子どもに「自分の部屋」を用意するのはいつから? 「親の心配」と「子どもの意識」から紐解く

「子どもが誕生するから」「子どもが進学するから」など、子どもの成長がマイホームを考えるきっかけとなる家庭も多いのです。子育て環境を考えてマイホームを手にしたからには、子どもの居場所をどうするか、子ども部屋をいつ用意するか、大いに悩むところでしょう。

小学生か中学生か? 親が考える子ども部屋が必要な年齢は?

ゼロリノベを運営するgroove agentが、子ども部屋が必要か不要か、適齢期や広さについて、アンケート調査を実施しました。30代~40代の既婚女性たちは、「子ども部屋をいくつくらいから必要だと思っている」のでしょうか? その調査結果が次のグラフです。

子ども部屋をいくつくらいから必要
ゼロリノベ調べ

小学校高学年(4~6年)からと思っている人が40.0%と最多で、次が小学校低学年(1~3年)の30.5%でした。7割以上が、小学生のときに子ども部屋が必要と思っていることがわかります。これはおそらく、小学生になるのを機に、学習机や教科書などを置く本棚、ランドセルなどの学習用具を用意するので、その場所が必要と考えたり、集中して学習できる環境を整えたいと考えたりするからでしょう。

では、子ども部屋を必要だと思う理由は何でしょう? 子ども部屋を用意するメリットはさまざまにありますが、調査結果では「プライバシーの尊重」が半数近い45.8%になりました。また、「自立心、自己管理能力が身に付く」(27.0%)、「集中できる学習環境」(23.8%)を挙げた人もいました。

子ども部屋を必要だと思う理由
ゼロリノベ調べ

一方で、子ども部屋を与えることで懸念されるデメリットは何でしょう。調査結果によると、半数が「親の目が届かなくなる」(50.0%)ことを懸念し、次いで自室にばかりいる「引きこもりの心配」(30.3%)を挙げる人も相当数いました。

子ども部屋を与えることで懸念されるデメリット
ゼロリノベ調べ

小学生にとって居心地が良いのは、リビング・ダイニング?

では、子ども側はどう思っているのでしょうか? 古い調査結果になりますが、子ども側にも調査した調査があるので、その結果を見ていきましょう。東京ガスの都市生活研究所の「都市生活レポート2014.3」に、「家で子供が過ごす部屋~子供の過ごし方と親子それぞれの意識~」という調査結果が紹介されています。

その調査結果を見ると、「平日に、子ども部屋に子どもがいる時間」は、小学生では1時間未満という場合が多いことがわかります。中学生になると子ども部屋にいる時間が長くなるといった変化も見られます。

平日に、子ども部屋に子どもがいる時間
※子ども部屋がある家庭が対象 子ども部屋がある人:親/N=1328
出典:東京ガス都市生活研究所の「都市生活レポート2014.3」を基に作成

ではなぜ、子ども部屋にいる時間が短いのでしょうか? 別の調査項目を見ると、小学生のうちは、【宿題をする】のも【朝の着替え】をするのも、主にリビング・ダイニングで行っています。一方で中学生になると、過半数が子ども部屋で行うようになり、明らかに大きな変化が見られます。そうはいっても、高校生になっても宿題や朝の着替えをリビング・ダイニングで行うという子どもが一定数いることも、見逃せないポイントです。

どこの部屋で行うか
※子ども部屋がある人:親/N=1328 
出典:東京ガス都市生活研究所の「都市生活レポート2014.3」を基に作成

ではなぜ、子どもたちはリビング・ダイニングにいる時間が長いのでしょう? どうやらその答えは、【居心地が良い】ことにありそうです。調査で、「居心地の良い場所はリビングか自分の部屋か」を選んでもらったところ、小学生ではリビング(どちらかといえばリビングを含む)と回答した子どもが大半ですし、中学生や高校生でも自分の部屋よりリビングのほうが居心地が良いと回答した子どもが多くなっています。

居心地の良い場所はリビングか自分の部屋か
※子ども部屋がある人:子/N=1307 
出典:東京ガス都市生活研究所の「都市生活レポート2014.3」を基に作成

住宅の中でもリビングは、一般的に最も陽当たりがよい場所に配置されることが多く、大きな開口部があるなど開放感のある室内空間になっています。つまり、居住環境からいって居心地が良いといえるわけです。これに加えて、家族がそばにいてくれることの安心感が得られることが、居心地の良さを感じさせる要因となっているのでしょう。

子どもたちは、「居心地の良い場所」にいたいのです。親の目を気にしたくないときや学習に集中したいとき、友達を呼んで気兼ねなくおしゃべりしたいときなどでは子ども部屋にいて、くつろぎたいときなどにはリビングにいる、といった使い分けをしているのかもしれません。

それぞれの子どもの成長に応じて、子ども部屋の用意を

さて、話を「子ども部屋はいくつくらいから必要か」に戻しましょう。

このように調査結果を見ていくと、子どもはリビングに居心地の良さを感じているため、住まいの中でもリビングにいる時間が長くなり、子ども部屋にいる時間が短くなります。特に小学生では、この傾向が顕著です。親も子どもが目の届くところにいることで安心できますから、それを許容していることも背景にあるのでしょう。

とはいえ、中学生になると親に見られずにひとりになれる場所が必要になり、子どものプライバシーを尊重することが大切になります。

こう見ていくと、中学生のときには子ども部屋が用意されていることが望ましいでしょう。ただし、調査結果では男女による違いも見られますし、高校生でもリビングで宿題をする子どももかなりいます。このように、子どもの成長ぶりや考え方は子どもそれぞれで違うので、小学生のうちは子どもの意見も聞きながら、子ども専用の区切られたスペースでいいのか、個室が必要なのかを検討するのが良いでしょう。

家庭のルールを作って、互いに守ることも忘れずに

また、筆者個人の意見ですが、子ども部屋の最大のメリットは、「自立心や自己管理能力が身につく」ことにあると思います。自分の部屋に自分の物を片づけて保管するという、基本的な習慣を身につけることもとても大切です。自分のスペースは自分で管理することを、その広さを拡大しながら徐々に身につけていき、その先に個室の管理があるというのが理想的ではないでしょうか。

一方で個室を用意すると、親のほうでは、子どもが親の目の届かないところで何をしているかわからないという心配も強くなります。そのためには、自分の部屋を自分で管理することに加えて、帰宅したら挨拶をするとか、友達を無断で部屋に呼ばないとか、子どもに無断で入室しないといった家庭のルールを決めておき、互いに守るようにすることも必要でしょう。

「子ども部屋が子ども成長をサポートする」という住まいであってほしいものです。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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