注目度急上昇の「橋本」 リニア新駅周辺の開発で大きく変わる街、その魅力に迫る

JR横浜線、同相模線と京王相模原線が接続する橋本駅南口(神奈川県相模原市緑区)の前で、2027年度完成予定のリニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)の工事が進んでいます。新幹線駅の誕生を控えた街の様子を見ていきましょう。

神奈川県駅(仮称)の工事現場
橋本駅前のリニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)の工事現場。元々は神奈川県立相原高等学校があった敷地を利用しています(筆者撮影)

リニア開通でアップする橋本駅の交通利便性

JR横浜線
八王子駅から東神奈川駅を結ぶJR横浜線。元々は明治期に八王子から横浜港まで絹を運ぶために造られた路線です(筆者撮影)

橋本駅は横浜市神奈川区にある東神奈川駅から東京都八王子市の八王子駅を結ぶ横浜線、神奈川県茅ヶ崎市の茅ケ崎駅と当駅を結ぶ相模線というJR東日本の2本の路線と、東京都調布市の調布駅から当駅までを結ぶ京王相模原線の接続駅です。

京王相模原線橋本駅
京王相模原線橋本駅。駅構内には京王クラウン街という商業施設があり、書店や飲食店などが入っています(筆者撮影)

京王相模原線は京王線に直通、新宿に向かっており、橋本駅は都心に直通できるうえ、町田、八王子や新横浜、茅ケ崎など東京市部、神奈川方面にもアクセスの良い駅というわけです。

車利用でも便利な街

幹線道路
橋本駅周辺は車利用時にも幹線道路に近く、便利です(筆者撮影)

車利用では都心から半径約30キロメートルの郊外部をぐるりと環状に結ぶ国道16号、同様に都市から半径40~60キロメートルを環状に結ぶ圏央道が利用しやすい立地です。圏央道は東名高速道路、中央自動車道、関越自動車道など複数の高速道路と接続しているので、仕事に、行楽に、車利用でも便利な場所と言えます。

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日本のあちこちと直接つながる街に

神奈川県駅(仮称)
リニア中央新幹線では4駅が新設されることになっています。そのうちのもっとも品川駅に近いのが神奈川県駅(仮称)です ※1 人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2021年1月1日)より。GDPは内閣府「県民経済計算」(2017年度)より※2 中間駅名は仮称 ※3 「中央新幹線品川・名古屋間工事実施計画(その2)」 (2018年3月)より ※4 「中央新幹線(東京都・大阪市間)調査報告書」(2009年12月)より  出典:超電導リニアによる中央新幹線計画(JR東海) 

そこに新たにリニア中央新幹線駅ができます。これはご存じのように品川駅から名古屋駅を最速40分で結ぶという超高速鉄道の新しい路線で、橋本駅近くで進んでいるのは品川駅の次の神奈川県駅(仮称)。品川駅からは10分程度で到着するそうで、首都圏内での移動を考えただけでも便利です。

同路線は山梨県駅、長野県駅、岐阜県駅(全て仮称)を経て名古屋駅に向かいますが、途中駅はいずれもこれまでは直通では行けなかった場所。橋本は一気に日本のあちこちとつながることになります。

将来的には新大阪まで延伸も

リニア中央新幹線
品川駅周辺で見かけたリニア中央新幹線の掲示。とりあえずは名古屋まで、最終的には大阪までつながります(筆者撮影)

また、新幹線を利用する場合、今は橋本駅から横浜線で一度新横浜に出てから、名古屋に向かっていますが、その場合、新横浜まで30分ほどかかります。リニア中央新幹線では乗り換えの必要がなくなり、かつそもそものスピードが速くなります。

品川区内の工事現場
こちらは品川駅から少し離れた品川区内の工事現場。一部工事が遅れている地域があるとの報道がありますが、この地点での工事は着々と進んでいるようです(筆者撮影)

さらに、リニア中央新幹線は将来的には新大阪までの延伸が計画されているため、橋本の利便性は今後もアップするでしょう。

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橋本周辺には縄文時代から人が住んできた

では、その橋本はどんな街なのでしょう。2010年に政令指定都市になった神奈川県相模原市には緑区、中央区、南区の3区がありますが、橋本が所在するのは緑区のもっとも東側、市全体でみると真ん中に近い場所です。

その橋本に人が住み始めたのは縄文時代。橋本駅北西側の元橋本町にある橋本遺跡からは約1万5000年前の先土器時代から縄文時代の土器、住居跡などが発掘されています。特にここから出土した土偶は多摩丘陵など関東南西部に分布する地域性があり、橋本遺跡にちなんで「橋本土偶形式」と呼ばれているのだとか。リニア中央新幹線で新たに注目を集めているように思われますが、実は古くから住みやすい場所だったのです。

