2022年4月から新しい指導要領に基づき、高校の家庭科の授業の中で金融教育が行われます。昨年から多くのメディアが本件を報じていたため、既にご存じの方も多いでしょう。日本人は他人の前でお金の話をしないとよく言われますが、それだけに子どもたちが学校でお金の勉強をするという意外性に注目が集まっているようです。今回は2022年度から始まる金融教育への期待と懸念を共有したいと思います。

なぜ金融教育の報道が増えたのか

この1年の間で「高校で金融教育が始まる」という報道を多く目にするようになりましたが、なぜ急に取り上げられるようになったのでしょうか。実は多くの方が勘違いされているのですが、既にこれまでも家庭科の授業の中でも金融教育は行われてきました。文部科学省が平成22年1月に公表した「高等学校学習指導要領解説 家庭編」の中には「生活における経済の計画と消費」という項目があり、そこでは「資金管理とリスク」というテーマを扱っており、個人の資金管理としてローンやクレジットの利用だけでなく、「貯蓄、保険、株式などの基本的な金融商品にも触れる」としています。

それでは、なぜ急に「高校で金融教育が始まる」という報道が増えたのか。その理由は平成30年に告示された指導要領の中で、債券や投資信託という言葉が金融商品の具体例に追加されたからだと考えます。近年、日本ではNISAやiDeCoなど、投資による資産形成を後押しする非課税制度が用意されたことで、投資信託を活用した投資が個人投資家にも浸透しました。そのため、高校の家庭科の授業で投資信託にも触れるという点が、「ついに日本でも金融教育が始まる」という報道につながったのでしょう。

真の金融教育が重要

お金の教育イメージ、父親と子供と豚の貯金箱
お金の使い方、増やし方、ため方、守り方など、お金に関する幅広い知識を身につけることが真の金融教育

筆者は日本で金融教育を普及させたいと思い、2018年6月にマネネという会社を立ち上げましたが、その立場からすると1つ懸念があります。それは、これまでも家庭科の授業の中で金融教育は行われてきたのに、「投資信託」という言葉が追加されたことで、急に「日本でも金融教育が始まる」という空気になってしまったことに代表されます。

昨年の8月に日本銀行調査統計局が公表したデータによれば、家計の金融資産に占める株式等と投資信託の比率は日本が10.0%、4.3%なのに対して、米国は37.8%、13.2%となっています。このデータだけを見て「日本人は金融リテラシーが低い」というのは雑な結論だと思いますが、投資は危ないとか、投資で儲けるのはズルいといった、ネガティブな印象が強いことが一因かもしれません。

つまり、「金融教育=投資教育」という概念が普及してしまい、筆者の考える真の金融教育が広まる前に、古くから日本に固定観念とされてきた「投資は危ないもの」という考えで金融教育の波が消されてしまうことです。

では、真の金融教育とは何でしょうか。それは、お金とは何か。そして、お金の使い方、増やし方、ため方、守り方など、お金に関する幅広い知識を身につけることを指します。あくまで、投資や資産形成というテーマはその中の1つにすぎないということです。

投資にネガティブな印象を抱くのも、偏った情報にだけ触れることで起こる現象だと考えます。もっとお金について幅広く学ぶことができれば、変なバイアスを持たずに投資とも向き合うことができるでしょう。

参考:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」

お金を「守る」ための金融教育が急務

・なかなか賃金が上がらない
・老後資金が心配

このようにお金の不安があるからこそ、金融教育として投資を学ぶことの重要性が強調されることがありますが、筆者はお金を守るための金融教育が急務だと考えています。なぜなら、同じく今年の4月から成年年齢が現在の20歳から18歳に引き下げられるからです。成年年齢が引き下げられると、18歳、19歳でも親の同意を得ずに、さまざまな契約をすることができるようになります。例えば、携帯電話を購入したり、1人暮らしのために賃貸を契約できたり、クレジットカードを作ることもできるのです。ちなみに、飲酒や喫煙は20歳からのままです。

これまでは18歳、19歳の方が怪しい契約を結んでしまったとしても、事後に本人や保護者などが「未成年者取消権」を使って契約を取り消すことができましたが、4月からはそれができなくなります。あまり、こういうことは書きたくないのですが、当然、悪い人たちはそこを狙ってくるでしょう。だからこそ、お金を守るための金融教育が急務なのです。

はじめの一歩に期待

これから始まる金融教育について、懸念や小言めいたことを書いてしまいましたが、そもそも日本で金融教育を普及させたいと思い起業した筆者からすれば、この大きな一歩には大いに賛同して後押しをしたいと考えています。実際に都内の高校の家庭科の先生たちとも本件で話をしたことはあり、先生たちも戸惑っていました。おそらく、実際に授業が始まると、さまざまなトラブルも起きると思いますし、ネガティブな記事なども出てくることでしょう。

しかし、最初から完璧な授業ができることなどありません。それは金融教育に限った話ではなく、全ての教科においていえることでしょう。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ日本における金融教育の形が作られていき、高校生からではなく未就学児からお金のことを学べるような環境が整備されることを期待しています。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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