給与がこの数十年上がっていないことがしばしば話題に上りますが、実際にピークの1990年代よりも平均年収が数十万円低い状態が続き、年収300万円台の人がかなりの割合
を占める世の中になったと言われています。
このような現実を鑑み、年収300万円の手取り額や将来受け取れる年金額、さらには年収300万円での結婚や子育て、住宅の購入に関する実態について客観的に紐解いていきます。

年収300万円は日本人全体の17%?

国税庁の「民間給与実態統計調査(2020年)」によると、1年を通じて勤務した給与所得者は約5,000万人いることが分わかります。年収が300万円超~400万円以下の人の割合が全体の17.4%と一番多く、次いで200万円超~300万円以下の人の割合が15.5%となっています。つまり、年収300万円前後で生活している人の割合は、全体の約33%にのぼることがわかります。

さらに男女別でみると、男性の場合で年収300万円~400万円に位置する人の割合は17.5%で、約6人に1人がこの年収帯に位置し、年収300万円超は全体の80%にあたります。そして、女性の年収300万円~400万円の割合は17.3%、さらに200万円~300万円の割合は21.3%と、男性よりも年収300万円前後に位置する人の割合が高く、女性の約5人に3人は年収300万円以下となっています。つまり女性のみで見ると年収300万円超は全体の40%の立ち位置であることがわかります。

年収300万円の手取りはいくら?

給与所得者は、毎月の給与から社会保険料や所得税・住民税が差し引かれた額を受け取っています。年収300万円の場合は、手取り額が230~240万円前後のことが多く、月額に換算すると20万円弱になります。所得税や住民税の額は、その人に適用される所得控除の種類や金額によって異なることから、年収が同じ300万円であっても、最終的な手取り額も同じになるとは限りません。

給与から天引きされているお金
給与から天引きされているお金には、「年金保険料」や「健康保険料」、「雇用保険料」といった社会保険料のほか、その人の収入に応じて概算した所得税、さらには前年の所得に応じて計算された住民税があります。
社会保険料は収入によって決まるので、収入額が同じであればほぼ変わることはありません。ただし、40歳以上になると介護保険料の負担が発生することから、社会保険料の総額が増えます。

また、人によっては財形貯蓄を行っていたり、会社で用意されている団体生命保険に加入したりしているなどで、その貯蓄額や保険料が差し引かれるケースもあります。労働組合に加入していれば、その組合費も引かれている可能性があるでしょう。

所得控除・税額控除とは?
給与から天引きされる税金(所得税および住民税)は、年収から給与所得控除を差し引いた「給与所得金額」から、さらに所得控除を差し引いた「課税所得金額」に応じた税率を乗じて求めます。

1.給与収入-給与所得控除=給与所得金額
2.給与所得金額-所得控除=課税所得金額
3.課税所得金額×所得税率=所得税額

所得金額から差し引く所得控除には、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除などがあり、扶養控除はその人の家族構成によって適用が異なります。たとえば配偶者がいて、その年収が103万円以下であれば、配偶者控除が適用されます。
さらに、住宅ローンを利用して家を購入した場合、一定期間住宅ローン控除の適用を受けられますが、これは所得控除ではなく税額控除にあたります。税額控除では、上で求めた税金額から控除額が差し引かれます。

4.所得税額-税額控除額=最終的な所得税額
所得控除とは、所得税や住民税を求めるための課税所得金額を計算する際に使われるもので、一方の税額控除とは、課税所得金額によって求められた所得税額や住民税額から差し引くものだと理解してください。

年収300万円の人が将来受け取れる年金額はいくら?

では、年収300万円の人が将来受け取れる年金額はどのくらいなのでしょうか。計算にあたっては三井住友銀行の年金シミュレーションを用いることとし、生涯平均年収が300万円の場合の将来受け取れる年金額を見てみましょう。

生涯平均年収が300万円の会社員が受け取れる年金は、月12万円程度(老齢基礎年金:6万4,000円、老齢厚生年金:5万4,000円)です。

総務省が発表している「家計調査年報(家計収支編2020年度)」によると、65歳以上の単身高齢者世帯の平均可処分所得(税金や社会保険料を引いた額)は約12万円となっており、年収300万円の人が受け取れる年金額とほぼ同額であることが分かります。対する支出額は約13万円で、毎月約1万円程度の赤字となってしまいます。

これはあくまでも単身世帯での家計収支ですが、公的年金だけでは生活していくことが難しい場合も多く、そのためにも不足分となる老後資金を早めに準備しておく必要があることを、しっかりと意識しておきましょう。

年収300万円で結婚や子育ては可能?

年収300万円でも結婚や子育てをしている人はたくさんいます。年収300万円だからといって、結婚や子育てができないことはありません。ただし、片働き世帯だと都市部の適正家賃(年収の20~25%:年収300万円の場合は5万円以下)のファミリー物件を見つけるのは困難でしょう。そのため、共働きが難しい場合は、住む場所を郊外で見つける、もしくは公営住宅への入居を検討するなど、なんらかの節約が必須です。

また、子育てにもお金がかかります。年収300万円だと金銭的に厳しくなることが予想されるため、児童手当はもちろんのこと、国や自治体が行っている子育て支援の制度をフルに活用しましょう。そのためにも、自分が住んでいる自治体にどのような子育て支援の制度が用意されているのかを調べることはもちろん、国が用意している支援制度の制度改正などについても、適時チェックしておくことが大切です。

年収300万円で住宅ローンは組める?

年収300万円で住宅を購入ことはできるのか、不安に思う人も多いのではないでしょうか。年収300万円あれば、1,500万円~2,000万円程度の物件なら、住宅ローンの審査に通る可能性があります。ただし、収入が低いと審査に通りにくく、金利の高い金融機関しか選べないケースも考えられます。

仮に2,000万円を金利0.475%、返済期間35年で借りた場合、毎月の返済額は約5万2,000円、総返済額は約2,171万円です。※三井住友銀行の「借り入れシミュレーション」を参照。月額20万円の手取り額なら、その約4分の1が返済にあてられることになります。
もしも500万円を頭金として準備し、1,500万円を同じ金利と返済期間で借り入れた場合の毎月の返済額は約3万9,000円、総返済額は約1,628万円となります。500万円の頭金を入れるかどうかの違いで毎月の返済額がかなり減り、支払う金利も約43万円も少なくなることがわかります。このように、住宅ローンを利用する際には、手取り額に占める返済額の割合や負担する金利の総額を考えながら、最終的な借入額を決めるのがポイントです。

ここでしっかりと理解しておかなければならないのは、「借りられる額を借りる」のではなく、「無理なく返せる額を借りる」ことです。住宅購入後は、住宅ローンの返済はもちろん、固定資産税や修繕費などの維持費がかかります。また、子どもが成長すると、教育費用も必要になるでしょう。住宅の購入を考えるにあたっては、今後予想されるライフイベントとそれにかかる費用を考えながら、負担に感じることなく返済を続けていけるかどうかについて、慎重に検討する必要があります。

まとめ

年収300万円超の人は、給与所得者全体の上位60%程度(300万円以下の人は全体の37.7%)を占めています。年収からは社会保険料や税金が差し引かれるので、手取り額は年間230万円~240万円、月額に換算すると約20万円です。結婚や子育てなどはもちろん可能ですが、日々の節約や公的支援制度の活用などといった工夫が必須となります。

また、ローンを組んで住宅を購入することも可能です。ただし、住宅購入後に必要となる費用を考え、それらの支払いが今後の家計の負担にならないよう注意して、毎月の返済額を設定することが大切です。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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