江戸時代には宿場町、養蚕の地だった
江戸時代には当時、大流行した大山詣り(伊勢原市にある大山阿夫利神社への参詣)で埼玉県方面から八王子を経る街道の宿場町・橋本宿はあったものの、それほど栄えていたわけではないようです。というのは高台で水利に乏しいことから稲作には向かなかったのです。

そこで稲作の代わりに養蚕業が発展するのですが、それが明治以降の発展につながります。諸外国との主要取引品として絹が珍重されたのです。横浜線が敷設されたのも、明治当時、絹の一大集積地だった八王子から横浜港近くの東神奈川をつなぐルートを造るため。橋本は駅の建設予定地ではありませんでしたが、地元の人たちが費用を負担して、橋本駅ができました。

軍都相模原は戦後工業都市、住宅都市として発展
しかし、養蚕の繁栄以上に相模原市周辺を大きく変えたのは明治政府が軍の施設を中心に都市を建設しようと全国23地区を指定、そこに相模原エリアが含まれていたことでした。今も相模原市内には街路樹、歩道のある整然とした区画が多くありますが、それはこのときに整備されたもの。明治から終戦までの相模原市内には主に陸軍の各種施設が立地、戦後は米軍の施設として使われており、今も一部に基地が残されています。

相模原市の人口と世帯数の推移
1955(昭和30)年以降の相模原市の人口と世帯数の推移。一貫して増加してきたことが分かります 出典:人口・統計(相模原市)

次に相模原市が変わり始めたのは、昭和30年代以降。相模原周辺は都心から近く、平たんな場所です。市は工場を誘致、内陸工業都市を目指すとともに、住宅地としての開発も進み、以降は人口増が続いてきています。

平成に入っての開発で街は大変貌

北口のペデストリアンデッキ
北口のペディストリアンデッキからみ見るとタワーマンションが林立している状況が分かります(筆者撮影)

その次の変化は平成に入ってからの相次ぐ開発です。相模原市が出している「相模原市の再開発事業」「さがみはらの土地区画整理」を見ると、優良建築物整備事業で橋本六丁目地区に1997年に26階建てのタワーマンションが誕生して以降、2010年までに同制度を利用して橋本駅北口では合計4棟の高層マンションが建設されています。

ミウィ橋本
写真右が駅、中央にあるのが複合商業施設ミウィ橋本、左がイオン橋本店です。商業施設のほか、市の施設も入っています(筆者撮影)

また、橋本駅北口では2000年に北口地区、2001年に北口C地区で市街地再開発事業の建築工事が完了しており、それによって駅のロータリーを囲むシティ・プラザはしもとが入るイオン橋本店とタワーマンション1棟、橋本図書館や杜のホールはしもとの入った複合商業施設mewe(ミウィ橋本)が建設されました。今、橋本駅北口から見る高層建築の並ぶ近代的な風景は1997年から2010年までの14年ほどで造られてきたものです。

跡地利用で商業施設、住宅が誕生

緑区合同庁舎
土地区画整理事業で誕生した4棟のマンション。右側手前に見えているのは緑区合同庁舎です(筆者撮影)
計画的に造られた地域
計画的に造られた地域で公園も同時に整備されています(筆者撮影)
商業施設
商業施設も同時に造られており、日常に必要なものがそろう便利なエリアになっています(筆者撮影)

もうひとつ、住宅が絡む開発では南口から500メートルほどの、国道16号沿いにある国鉄橋本車両センター跡地を利用した土地区画整理事業もありました。これは全体で約15.1ヘクタールという広大な敷地で、1997年から神奈川県住宅供給公社が土地区画整理事業を開始。2003年に完了したもので、現在は緑区合同庁舎、警察署、郵便局、公園などの公共施設に加え、4棟の高層住宅、商業施設などが建てられています。

アリオ橋本
新駅予定地の脇にあるアリオ橋本。その奥に見えているのが同時に開発された住宅エリアです(筆者撮影)

南口側では工場跡地を利用して、2010年にアリオ橋本、その東側にタワーマンションが建設されました。ただ、それ以降、タワーマンションはもちろん、100戸を超す規模のマンション建設は行われておらず、建設されても30~40戸ほどの小規模物件が大半です。

戸建てを中心とするエリア
駅周辺の開発エリアから少し離れると戸建てを中心とするエリアが広がっており、駅に近いほど古く、離れるにしたがって新しい住宅が立ち並びます(筆者撮影)

一方、コンスタントに新築戸建ての供給は続いており、特に駅から歩くと20分を超すような範囲では新しい住宅が目につきました。2010年以降はタワーマンションのような大きな開発ではなく、少しずつ戸建ての供給が行われてきたということでしょう。

広域交流拠点として駅南口側の開発は必至

橋本駅周辺地区のまちづくり
市がこれからまちづくりを考えている対象エリア。赤い部分はリニア駅を中心とした南口地区 出典:橋本駅周辺地区のまちづくり(相模原市)

