【本当に住みやすい街大賞2022in関西】第8位 寝屋川市:コンパクトシティである強みを活かした街づくり~寝屋川市 広瀬慶輔市長に聞く~

2022年8月24日に開催された「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2022 in 関西」。大阪府・京都府・兵庫県の2府1県の中で「本当に住みやすい街」TOP10を発表するなか、大阪府寝屋川市の寝屋川市駅(京阪本線)が第8位にランクインしました。そこで、寝屋川市の広瀬慶輔市長に、受賞した思いや寝屋川市の魅力、行政としての取り組みなどについてお話を聞きました。

寝屋川市長 広瀬 慶輔(ひろせ けいすけ)さん
1970年生まれ。明治大学大学院政治経済学研究科博士前期課程修了、政治学(行政学)修士号習得。99年寝屋川市議会議員(3期)。2019年5月から現職。

※撮影時のみマスクを外しています

ソフト面を強化することで「コスパの良い街」に

―まずは、今回の受賞に対する率直な感想をお聞かせください

「よく選んでいただいた」という気持ちです。市民の皆さんを中心に反響も大きく、街がより発展していく可能性を感じていただけたようです。私も誇らしく思っております。

寝屋川は古い街で、過去に人口が急激に増加した時代があります。1970年に開催された大阪万博前後にあたる1960~1970年代、人口が約5万人から25万人まで一気に増えました。しかし、それから50年あまりが経ち、当時20~30代だった方々は現在70~80代のシルバー世代となり、住民の高齢化が進んでいます。街としても、50年前に学校や公共施設、駅前の整備が一気に進められましたが、それ以来は大規模な再開発を行っておりません。そうした状況でも、できることをひとつずつ積み重ねて今回の受賞につながったことは、大きな意味があると思っています。

―京阪本線の快速急行停車駅で国道も近く都市部に出やすい「交通利便性」と「コストパフォーマンス」が評価されての受賞でしたね

寝屋川市は以前から交通の利便性が高い街でした。加えてコストパフォーマンスの良さも感じていただけるようになったのは、交通利便性というハード面に加え、ソフト面を強化する政策により、多くの人々に「便利な街」だと感じていただき、街の価値が上がった結果だと思っています。

ソフト面を強化するために行っている取り組みのひとつが、市民サービスの「ターミナル化」構想です。
人口が急増した50年前は、現在のように公共交通機関が発展していませんでした。当時は地域格差が生まれないよう、公共施設は一ヶ所に集中させず、バランスよく配置させる街づくりが一般的でした。しかし、時代が変わり、公共交通機関が主な移動の足となった今は、公共施設があちこちにあると市民会館は東側、図書館は西側といった具合に、東西南北へ大移動しなければ用事を済ませることができず不便です。そこで、寝屋川市駅前に行政のサービスを集約化する取り組みを進めています。

「街全体がコンパクトシティ」であるメリットとは?

寝屋川市長
「寝屋川市の狭さを逆手に取った政策が成功すれば、全国の自治体のモデルになれるはず」と話す広瀬市長

―ターミナル化構想について、詳しく教えてください

まずは、2018年6月に発生した大阪府北部地震の影響で使用できなくなった「寝屋川市立中央図書館」を、駅前の商業施設内に移転オープンしました。その結果、移転前と比べて利用者が倍増。2021年8月の開館から約3ヶ月で入館者数10万人を突破しました。面積は以前と変わらないのですが、利便性の良い立地と、しっかりとしたコンセプトがあれば、利用者の満足度は上がるのだと実感しています。

今後は、市役所の本庁舎のうち、パスポートの申請や住民票の取得といった手続き部門を、駅前の大学校舎跡地に移す計画が進んでいます。また、シルバー世代の活動拠点や子育て世帯のための施設も駅前に集約するなど、寝屋川駅前に集約地域の皆さんにとって便利な街づくりを、これから2~3年でさらに進めていく予定です。

―シルバー世代や子育て世帯のために、どのような計画を進めているのでしょうか

寝屋川市にはシルバー世代が多く、市民が趣味・文化活動をするための拠点が必要です。今まで使用していた総合センターが大阪府北部地震の影響で閉館してしまい、新たな活動拠点が必要だという声が多く挙がっていました。そこで、図書館が入る商業施設の上の階を市が購入。順次、機能を移転できるよう準備を進めています。自転車の利用が難しい高齢者でも、公共交通機関で移動できる立地なので、多くの方に喜んでいただけると思います。
子育て関連施設も駅前に集約する予定で、既存の駅前図書館をこども専用図書館に置き換えるとともに、市内に分散している子どもセンターや子育て世代の相談窓口、お母さんのサークル拠点も寝屋川市駅前に移転させる予定です。

また、70歳以上のシルバー世代や身体障害者、妊娠中の人が気軽に移動できるように、バス利用券を使用できる「バス利用促進事業」や、対象エリア内であれば無料でタクシーに乗って移動できる「乗合い事業」を実施。無料のタクシーとバスを組み合わせて歩かずに買い物へ行ける取り組みも進めています。

―市長が思う、寝屋川市の魅力は?

