【2022年版】「都心のマンション」か「郊外の戸建て」どちらが良い? 最新データでわかってきた住まい選びのポイント

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大後、在宅ワークが広がり、通勤時間をさほど気にする必要がなくなったため、郊外や地方の戸建て住宅を求める傾向が強まりました。反面、コロナ禍が比較的落ち着いてくるにつれて、通勤に便利な都心やその周辺のマンションが見直される傾向も強まっています。そのため、郊外の戸建て住宅と都心マンションとの二極化が進んでいます。

2021年には東京都特別区部の転入超過数が初のマイナス

コロナ禍で在宅ワークが広がり、外出自粛傾向が定着、家族全員の在宅時間が長くなってきました。そのため、住まいに対する考え方、住まい選びも大きく変化してきたといわれています。

その動きは、人口移動に表れています。図表1にあるように、コロナ前の2019年には東京都特別区部の転入超過数は6万人を超えていたのですが、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大が始まると転入超過数が1万人台に減少。さらに、2021年にはマイナス1万4,828人となり、統計を取り始めて以来、初めてのマイナスを記録しました。

首都圏主要都市の転入超過数の推移
出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告

首都圏内での近郊・郊外への人口移動が目立つ

なかには、東京から脱出して地方に移住する人もいますが、多くは首都圏内の郊外へ移住したのではないかと推測されます。

2021年の動きをみると、東京都特別区部が減少する一方、周辺の大都市部では増加が続いています。さいたま市は1万527人の転入超過で、全国の市町村のなかでも最も転入超過数が多くなりました。横浜市は1万123人で2位、千葉市は6位となっています。

政令指定都市以外でも、茨城県のつくば市が7位、神奈川県の藤沢市が8位、千葉県の流山市が9位に入るなど、首都圏の近郊や郊外部での転入超過が目立っています。

政令指定都市ではマンションを取得して転入した人も多いでしょうが、郊外の中規模都市であれば、戸建て住宅を買って引っ越した人も少なくないとみられます。

戸建て住宅は広さ、マンションは資産価値?

マンションなのか、戸建て住宅なのか、住宅の購入理由の違いをみると図表2のようになっています。

戸建て住宅では、「子どもや家族のため、家を持ちたいと思ったから」が59.8%のトップで、2位は「もっと広い家に住みたかったから」が37.1%で続いています。マンションでも、やはり「子どもや家族のため、家を持ちたいと思ったから」が1位で、2位は「もっと広い家に住みたかったから」ですが、その支持率は戸建てに比べてそれぞれ25.3ポイント、6.0ポイント低くなっています。

戸建て住宅とマンションで支持率が大きく異なっているのが「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」という理由です。マンションでは29.1%で4位なのですが、戸建て住宅では11.0%で8位にとどまっています。特に、シングルでマンションを買った人ほど、資産価値を重視する傾向が強いようです。

つまり、戸建て住宅を買う人は広さやゆとりを重視で、マンションを買う人はどちらかといえば資産価値重視という見かたができます。

住宅の購入理由
出典:株式会社リクルート「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2020年首都圏新築分譲一戸建て契約者動向調査

戸建て住宅はマンションより30~40平方メートル広い

コロナ禍で住まいに広さを求める傾向が強まっているのは間違いありません。自宅にテレワークできるスペースがほしい、趣味やフィットネスを楽しめるスペースがほしいなどのニーズを満たすのはマンションでは簡単ではありません。手に入れることができる広さは限られていますから、広さを求めるならどうしても郊外の戸建て住宅ということになってしまいます。

国土交通省の調査から、物件の形態別の延床面積をみると、図表3のようになっています。注文住宅や中古戸建て住宅なら平均110平方メートル台で、分譲戸建て住宅でも100平方メートル台です。それに対して、新築マンション、中古マンションともに70平方メートル台の前半にとどまっています。戸建て住宅とマンションの差は30平方メートルから40平方メートルもありますから、1畳1.62平方メートルとすれば20畳前後の違いですから、戸建て住宅ではワークスペースを確保したり、趣味の部屋などを設けたりすることも可能になりそうです。