では、これからはどうでしょう。間違いなく、大きく変わります。相模原市では広域交流拠点として、リニア中央新幹線駅のできる橋本駅周辺と隣駅相模原駅周辺のまちづくりを2014年から特設サイトを作って推進しています。

橋本駅の場合には駅周辺の約120ヘクタールが対象となっており、特に南口の周辺は重点的に検討が必要な地域とされています。現在地下で駅新設工事などが行われている広大な地上部にオフィスビル、マンションなどが建設されることもあり得ると考えると、今後10年ほどで風景は大きく変わるはずです。

過去に工場の移転で跡地が商業施設やマンションに変わったことを考えると、今後同じような形での変化も考えられます。駅から少し離れると橋本駅周辺には大規模な工場が多く立地しているのです。

相模原協同病院跡地
郊外に移転した相模原協同病院跡地で進んでいるマンション建設。2026年春の完成を目指しているようです(筆者撮影)

実際、駅から歩いて数分のところでは病院の郊外移転に伴い、跡地をマンションとして建設する工事が始まっていました。掲示には29階建て、450戸超のマンションとあり、橋本エリアでは久しぶりのタワーマンション誕生です。

街中のあちこちで駐車場
街中のあちこちで駐車場を見かけました。今後、駅に近いところから変化していくのではないでしょうか(筆者撮影)

駅周辺では駐車場になっている空き地も目につきました。今後の変化を見越していつでも建設できるようにしているのでしょうか。それほどまとまった土地はないようですが、いずれは変わっていくのでしょう。

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学生が多く、自然にも恵まれた立地

交通利便性が高く、駅周辺に商業施設を始めたさまざまな施設が集まり、生活にも便利な橋本ですが、加えていくつか特徴があります。

駅北口のバス乗り場
駅北口のバス乗り場。複数の大学行きの路線があることが分かります(筆者撮影)

ひとつは周辺に大学が多いこと。相模原市内には青山学院大学相模原キャンパス、麻布大学、桜美林大学PFC、北里大学相模原キャンパス、相模女子大学、女子美術大学相模原キャンパスなどがあり、橋本駅からは法政大学、東京家政学院大学、多摩美術大学へのバス便が出ています。住所がお隣の市にあっても橋本駅から直通でアクセスできる学校もあり、街中には学生が多いのです。

駅南口側のバス停
駅南口側のバス停。こちらからは成田空港や関西への高速バスなどが出ています(筆者撮影)

ちなみに駅前から成田空港や関西への高速バスなども出ており、鉄道以外のアクセスも良好です。

アウトドア好きならたまらない立地
周囲に自然と遊べる環境があることも特徴のひとつ。駅前だけを見ていると分かりませんが、相模原市緑区は面積の75%以上を山林や河川、湖が占めており、自然の宝庫。相模川、道志川などが流れており、津久井湖、相模湖といった湖がなんと5つもあります。キャンプ場もあちこちに点在しています。県立陣馬相模湖自然公園、丹沢大山国定公園などのハイキングにはうってつけの場もあちこちにあり、温泉も多数存在します。

そのほかのレジャーとしてはゴルフ場があり、さがみ湖リゾート プレジャーフォレストで冬に開かれるさがみ湖イルミリオンでは、関東最大級のイルミネーションが楽しめます。橋本駅北口周辺での橋本七夕まつりのほか、四季折々折の祭りやイベントもあり、地元での遊びには事欠きません。

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町田駅周辺
大型商業施設に加え、商店街も充実している町田駅周辺。飲食店も多く集まっています(筆者撮影)

また、周囲に町田、南大沢など商業施設が集積している街がある点も生活の利便性を考えるうえでは大きなポイント。大半のものは地元でそろいますが、たまにはショッピングに出かけるのも楽しいもの。都心まで行かなくてもちょっと出かけるだけで雰囲気の違う街があり、気分が変わります。

駅前だけでなく広範囲を見て選択を

駅北側
駅北側、境川に向かう下り坂。境川を超えた辺りが町田市、その先、高台は八王子市になります(筆者撮影)

ひとつ、住宅を求める際に注意したいのは、相模原市自体は台地上にあるものの、橋本駅の南側には相模川、北側には境川が流れており、川沿いには低い土地もあること。特に戸建てを求める際にはどのような場所かを注意深く確認する必要があるでしょう。

加えて、この地域の魅力である自然を満喫するためにはどうしても車が必要になってきます。下見時も含め、車で駅前だけでなく、多少広い範囲を見て回り、住んだ後のことを想像してみると良いのではないでしょうか。

期待高まるリニア開業ですが、工事の遅れで予定している2027年の開業は難しい状況の様子。とはいえ確実に進捗はあり、地元もリニア後を視野に動き始めています。大きな発展が期待できる橋本にこれからも注目です。

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(最終更新日:2024.04.19)
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