【半数の学生が利用】奨学金で知っておきたい返済方法や救済措置

奨学金制度は家庭の経済的事情により、進学等を諦めてしまわないよう金銭的なサポートをする制度です。奨学金には返済が不要なものと返済が必要なものがあり、後者についてはいずれ返還しなければなりません。しかし、近年平均給与が減少傾向にあることや、学費の高騰の影響もあり、奨学金を借りる学生の割合は約半数にまで増えています。その結果、なかには返済が困難になり、奨学金破産する若者も増えてきています。そのような事態に陥らないために、知っておきたい返済方法や救済措置について解説します。

奨学金とは?

奨学金とは、日本国憲法および教育基本法に定められている「教育の機会均等」の理念に基づいて、日本学生支援機構(JASSO)が主体となって運営している制度です。経済的な理由により修学を断念せざるを得ない学生などに向けて、進学に必要な費用の貸与もしくは給付を行っています。

日本学生支援機構の奨学金には、「貸与型」と「給付型」の2つがあり、さらに「貸与型」の奨学金は「第一種」と「第二種」に分けられます。返還が必要な貸与型の場合は、いずれそのお金を返していくことになります。

第一種奨学金には利息が付かないので、貸与された金額を卒業後にそのまま返還すればよいのですが、第二種奨学金には利息が付くので、貸与された金額に利息を上乗せして返還する必要があります。また、条件を満たせば第一種と第二種を併用して借りることも可能です。

奨学金と教育ローンの違い

進学に必要な費用を工面する手段には、奨学金のほかに教育ローンもあります。奨学金と教育ローンの一番の違いは、「誰が借りるか」という点です。奨学金は教育を受ける本人が借りる形を取りますが、教育ローンは基本的に保護者が借りる形となります。また、融資方法も異なります。奨学金は分割で融資が行われるのに対し、教育ローンの場合は一括融資が基本です。

教育ローンでよく知られているのは、日本政策金融公庫が行っている教育一般貸付(国の教育ローン)ですが、他の金融機関でも教育ローンが用意されています。それぞれで資金使途や適用される金利、返済期間などが異なるので、利用を考える際には条件をしっかりと確認しておきましょう。

返済が必要な奨学金と返済が不要の奨学金

上でも少し述べたとおり、奨学金には返済が必要なものと不要のものがあります。「給付型」の奨学金は、原則として返還不要です。さらに、2020年度から始まった高等教育の修学支援新制度で設けられている授業料の減免も、併せて利用することができます。

また、日本学生支援機構の奨学金制度以外でも、新聞奨学生などさまざまな種類の奨学金制度が用意されています。それらを比較して、少しでも将来の返済負担が少ないものを選ぶことが大切です。

奨学金を利用する人の数が増加傾向にあることに加えて、奨学金の返済が難しくなっている人が増えていることも、近年問題視されています。基本的に奨学金は卒業後、社会人になってから返還する必要があり、それは次世代の奨学金の原資となります。しかし、令和元年末時点で、奨学金の返還を3ヶ月以上滞納している人が約15万2,000人にも上ることから、利用するにあたって、自分事として考えておく必要があります。

奨学金は非常に助かる制度ですが、「借りられる額を借りる」のではなく、「返せる額を借りる」ことをしっかりと意識しましょう。

奨学金の返済方法

奨学金の返還は、口座振替によって行われます。振替には、返済用の「口座振替加入申込書」を記入し、金融機関へ提出しなければなりません。そして、貸与終了の翌月から数えて 7ヶ月目の月から返済が始まります。3月に貸与が終了した場合は、10月から返済が開始されることになります。ちなみに口座からの引き落とし日は、毎月27日です。

また、貸与型奨学金の利用にあたっては、申込時に「定額返還方式」と「所得連動返還方式」のどちらかの返済方法を選択します。

定額返還方式

定額返還方式を選ぶと、借りた金額に応じて自動的に返還する月額が決まります。毎月の返済額は一定です。この方式では、「月賦返還」と「月賦・半年賦併用返還」のいずれかを選択できます。前者は、1年の返済額を12等分した金額を毎月返済します。一方後者は、年間返済額の24分の1を毎月返し、それに上乗せする形で半年に1回1月と7月に4分の1ずつ返還する方法です。最終的な返済期間(回数)は、奨学金の貸与総額および割賦方法に応じて決まります。なお、返済の途中で全額または一部を繰り上げて返還することもできます。

従来の奨学金の返済方法はこの定額返還方式のみでしたが、2017年より無利子で貸与を受けた場合については、次に説明する所得連動返還方式も選択できるようになりました。

所得連動返還方式

所得連動返還方式とは、第一種奨学金を申し込む場合にのみ選択できる返済方法で、前年の収入に応じて、次の1年間に毎月返還する金額が決定する仕組みです。また所得連動返還方式を選択するにあたり、保証制度については「機関保証」を選択している必要があります。

機関保証とは、保証機関に一定の保証料を支払うことで、連帯保証を受けられる制度です。仮に延滞が進んだ場合、保証機関がいったん返還を行いますが、本人の返還義務がなくなるわけではなく、あとで本人が保証機関にお金を返す必要があります。

所得連動返還方式では前年の年収によってその年の返還額が決定するため、年収が少なければ返済額は少なくなり、年収が多くなればそれに伴って返済額も大きくなります。

毎月の返済額は、以下の計算式によって求められます。

返済月額=前年の年間所得(地方税の課税所得金額)×9%÷12(最低額:2,000円)

奨学金の返済が困難になった場合に利用できる救済措置

奨学金の返済が困難になった場合に利用できる救済措置として、以下の制度が設けられています。

1.減額返還制度
なんらかの事情で返済が困難になった際、毎月の返済額を2分の1もしくは3分の1に減額し、返還期間を延長してもらえる
可能性があります。経済的な事情で減額が認められるのは年間収入金額325万円以下(給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額225万円以下)であることが目安です。願出は1年ごとに行うことができ、この制度の適用期間は15年(180ヶ月)が限度です。

2.返還期限猶予制度
減額返済制度の利用でも返済が難しい場合は、返済期限を猶予してもらうよう願い出ることができます。たとえば失業や病気などで収入が途絶えてしまい、減額返済制度を利用しても返済が困難になる可能性も考えられるでしょう。年間収入金額300万円以下(給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額200万円以下)であることが目安となります。返済期限の猶予を認めてもらうには審査を受ける必要がありますが、承認されれば願い出た期間、返還を猶予してもらえます。したがって、願い出ても審査の結果によっては猶予が認められないケースがある点は覚えておきましょう。

3.返還免除
本人が以下の状態となった際には、その時点で残っている返済額の一部もしくは全部の返還を免除してもらえます。

・本人が死亡した
・本人が身体および精神障害によって、働くことが困難な状態になった

このような状態となった際には、必要な書類を提出することで、返還の免除を受けることができます。

まとめ

奨学金とは、本人に能力があり、修学する意欲があるにもかかわらず、経済的な理由で修学が困難な学生に対して、必要な学費を貸与もしくは給付する制度です。そして、その返済には定額返還方式と所得連動返還方式が用意されています。卒業後、収入の状況によっては毎月の返済が負担になる可能性も否定できませんが、その際に利用できる救済措置がきちんと設けられています。返済が困難だと感じたら、それぞれの制度の内容を調べ、自分に合った救済措置を願い出るようにしましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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