の合計額で、その内訳は以下の通りです。

また、令和3年度の私立高校の初年度生徒等納付金平均額(年間)は、
・授業料:44万1,101円
・入学料:16万3,279円
・施設設備費等:14万8,315円
の合計約75万円です。
入学料が発生するのは1年目だけですので、2年目以降は入学金以外のお金がかかります。
これに加え、部活や修学旅行の費用のほか、通学や学用品などにもお金がかかることも忘れないようにしましょう。

私立高校進学の経済的負担を減らす方法

私立高校へ進学するには、公立高校に比べ、経済的負担が大きくなります。しかし、経済的な負担を減らしつつ、私立高校に進学するための支援制度が用意されています。支援制度の内容について、次項で解説します。

高等学校等就学支援金制度で授業料が実質無料になる場合も!
高等学校等就学支援金制度とは、親の収入などの判定基準を満たした日本国内に居住する生徒を対象に、返還不要で授業料を支援するものです。
対象となる学校は高等学校以外にも、特別支援学校(高等部)や高等専門学校の1年生~3年生、専修学校(高等課程)などがあります。

親の収入の判定基準を満たした場合、私立高校(全日制)の場合、39万6,000円(年間)を上限に就学支援金が支給されます。
支給の対象となるかは、以下の計算式によって判定します。また、ここで計算に用いる収入は両親2人分の合計額です。

市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額※
(※政令指定都市の場合は、調整控除の額に4分の3を乗じて計算します)

上の計算で求められた額が15万4,500円未満の場合、最大39万6,000円(年間)が支給されます。
また、15万4,500円以上30万4,200円未満の場合、支給額は11万8,800円(年間)になります。

ちなみに、最大39万6,000円が支給される対象となる世帯年収の目安は、
・共働きの場合:約720万円まで
・片働きの場合:約7640万円まで
ただし、この数字は高校生の子どもが2人いる場合の目安で、子どもの数や年齢によって異なります。

都道府県の支援制度を併用して学費も実質無料に!
上で紹介した制度は、文部科学省が行っているものですが、それ以外に自治体が独自で行っている支援制度もあります。具体的には、授業料軽減助成金事業といわれるものです。制度の内容や利用にあたっての条件について、東京と大阪を例に紹介します。

(東京都|私立高等学校等授業料軽減助成金事業)
都内に住み私立高校などに通う生徒の保護者などの経済的負担を軽減するために、授業料の一部が助成されます。

助成額は、「区市町村民税課税標準額×6%-区市町村民税調整控除相当額が15万4,500円未満の世帯」であれば、7万3,000円(年間)です。そして、この制度は高等学校等就学支援金制度との併用が可能ですので、併用することにより最大46万9,000円の支援を受けられます。

(大阪府|私立高等学校等の授業料無償化制度)
大阪府も東京都と同様に私立高等学校に進学する家庭の経済的負担を支援する制度を用意しています。
子どもが1人の場合で、「区市町村民税課税標準額×6%-区市町村民税調整控除相当額が15万4,500円未満の世帯」であれば、年間授業料が60万円の場合、大阪府から20万4,000円(年間)の補助が受けられます。つまり、高等学校等就学支援金制度と併用すれば60万円の年間授業料が無償になる計算です。

このほかに、大阪府には私⽴⾼等学校等奨学のための給付⾦制度もあります。ここまでに紹介した制度と違い、こちらの給付金は授業料以外にも利用できるため、制服代などの支払いにあてることができる点も、非常に助かるのではないでしょうか。

私立高校進学費用が足りないときに検討したい三つの制度

入学金などの負担が増える初年度などは、授業料などが無料になる支援事業を利用しても、まだ進学費用が不足する可能性もあります。ここでは、その際に検討したい方法について解説します。
紹介する方法には返済不要なものが多いですが、なかには返済が必要なものもあります。返済が必要な制度を利用する場合は、必ず無理のない返済計画を立てることも忘れないようにしてください。