そのほか、郊外の戸建て住宅ならさまざまな面で、コロナ禍に対応しやすくなります。マンションに比べて換気しやすく、外部の人との接触機会が少なくなって安心ですし、万一家族のなかに感染者や濃厚接触者が出ても、レッドゾーンを確保しやすいといったメリットもあります。

取得した住宅の延べ床面積(住宅の形態別)
出典:国土交通省「令和2年度住宅市場動向調査

郊外の住まいには資産価値上昇は期待しにくい

ただ、郊外の住宅は都心に比べて資産価値の上昇はさほど期待できません。地価の上昇率は都心に比べて低くなりますし、建物については経過年数が長くなるほど建物の評価額が減少します。将来はいずれ都心やその近くに戻りたいと考えている人は、買い替えにあまり高く売れないというデメリットが出てきそうです。

そのため、コロナ禍とはいえやはり資産価値が大切という人は、都心やその近くのマンションを選んでいるのではないでしょうか。先に触れたように、シングルほど資産価値を重視する傾向が強いのですが、老後の生活において配偶者や子どもを頼ることはできないので、自分自身で何とかしなければなりません。シングルにとって住まいの資産価値は極めて重要です。

また、パワーカップルなど年収の高い世帯は、二人で頑張って働き続けるためにも勤務先に近く、生活利便施設などもそろった都心やその近くのマンション住まいを選択しています。そのほうが将来的な資産価値が上がるのではないかという期待もあるでしょう。

新型コロナウイルス感染症感染のリスクがあっても、やがてはコロナ禍も収束に向かうはずです。やはり通勤時間が短くてすむほうが安心という考え方もあるのかもしれません。

マンションのリセールバリューが100%を超える

マンションの資産価値の高さを示しているのが、中古マンションのリセールバリューの高さです。

民間調査機関の東京カンテイでは、毎年中古マンションのリセールバリュー調査を行っています。10年前に新築分譲されたマンションのうち、現在も中古マンションとしての取引があって、両者の比較が可能な物件を抽出、現在の取引価格が分譲時価格の何%に当たるを割り出し、駅別に数字を比較したものです。

たとえば、10年前に5,000万円で分譲されたマンションが、現在中古マンションとして6,000万円で取引されていれば、6,000万円÷5,000万円×100でリセールバリューは120%になり、4,000万円に下がっていれば、4,000万円÷5,000万円×100で、80%になります。

そのリセールバリュー、この数年のマンション価格上昇によって、2020年には首都圏平均で101.9%になりました。分譲から10年が経過しても評価額が下がるどころか、むしろ上がっているのです。購入した住宅に住み始めれば、市場では中古住宅の扱いになって、途端に1割、2割と評価額が下がっていくのが当たり前でした。このところのマンション価格の高騰はこれまでの常識の転換を迫るような事態をもたらしているわけです。

首都圏中古マンションのリセールバリュー
出典:株式会社東京カンテイ「2020年中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」

マンションでも郊外は価格上昇を期待しにくい

とはいえ、首都圏のマンションすべてが上がっているわけではありません。リセールバリューが上がっているのは、山手線の内側から外周部が中心で、プラス近郊のターミナル駅周辺に限られます。郊外のマンションではリセールバリューが100%を切っている物件が多くなっています。現在のように、マンション価格が上がっている時期でも下がっているわけですから、マンション価格が横ばいから低下に向かったときには、下落幅が大きくなる可能性が高まります。

それに対して、都心やその周辺の物件なら安定した上昇が期待できますし、マンション価格全体が頭打ちから下がり始めていたとしても、そう極端に下がることはないかもしれません。

ゆとりある生活重視で郊外の戸建て住宅にするのか、資産価値重視で都心やその周辺のマンションを選ぶのか――自分たちの将来設計、そのなかでのマイホームの位置づけなどをじっくりと考えた上で選択することが大切です。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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