アブラムシはどうやって駆除する? 生態と発生原因から考える対策方法

育てる楽しみや収穫の喜びが味わえる家庭菜園。しかし、草花や木を育てるときに避けられないのが害虫対策です。家庭菜園で悩まされる害虫は数多くありますが、アブラムシもその一つ。

本記事では、アブラムシの生態や駆除方法、殺虫剤(農薬)を使わない予防法について解説します。

アブラムシはどんな虫か

アブラムシは、植物の汁を吸う「吸汁性害虫」です。植物の新芽に好んで寄生し、茎や根から吸汁します。大きさは1~4mmほどと小さく、群れで見つかるケースも少なくありません。

アブラムシの種類の数は、日本で見つかっているものだけでも約700種。よく見かけるのは黄緑色のアブラムシですが、黒色や赤色など種類によってさまざまな色があります。アブラムシの繁殖期は4~6月および9~10月ごろ。この時期はメスだけの単性生殖で増え、多いときには1日で数十個もの卵を産みます。秋になるとオスが生まれて交尾をし、卵の状態で越冬します。

また、アブラムシと「共生」の関係にあるのがアリです。アブラムシは吸汁中に肛門から甘い液(甘露)を排出してアリに提供し、その代わりにアリはアブラムシの外敵を追い払っています。

アブラムシによる被害

アブラムシによる植物への被害は、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

生育不良やすす病

すす病に侵されたアオキの葉
すす病に侵されたアオキの葉(画像素材:PIXTA)

アブラムシの被害でまず挙げられるのが生育不良です。草花・樹木・野菜など、多くの植物の新芽や葉裏に寄生して汁液を吸うアブラムシは、群生する生き物。大群に吸汁されると、植物の生育は著しく悪化します。

また、アブラムシの排泄物が葉や茎に付着して黒カビが発生し、全体がすすけたようになる「すす病」を引き起こすことでも知られています。すす病にかかりやすいのは柑橘類の果樹や花木、庭木などです。

吸汁中に肛門から排出する液(甘露)を求めてアリが集まることで、すす病がさらに誘発されると考えられています。

ウイルス病(モザイク病)

モザイク病にかかったズッキーニ
モザイク病にかかったズッキーニ(画像素材:PIXTA)

汁液を吸うアブラムシが植物間を行き来することで、モザイク病などを伝染させてしまう点も深刻です。

蚊がデング熱やマラリアを媒介するように、ウイルスに侵された植物を吸汁したアブラムシが他の植物に移ることで、ウイルス感染を広げてしまいます。モザイク病にかかった植物は、葉にモザイク状のまだら模様が現れます。進行すると葉が縮れ、最悪の場合枯れてしまうことも。

モザイク病は多くの植物がかかりやすい病気で、治療も困難だとされています。媒介元となるアブラムシには注意しなければなりません。

アブラムシが発生する原因

植物の生育を妨げ、病気を持ち込むアブラムシ。なぜ発生してしまうのか、原因もおさえておきましょう。

窒素分の多い肥料

アブラムシの発生原因としてまず挙げられるのが、窒素分の多い肥料です。植物の必須栄養素として知られる窒素は、空気中からの吸収が難しいため、肥料で与えます。窒素分の多い肥料を与えると、植物の葉でアミノ酸が生成されますが、アブラムシはこのアミノ酸が大好物。

窒素分を与え過ぎた植物はアミノ酸を過剰に生成するため、アブラムシが引き寄せられやすいのです。アブラムシの発生を防ぐためにも、窒素分の多い肥料は与える量に注意しましょう。

株間が狭く風通しが悪い

植物の株間が狭く風通しが悪い環境も、アブラムシがわきやすいので注意が必要です。果樹や花木の株が密生している場所は、アブラムシの最も好むところ。また、株間が狭いと、アブラムシが付きはじめても気づきにくいというデメリットもあります。

植物を植える際は株同士の距離に注意して、風通しの良い状態を保ちましょう。育ち過ぎた葉や枝を適度に間引きしたり、反射光フィルムを活用したりしてまんべんなく日が当たるようにすることで、アブラムシが付きにくい環境を作れます。

殺虫剤を使わない駆除方法

ここからは、殺虫剤や農薬を使わないアブラムシの駆除方法を紹介します。これらの方法は「今発生しているアブラムシの駆除」は可能なものの、根本的な予防にはなりません。駆除しても再度わく可能性があるので、こまめに行うことが大切です。

粘着テープで取り除く

まずは、粘着テープにアブラムシを貼り付けて取り除く方法。アブラムシの発生した葉や茎に手を添え、アブラムシに粘着テープを押し付けましょう。

この方法はアブラムシ発生の初期、比較的数が少なくまばらに付いている場合に適しています。粘着性のあるテープならどのタイプでも使えますが、葉や茎を傷つけてしまわないよう注意しましょう。

牛乳スプレー・石鹸スプレー

石鹸水をスプレー
石鹸水をスプレー(画像素材:PIXTA)

続いては、牛乳や石鹸水をスプレーする方法です。牛乳は乾くと膜になるため、アブラムシの気門をふさいで窒息させることができます。また、石鹸を溶いた水でも同様の効果が得られます。

牛乳は水で薄め、市販のスプレーボトルに詰めて散布しましょう。時間がたつと臭いが出て不衛生なので、乾いたタイミングを見計らって水で洗い流します。

天敵のテントウムシを利用する

アブラムシを食べてくれるテントウムシ
アブラムシを食べてくれるテントウムシ(画像素材:PIXTA)

アブラムシの天敵であるテントウムシを放つという方法もあります。肉食のテントウムシは、アブラムシを食べる益虫として知られています。多いときにはテントウムシ1匹につき、100匹ものアブラムシを駆除してくれる頼もしい存在です。

最近では、飛翔能力を落として品種改良したテントウムシの幼虫が販売されています。テントウムシを利用したアブラムシの駆除では、こうした商品を活用してもよいでしょう。

殺虫剤を使った駆除方法

アブラムシが大量に発生してしまった場合には、殺虫剤(農薬)の使用が最も効果的です。代表的な薬剤を見ていきましょう。

浸透移行性剤

代表的な駆除剤として、まず挙げられるのが浸透移行性剤。植物の根元や葉に散布することで薬の成分を吸収させ、茎や葉に殺虫効果を持たせられる駆除剤です。

アブラムシ以外の害虫にも効果を持つものが多いため、害虫予防に1本持っておくと便利。土の上に散布する粒状の薬剤や、葉に散布するスプレータイプなどがあります。

植物の種類によって使える薬剤が異なる場合もあるので、使用前には必ず確認しましょう。

スプレー式

続いてはスプレー式駆除剤。虫単体を殺虫するものから、葉・茎などをガードするタイプのものまでいくつかの種類に分かれています。

また、収穫前の野菜や花など、なるべく化学薬品を使いたくない場合は、食品由来の成分で作られたスプレー式駆除剤がおすすめ。お酢や天然由来の殺虫成分が配合されたものなどがあります。

浸透移行性剤と同じく、用途や植物の種類に沿って選びましょう。

まとめ

本記事では、アブラムシの生態や駆除方法について解説しました。見た目が不快なだけでなく、植物の生育を阻み病気の媒介元となるアブラムシは、対策が欠かせない農業害虫です。発見したら放置せず、なるべく早く駆除しましょう。

(最終更新日:2022.04.04)
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