タワーマンションの資産価値、かつての魅力が低下中? 今、買うなら「選び方」が重要に

1990年代から2000年代の初頭にかけて超高層マンション(タワーマンション)が急増し、その希少性の高さから大変な人気を集めました。その後超高層マンションが続々と増えた結果、最近では「超高層」というだけでは以前のような人気を得ることができなくなっているようです。資産価値の面でも魅力が低下しているのですが、今超高層マンションを購入するとしたらどのような物件を選べばいいのでしょうか。

超高層はこれからも年間1万戸以上増加する

一般的に、20階建て以上のマンションを「超高層マンション」、「タワーマンション」と呼びます。1990年代から2000年代の初頭にかけて急速に増加し、2007年には首都圏だけで年間2万戸近くの超高層マンションが完成しました。それでも当時の超高層マンションはまだまだめずらしい時代で、希少性の高さから大変な人気を集めました。

新築マンションが発売された月に契約が成立した割合を意味する月間契約率は、一般的に70%が好不調の境目といわれますが、全体の契約率が70%を切る月でも、超高層マンションは80%台、90%台の高い契約率を維持することが少なくありませんでした。それだけ人気が高いことから、中古マンションとして売却する際も周辺物件より格段に高い価格が付き、その資産価値の高さが人気をさらに高めるという相乗効果が続いてきたのです。

全国の超高層マンションの竣工(予定)年次別戸数の推移
※2022年以降は予定  出典:不動産経済研究所「超高層マンション動向2022

「超高層」というだけで売れる時代ではなくなっている

超高層マンションは2007年のピークから減少しているものの、それでも2012年以降も図表1にあるように、全国で毎年1万戸以上、首都圏だけでも5,000戸以上の竣工が続きました。しかも、民間調査機関の不動産経済研究所によると、2022年以降も全国で年間1万3,000戸台から1万7,000戸台の超高層マンションが完成する見込みです。

これだけ増えてくると、超高層マンションの希少性が低下し、「超高層マンションだから」という理由だけで売れ、資産価値が高まることは期待しにくくなっています。

図表2にあるように、首都圏全体の契約率と超高層マンションの契約率を比較しても、大きな差はなくなっています。先に触れたように、かつては首都圏全体の新築マンション月間契約率が70%を切る月でも、超高層マンションは80%台、90%台の高い契約率を確保していたのですが、最近ではそこまで大きな差はありません。たしかに、超高層マンションの月間契約率が首都圏全体の契約率を上回る月があります。それでもその差はさほど大きくありませんし、月によっては首都圏全体より低くなっていることもあるのです。

首都圏新築マンションの月間契約率
出典:不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向

超高層マンションには駅近物件が多い

では、どのような物件ならかつてのような人気を集め、資産価値の高まりを期待できるのでしょうか。

第一には、立地です。「マンションの価値は立地で決まる」とする専門家が多いのですが、超高層マンションにもそれが当てはまります。というより、超高層マンションだからこそ立地が極めて重要といってもいいかもしれません。

超高層マンションを建てるには、一定の広さの敷地を確保する必要があります。大都市部で最寄り駅からの徒歩分数の短い場所にそのような敷地を取得することは簡単ではありません。どうしても、駅前再開発などが中心になります。そのため、超高層マンションには徒歩3分以内などの駅近物件が多いのですが、反対に駅からの徒歩分数が長くなると、人気が低くなってしまいます。

近郊部の新たなランドマークとなるマンション

そのため、一時期ほどの人気ではなくなっているとはいえ、大都市部、それも都心部やその周辺の徒歩分数の短い超高層マンションは、今でも高い契約率を誇っています。しかし、そのような物件の分譲価格は格段に高くなります。東京23区の新築マンションの発売価格は平均8,000万円を超えており、月によっては平均でも1億円を超えることがあります。超高層マンションだけに限れば、さらに高くなります。

平均的な会社員ではなかなか手が届きませんが、このところ都心部だけではなく、近郊部のターミナル駅の超高層マンションが注目されるようになっています。物件によっては、最寄り駅で唯一の超高層マンションであり、用途地域などの各種規制の関係で当面その近くに超高層ビルやマンションが建てられない、といったケースが少なくありません。
つまり、そのエリアにおいてランドマーク、フラッグシップとして評価され、その地位を長く保てる可能性があります。

図表3がそうした近郊ターミナル駅の注目の超高層マンションの例です。価格的にも都心部やその周辺に比べるとかなり安いので、ある程度の年収があれば買える物件が少なくありません。

注目の近郊ターミナル駅の超高層マンション
※各種の資料をもとに著者作成

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十条駅
大宮駅
川口駅
千葉駅
川越駅

40階建て以上の低層階の住戸が狙い目?

図表3でも分かるように、超高層マンションでも20階建てから39階建てまでの物件が多く、40階建て以上はまだまだ希少性が高いと言われています。

現在、国内の分譲マンションで最も階数が多いのは、「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」の60階建てと言われています。40階台、50階台の階数のマンションはまだまだ少なく、それだけ分譲時の人気が高く、完成後の資産価値の上昇が期待しやすくなっています。
それでも、上層階はどうしても価格が高くなるので、注目したいのは低層階です。分譲時の価格は低層階と上層階では大きな差がありますが、中古マンションとしての取引においてはその差は当初ほどではなくなります。つまり、40階建て、50階建てのマンションであれば、低層階でも希少性の高さから周辺物件より高く評価されることが多いのです。
低層階というと、超高層のメリットである眺望の良さや開放感を享受できないと考える人が少なくありませんが、そんなことはありません。40階建て、50階建てともなると、多くは上層階にラウンジなどが設置されていて、居住者であれば誰でも利用できるようになっています。しかも、万一災害などでエレベーターが止まってしまったときでも、低層階のほうが安心です。

自分たちに合った共用施設や管理サービスを

超高層マンションは総戸数が200戸以上の大規模マンションが多くなり、そのぶん共用施設や管理サービスが充実しています。
もちろん、そのほうが住むうえでの利便性が高いのは言うまでもありませんが、ライフスタイルやライフステージによって必要な施設は異なります。分かりやすい例でいえば、キッズルームは子どもが大きくなれば使いませんし、カラオケ、シアタールームなどの趣味のスペースも必要度は人によって異なります。

共用施設や管理の充実は、そのぶん管理費の上昇につながります。本当に自分たちには何が必要なのか、何がいらないのかをじっくり検討して選択するのがいいでしょう。

以上のように、超高層マンションがかつてのような希少性の高い存在ではなくなりつつある現在、「超高層」というだけ飛びついてしまうと後悔することになりかねません。さまざまな面で資産価値の高まりそうな物件を選び、共用施設や管理についても自分たちに合った物件を見つけるようにすれば、買ってから後悔する確率はかなり低くなるはずです。

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