【円安時代の生活防衛策】家計に強いFPが解説!

2022年3月に1米ドル114.82円だった為替が4月末には130円近くまで上昇し、その後も円安が続いています。急激な円安とともに食料品や光熱費など日常生活に欠かせないモノの値段が上がり、家計が苦しくなったと感じている人も多いでしょう。

円安と物価上昇の関係や、物価上昇から生活を防衛する対策について考えてみます。

円安になると物価上昇すると言われるのはなぜ?

下図は2020年以降の為替の動きと前年同月比の生鮮品やエネルギーを含めた消費者物価指数の推移を表したグラフです。2022年に入ってからは、アメリカがインフレを抑えるために金利を上げる政策に転換したこともあり、日本より金利が高いアメリカに資金が流れ、円安が進みました。円安と共に物価も急上昇しているのがわかります。

2022年4月には生鮮品やエネルギーを含めた物価上昇率は2.5%となりました。特に電気代や都市ガス代は前年同月比20%以上上昇しました。家計を直撃する上昇率となっています。

円安と物価上昇の関連性
出典:日本銀行 時系列統計データ検索サイト総務省統計局「消費者物価指数」

では、なぜ円安になると物価が上昇するのでしょう。

日本はエネルギーや食料の多くを海外からの輸入に頼っています。日本のエネルギーの自給率は、2019年時点で12.1%です。エネルギーはその多くが米ドルで取引されるため、円安になると輸入価格が上がってしまいます。

たとえばジェトロ(日本貿易振興機構)によれば、2021年のアメリカからの液化石油ガスの輸入額は総額で約46億ドルです。もし1ドル100円で輸入できれば4,600億円ですが、1ドル130円だと5,980億円です。30円の円安となることで輸入額が1,380億円も上がってしまう計算です。

食卓に欠かせないパンやお菓子を作るための小麦、牛肉や豚肉など肉類など、輸入率が高い食料品も円安になると原料の値段が上がってしまいます。日本の食料自給率は約37%(カロリーベース)です。食料品の値上げが続くのも円安が大きく影響しています。

国内生産されているものも値上げになるのはなぜ?

国内生産が約8割を占める野菜や自給率50%以上の魚介類等も2022年4月時点で、前年同月比10%以上の上昇率となっています。また、食用油は36.5%、調理カレーは16.5%もの上昇率となっています。食品だけでなく家具家電などの家庭用耐久消費財も5%上昇しています。国内で生産される食品や耐久消費財はなぜ値上がりするのでしょう。

生鮮食料品は天候不順や地球温暖化などの影響を受けて、農産物が不作になったり漁獲量が減ってしまったり、という理由も大きいでしょう。たとえば4月時点で昨年の約2倍に高騰しているたまねぎは、一大産地の北海道が昨年夏の高温と雨不足で生産量が落ち込んだことが最大の原因となっています。

また、大幅に価格が上昇した食用油については、値上がりの要因を大きく3つ考えてみました。

1つめは原料となる大豆やなたね(キャノーラ油)、パーム油などの高騰です。原料の多くはブラジルやアメリカ、カナダ、マレーシアなど海外から輸入しています。世界的な天候不順や新型コロナウイルスの影響による労働力不足などで生産量が落ち込んだことが価格上昇の要因となっています。

2つめの要因は世界的な需要の増加です。特に中国では食用だけでなく飼料としての輸入も増大しており、需要に対する供給が間に合わない状況です。また、食用油の原料はバイオ燃料としても利用が拡大しています。農業に大きく影響する地球温暖化を防止するために、地球の未来を考えると致し方ないのかもしれません。

そして3つめの要因はやはり円安です。円安は原料の輸入だけでなく、エネルギー価格の上昇にも大きく影響しています。工場を稼働するための電気代はもちろん、食用油を入れる容器は石油を分解した「ナフサ」が主な原料となっています。梱包する段ボールを製造するための工場の電気代も上昇します。製品を工場から消費者に届けるためのトラックなど物流にかかるガソリン代も大きく上昇しています。

エネルギーの多くは海外から輸入しているため、前述したように、円安になれば輸入価格が上がってしまいます。エネルギー価格が上がることで、国内で生産する製品もすべて円安によるコスト高の影響を受けてしまうのです。

円安に負けない生活防衛策は?

賃金上昇がないまま物価だけが上がっていくと家計が赤字になってしまいます。赤字が続けば家計破綻にもつながりかねません。円安に負けない生活防衛策はないのでしょうか。

円安による物価上昇に対する防衛策は、節約する、収入を増やす、資産を運用するの3つです。

防衛策その1:節約する

節約は住宅ローンや保険料、通信費など固定費を見直すことが効果的と言われます。しかし、もうやってしまったよ、という人も多いでしょう。住宅ローンの借り換えもすでに低金利で借りているため、借り換えのメリットがでない場合もあります。むしろ生活防衛のためなら、金利は多少高くなっても全期間固定金利で返済額が上がらない安心を得る、という考え方もあります。

それ以外に食費や光熱費を抑えて節約することも考えられます。しかし、食料品やエネルギー価格が大きく上昇している中では、現状維持も大変なのではないでしょうか。

防衛策その2:収入を増やす

節約が限界にきていれば、次に考えるのは収入を増やすことです。会社員の人は、給与を今以上に増やすのは、自分だけの力ではなかなか難しい場合もあるでしょう。副業が可能であれば自分の好きなことで少しずつでも稼ぐ、好きなことを続けることで少しずつ経験とスキル、ネットワークを身につけて将来的に起業する、長く働くという選択肢も考えられます。

防衛策その3:資産を運用する

そして、3つ目の防衛策は資産運用です。特に長期の視点に立って円安に備えるためには、海外の株式や債券で運用している投資信託等に投資を始めることが考えられます。もちろん、短期間では円安から円高になる可能性があるため、まとまった資金を一度に外貨に投資することはお勧めできません。時間や資産を分けて、長期投資、分散投資を心がけることが大切です。

為替の動きは予想することはできません。下のグラフは1986年以降の米ドルと円の為替の推移を表したものです。長期的に見ると、円安になっても急激に円高に振れる時もあり、まとまった資金で円高の時に外国資産を購入して、円安で売るというのは難しいことがうかがえます。

1986年以降のドル・円為替の推移
出典:日本銀行 時系列統計データ検索サイト

そこで、毎月円で定期積立をするように、まずは米ドルなど外貨で運用している投資信託等で、少額ずつ積立投資をしてみてはいかがでしょう。

たとえば同じ1万円を毎月積み立てるなら、円高の時は多くのドルを仕入れることができ、逆に円安の時に買えるドルは少なくなるので、何も考えなくても円安の時にたくさんのドルを購入してしまうという失敗がありません。積み立て投資ならまとまった資金を投資するわけでもないので、今が円高でも円安でも、気にせずスタートすることが可能です。

現在は、AI投資やポイント投資など少額から気軽に投資する方法や、NISAやつみたてNISAのように、一定枠まで利益を非課税で受け取れる制度もあります。円安から将来の生活を防衛するためにも、まずは少額から積み立て投資を始めるのも、生活防衛策のひとつになるかもしれません。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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