なぜ2月・3月は家の売却タイミングと言えるのか? 住宅専門家が分析

例年、年度末には引っ越しシーズンで人口移動が増加、住宅の売買も増えて、住宅市場が活性化します。自宅の売却を考えている人にとっては、2月、3月はできるだけ高く、迅速に売却して、住まいのステップアップを実現するチャンスのときかもしれません。

年度末には大都市圏への人口移動が増加する

日本では3月から4月が年度替わりであり、進学や入学、就職、人事異動による転勤の季節となります。人口の移動が急増、特に、地方圏から大都市圏への移動が増えます。

ただ、新型コロナウイルス感染症拡大で企業の転勤などが抑制され、入学や就職による人口移動が停滞、2020年と2021年は例外的な動きになっています。そこで、それ以前の2018年と2019年の東京圏への転入者数から転出者数を引いた転入超過数をみると、図表1のようになっています。

1月と2月は東京圏への転入超過数は月間1万人以下ですが、3月には一気に7万人近くに増えています。4月にはやや減少しますが、それでも2万人を超えています。

これだけの人口移動があれば、当然のことながら住まいに関する動きが活発化します。が欠かせません。若い世代は賃貸住宅や寮などへの移動が多いでしょうが、一定の年代になると、東京圏などの大都市圏で新たにマイホームを取得する動きや、自宅を売却して買い替えたりする動きが出てきます。

東京圏への人口転入超過数
出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」

3月の引っ越しは通常月の2倍に増加する

人口移動が増えれば、必然的に引っ越しが増えます。

そのため、例年2月から4月にかけては、引っ越し件数が急増します。図表2にあるように、年初の1月は動きが鈍いのが、2月からそろそろと動き出し、3月に一気にピークに達し、4月も多い状態が続き、5月に落ち着きます。

例年のことながら、引っ越し業界はこの時期ドライバーなどの人手不足が深刻化するため、国土交通省では毎年ホームページなどで、引っ越し時期の分散化を呼びかけているほどです。2022年も1月12日にホームページで、「引越時期の分散に御協力をお願いします!~3月の引越件数は通常月の約2倍!混雑時期を外してスムーズな引越を~」としています。2022年の場合には、3月19日から4月3日までがピークで、2月以前または5月以降の引っ越し検討をお願いしています。

参考:国土交通省「引越時期の分散に御協力をお願いします!」

ちなみに、引っ越しシーズンのピーク時と閑散期では、引っ越し料金にも大きな差があります。国土交通省ではその点からも、トップシーズンをはずしたほうが得策としています。

引っ越し業者の件数
出典:国土交通省ホームページ

毎年3月に中古マンションの成約件数が増加

これだけ人が動けば、住宅も動きます。賃貸住宅や社宅、寮などへの移動もありますが、引っ越しをきっかけに住まいを手に入れたり、買い替えたりする人が多くなるわけです。

図表3は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査による、中古マンションの成約件数を月別に整理したグラフです。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大によって4月、5月に成約件数が大きく落ち込むなどの変則的な動きになっているので、2017年から2019年までの折れ線グラフをご覧ください。いずれも2月からジワジワと成約が増えて、3月に大きく増加していることが分かります。

2018年を例にとると、1月の成約件数は2,641件ですが、2月には3,424件に増え、3月はさらに増加して3,819件になります。そして4月は3,237件で、5月は2,785件に減少します。就職、転勤、入学、進学などに備えて2月、3月中に住まいを購入して移動に備える人が多いのではないでしょうか。

首都圏中古マンションの月別成約件数
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウオッチ」

中古マンションも3月の引渡し物件が多い

これは、中古戸建てについても、同様です。図表4にあるように成約件数は例年3月に大きなピークが形成されています。
また、中古マンションの新規に売り出される件数についても、やはり2月から増加し、4月がピークになっています。たとえば、2018年をみると、1月には1万7,062件が2月には1万7,335件に増え、3月は1万8,325件とピークに達し、4月が1万7,704件で、5月は1万6,877件に減少しています。

一方、新築マンションについても、春先にやや売出しが増える傾向にありますが、中古マンションほど明確ではありません。新築マンションの場合には、多くが完成前のいわゆる“青田売り”なので、首都圏の場合には春よりは年末のほうが新規販売が多くなる傾向にあります。ただ、それでも、引渡し時期をみると、入学、進学、転勤などに備えて3月に設定されている物件が多いのは周知の通りです。

価格についても、成約件数が増える2月、3月は前月に比べて上昇する傾向にあります。年間を通してみれば、年末が最も高くなることが多いのですが、それでも春先にも成約価格が高くなる傾向には注目しておいていいでしょう。

首都圏中古戸建ての月別成約件数
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウオッチ」

まとめ

毎年、2月、3月には入学、進学、就職、転勤などの動きもあって、住宅の取引が活発化します。それに合わせて、物件数が増え、価格も上昇する傾向が強まります。

住宅購入にとっては、選択肢が増えるものの、価格が上昇しますから、むしろその時期を避けて買ったほうがいいかもしれません。とはいえ、学校や会社の事情などから、この時期に買って引っ越さなければならないケースもあるでしょう。

売却については、他の売り手も含め物件数が増えるので、売りにくい面もあるかもしれません。ただ購入希望者も増えるので、他の季節より早く買い手がつき、かつ高く売れる可能性があります。住まいの売却をうまく進めるためには、2月、3月はチャンスのときといっていいのではないでしょうか。

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