寝屋川市は縦6km・横4kmのコンパクトなエリアに23万人が暮らす、全国でも珍しい特性を持った中核市。自転車で20分もあれば回れてしまうような非常にコンパクトな街に23万人が住み、24の小学校と12の中学校があります。土地は平らですから、買い物に行くにしても、何もするにしても自転車があれば移動できます。
街づくりの観点から見ると、例えば「5分で出動できるように消防署を設置する」「食事が冷めない距離に給食センターを作る」と考えた場合、大きな街では税金でたくさんの施設を作らなければなりませんが、寝屋川市ではいくつかあれば事足ります。タクシーの乗合い事業を無料で提供できるのも、狭い市内の中でさらにエリアを絞っているから。生活圏を小さくまとめる「コンパクトシティ」という考え方がありますが、寝屋川市は街全体がコンパクトシティです。移動手段を確保し、市の中心部に市民サービスを集約することで利便性を高める取り組みは、コンパクトな寝屋川市だからこそ実現できたと感じています。

待機児童ゼロやいじめ対策、学力向上の取り組みも実施

寝屋川市長
「子育て世帯に選んでもらえる街づくり」を進めていると広瀬市長

―子育て支援にも力を入れているそうですね

お話した通り、寝屋川市は他の市と比べてシルバー世代が多い現状があります。財政負担の大きさや街の活力の維持を考えると、若い世代に住民を増やし、年齢や税収のバランスを取っていかなければなりません。中でも、一定以上の所得がある「担税力のある若い子育て世代」を誘致する必要があります。担税力のある子育て世帯にとって関心があるのは「優れた教育環境」です。教育環境に力を入れることで、以前から市内に住む子育て世帯にとってはより高い、安心の教育を提供することができますし、担税力のある若い子育て世代にもアピールできます。

―具体的にはどのような取り組みを行っていますか?

例えば、18歳までの子ども医療費助成を大阪府内でいち早く実現しましたし、2018年度以降、待機児童ゼロを実現。年間を通じて待機児童ゼロを継続する「待機児童ZEROプランR」を進めています。全員が第一希望の園に入れるというところには至っていませんが、すべての子育て世代が保育施設を利用できる状況を継続しています。
また、全国的に注目を集めているのが、いじめに対する取り組み。これまで学校教員、もしくは教育委員会だけで解決してきたいじめ問題ですが、寝屋川市では「監察課」という専門の部門を設けて解決にあたっています。国や他の自治体からも多くの問い合わせをいただいています。

学力の向上にも力を入れていて、高い学力が身に付くように、0歳~15歳までの一貫した寝屋川教育の実現を目指しています。
0歳時~小学校入学までの就学前に関して、ヨーロッパでは就学前の教育が当たり前にありますが、日本の保育園は「教育施設」ではなく、子どもを預かる「福祉施設」です。保育園に通う子どもたちは、就学前教育を受ける機会がほとんどありませんでした。そこで現在、寝屋川市では就学前教育プログラムを独自で作成しているところです。来年から実験的にスタートさせることになっています。
また、小学4年生から中学3年生まで子どもたちを対象に、週1回「ディベート授業」を実施しています。自分たちで考えて情報を取捨選択し、プレゼンテーションをすることで自分たちの考えを持つことができる子どもを育てていくことを目指しています。その結果、学力が右肩上がりに上昇。大阪43市町村のうち中ほどだった学力が、2021年には4位まで上がっています。

0歳~15歳までの一貫した「寝屋川教育」で切れ目のない子育て支援を

―数々の子育て支援策の進めた反響がいかがですか?

子育て世代が住む街を決めて住宅を購入するにあたり「環境が重要だ」という方は多いでしょう。環境というと「住環境」を思い浮かべがちですが、寝屋川市はコンパクトな街ですから、雄大な自然や大きな公園、道路の広さなどに関しては、大きな街に太刀打ちできません。その代わりに、寝屋川市では安心して学び、しっかりとした学力が身に着く「教育環境」を大切にしています。いじめ問題に対する取り組みは、安心して公立学校に通うことができる環境を作り「子どもたちを守るんだ」という覚悟でもあります。教育環境で勝負することで、選ばれる街になることができると考えています。
こうした取り組みの結果、寝屋川市では20代・30代の若い世代の人口が減り続けていましたが、2021年から下げ止まり、プラスに転じるようになりました。教育環境の整備が進むことで、より多くの子育て世代に寝屋川市での暮らしを検討していただけるのではないかと考えています。

―最後に、引っ越し先を探している人や検討中の人に向けてメッセージをお願いします

寝屋川市は、若い子育て世代の皆さんに選んでいただける街となるような政策を矢継ぎ早に展開してきました。いじめを防止する監察課の働きにより、子どもたちが安心して学校に通える教育環境を整えるとともに、就学前教育から小学校・中学校の教育を経て、自分でしっかりと考えることができ、プレゼンテーション能力もオリエンテーション能力も高い、精神的に自立した子どもを育てていきます。子育て世代の皆さんは是非、寝屋川市へお越しください。

(最終更新日:2022.11.15)
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