高校生等奨学給付金制度
高校生等奨学給付金制度とは、文部科学省および各自治体が行っている制度です。授業料以外の教育費負担を軽減する目的で、高校生などがいる低所得世帯を対象として支援を行っています。

制度を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
・世帯が生活保護受給世帯もしくは住民税非課税世帯である
・保護者の住所が、その自治体内にある
・生徒が高等学校などに在学している
・高等学校等就学支援金制度を受ける資格がある

そして、私立高校を対象とした年間支援金額は以下のとおりです。
・生活保護受給世帯:5万2,600円
・住民税非課税世帯(第1子):13万4,600円
・住民税非課税世帯(第2子以降):15万2,000円
この給付金は返還不要です。さらに、授業料以外の費用に利用できるため、教材費や入学学用品費、修学旅行費などにあてることができます。

このほかにも、日本学生支援機構が運営するものなど、高校生向けの貸与型奨学金もあります。貸与型の場合は、原則として利息とあわせて返還する必要がありますので、無理な借り入れを行うことは避け、返せるだけの金額を借りるように心掛けることが大切です。

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度は、厚生労働省が行っており、20歳未満の児童を扶養している配偶者のいない女子または男子もしくは寡婦などが利用できる制度です。

資金の種類も多く存在します。そのなかで教育費として利用できるのは「修学資金」です。高等学校や大学に修学させるための授業料や書籍代、交通費などに必要な資金として借り入れできます。
気になる貸付限度額は以下のとおりです。

・私立高等学校に自宅外通学させる場合の限度額:月額5万2,500円

貸付対象は、
・母子家庭の母が扶養する児童
・父子家庭の父が扶養する児童
・父母のない児童
・寡婦が扶養する子
です。

貸付期間は就学期間中で、償還期間は20年間です。無利子で借りられますが、子どもが借りる場合、親などが連帯保証人になる必要があります。また、親が借りる場合は、子どもが連帯借受人になります。

ほかにも、就学のために必要な制服の購入に必要な資金を借り入れることもできます。
「就学支度資金」といわれるもので、貸付対象および貸付期間などは「修学資金」と同じです。

就学支度資金では、私立高校の場合42万円を上限に借りられます。

教育一般貸付
教育一般貸付は、日本政策金融公庫が行っているもので、「国の教育ローン」といわれています。
受験前でも申し込むことができ、年1.95%(2022年12月時点)という比較的低い固定金利で返済期間が最長18年間です。借入上限額は350万円ですが、一定の要件に該当する場合は450万円まで増額されます。

世帯年収条件も子どもが2人いる家庭なら890万円と幅広い年収を対象としています。
子どもが2人以内の場合、「勤続年数が3年未満」や「自宅外通学予定」などの要件に1つでも当てはまると、年収要件が990万円まで緩和されます
さらに、ひとり親家庭や交通遺児家庭などの条件に当てはまれば金利が年1.55%となったり、保証料の支払いが半額になったりするなどの優遇措置が設けられています。

教育一般貸付は、奨学金と併用されるケースが多く見られます。なぜなら、奨学金は入学してからでないと振り込まれないからです。入学するまでの受験費用や入学金、授業料の支払いは通常入学よりも前に行われるものですので、その資金を工面できない場合は、受験前でも利用可能な教育一般貸付を利用することになります。

そのほか、民間の金融機関でも目的別ローンの一つとして「教育ローン」を取り扱っています。

まとめ

私立高校と公立高校の学習費には年間50万円以上もの差がありますが、高等学校等就学支援金制度など各種制度を利用することで、経済的な負担を大きく軽減できます。
また、これらの制度を利用してもまだ不足する場合には奨学金や貸付制度といった制度もありますので、有効に活用しましょう。ただし、制度の中には返済が必要なものもあります。返済が必要な制度を利用する場合は、無理のない返済計画を立てたうえで利用することを心掛けておきましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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