小児科医に聞く「冬の風邪対策」 乳幼児の就寝時に暖房つけっぱなしで大丈夫?

寝る前は元気だったわが子が、朝起きたら鼻水を垂らし、咳をしている―。冬の子育て家庭でよく見られる光景です。では、子どもの就寝中、風邪をひかないように暖房をつけたままにしてもよいのでしょうか? また、つけっぱなしにする場合、設定温度や乾燥対策はどうすればよいのでしょう。奈良県の「たけつな小児科クリニック」の竹綱庸仁(たけつな のぶひと)院長に子どもの風邪と暖房対策について伺いました。

子どもは風邪をひきやすい?

乳幼児は免疫状態が未熟
乳幼児は免疫状態が未熟なため、風邪をひきやすい(画像素材:AdobeStock)

子どもの免疫状態は未熟

竹綱院長によると、乳幼児は免疫状態が未熟であるため、大人に比べて風邪をひきやすいそうです。

「赤ちゃんの体は、生後6ヶ月頃までは母親からもらった免疫に守られていますが、その後は、自分で免疫を作っていかなければなりません。だいたい7歳くらいまでに、大人の70~80パーセントの免疫に近づき、13歳で大人と同じくらいの免疫が獲得できるといわれています」(竹綱院長)

保育園での集団生活や兄弟の有無も、風邪の引きやすさに影響?

風邪をひきやすいかどうかは、子どもを取り巻く環境も大きく影響するそうです。

「保育園などで集団生活を送っていたり、兄弟がいたりすると、風邪をうつされるリスクは高まります。単に年齢だけでなく、子どもが置かれた環境によっても、感染のしやすさは違ってきます」(竹綱院長)

子どもに風邪をひかせないために、気を付けたいことは?

定期接種を受けるのがおすすめ
定期接種を受けるのがおすすめ(画像素材:AdobeStock)

では、子どもの風邪を予防するにはどんなことを心がけたらよいのでしょうか。

予防接種を確実に受ける

竹綱院長によると、乳幼児期に定期接種として推奨されている予防接種の中には、風邪の症状に関連するものも多いそうです。

「小さい子がかかると呼吸不全になる可能性がある百日咳(4種混合に含まれる)、1歳未満で感染すると髄膜炎を起こすことがある肺炎球菌、胃腸炎を起こしやすいロタウイルス、Hib(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)が挙げられます。これらはそれぞれの種類で特異的な症状があるわけではなく、風邪の原因菌であるため、それぞれの予防接種を受けることで、症状の緩和や重症化の予防効果が期待できます。保護者の中には、『予防接種は受けない』という考えの方がたまにいらっしゃいますが、接種するのがおすすめです」(竹綱院長)

マスクの着用と手洗い

竹綱先生は幼い子でも、飛沫による感染を防ぐため普段からマスクを着用し、手洗いを心がけてほしいといいます。

手洗いを徹底
手洗いを徹底し、手指の消毒液は補助的に使用(画像素材:AdobeStock)

「手指消毒用のアルコール消毒液は、どんなウイルスにも効果を発揮するわけではなく、例えばノロウイルスを死滅させることはできません。手指を清潔に保つためには、まずは手をしっかり洗ってください。手指の消毒液は、手洗いができない時や、補助的に使うものと捉えてもらうとよいと思います」(竹綱院長)

乾燥に気を付ける

部屋の乾燥を防ぐことも大切だそうです。

「細菌やウイルスは、空気が乾燥した環境を好みます。湿度が低いと、飛沫が浮遊する距離が長くなるため、飛沫感染のリスクも高まります。ただ、湿度は高いほどよいというわけではなく、湿度が高すぎるとカビが発生してアレルギー症状が出る子もいます。湿度は50パーセント前後を保つのが一般的によいといわれています」(竹綱院長)

子どもの体温を衣服で調節する

子どもは大人に比べて基礎体温が高く、自分で体温調節をすることが苦手な傾向があるそうです。

「大人に比べて『ちょっと薄着かな?』という程度を目安に、子どもの状態に合わせて服を重ねたり脱がせたりして、体感温度を調節してあげてください」(竹綱院長)

体温調節が上手くできていない場合、特に夏の蒸し暑い日などは、熱が体にこもって熱中症になることも。冬は、運動などで汗をかいた後に体が冷えて体感温度が低下することにより、風邪をひきやすくなるそうです。

「顔のほてりや活気、汗の有無など、全身を観察し、適切な体温を維持できているか確認するのがおすすめです」(竹綱院長)

就寝中、暖房はつけっぱなしでOK?

就寝中、暖房はつけっぱなしでOK
子どもの睡眠を妨げないためにも暖房はつけたままでも差し支えない(画像素材:AdobeStock)

就寝時に暖房をかけたままにするのがよいかどうかは、医師により見解が異なるそうです。

「私自身は、暖房はつけて寝ても差し支えないと思っています。子どもは寝ながら布団をはぐことがあり、寒い部屋だと体が冷えて眠りが浅くなる恐れがあるからです。眠りが浅いと、免疫状態が悪くなったり、成長ホルモンに影響を及ぼしたりすることがあります。『寝る子は育つ』という言葉があるように、子どもの睡眠を妨げないことはとても大事なこと。暖房をつけておけば、少々布団をはいでしまっても、ある程度室温が保たれているので、急激に体が冷えて風邪をひいてしまうといった事態も防げるかと思います」(竹綱院長)

つけっぱなしにする場合の設定温度は?

冬は20度くらいに設定
冬は20度くらいに設定して布団で調節(画像素材:AdobeStock)

竹綱院長は、就寝時の設定温度は高すぎないことが大切だといいます。

「就寝時の温度は、25度を基準に、夏はプラス2度、冬はマイナス2度というのが一般的な目安とされています。ただ、体感温度には個人差があるので、これより少し涼しめに設定しておいて、寒ければ布団で調節することをおすすめします。そのため、冬であれば20度程度がよいかと思います」(竹綱院長)

就寝時の乾燥対策は?

暖房をつけっぱなしにする際に気になるのが、空気の乾燥です。防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?

就寝時の乾燥対策
就寝中も暖房をつけっぱなしにするなら、加湿器を活用(画像素材:AdobeStock)

まとめ

子どもの風邪対策のポイントが分かりましたでしょうか? 就寝時も部屋の温度や湿度を保って、子どもたちを風邪から守りましょう。

【取材協力】
たけつな小児科クリニック
http://www.taketsuna-kojika.com/
奈良県生駒市真弓1-2-8
竹綱庸仁(たけつな のぶひと)院長
愛知医科大学医学部卒。「すべては子どもたちのために」を理念に掲げ、子どもたちの体だけでなく、心にも寄り添った小児医療を実践している。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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