文京区は、東京都23区の中心地に近く、都心3区(千代田、中央、港)のやや北西部に位置する総面積11.29平方キロメートルの東京23区で4番目に小さな区です。皇居の北西に位置する「山の手エリア」の一角で、武蔵野台地の東縁部にあたります。

文京区の地形
文京区の地形(出典:文京区の都市マスタープラン)

文京区には、本郷台地、白山台地などの台地と小石川、音羽川などでつくられた谷があり、起伏のある特徴的な地形となっています。その結果、播磨坂や団子坂、無縁坂といった坂も多く、文京区ならではの風情のある街並みが形成されています。

また、水戸藩の上屋敷を継承した小石川後楽園や加賀藩の江戸上屋敷跡にできた東京大学の本郷キャンパスなど公園や教育施設も多く、文教地区としても知られています。今回は、都心近接で歴史や文化を継承する文京区の住宅事情と暮らしについて紹介します。

江戸城とともに発展 景観・学校教育が高評価の街

文京区は、徳川家康の江戸入り以降に江戸城下の町として、開発が進められました。区内の多くの場所に大名屋敷や武家屋敷が置かれ、伝通院、護国寺、根津神社などの寺社も建てられました。また、明暦の大火(1657年)の後に多くの寺社が移転したこともあり、文京区には今も多くの寺社が存在し、歴史や文化を感じる独特の街並みとなっています。

根津神社
徳川綱吉が造営した根津神社(画像素材:PIXTA)

そして、かつての武家屋敷の跡は豊かな自然を今に継承しています。水戸徳川家の上屋敷内の庭園が現在の小石川後楽園となり、柳沢家の下屋敷庭園が六義園に。御薬園跡及び養生所跡は、現在の小石川植物園です。

『第24回文京区政に関する世論調査』によれば、文京区に「ずっと住み続けたい」が56.9%、「当分の間は住んでいたい」が32.7%となっており、定住意向が高くなっています。その理由として、「通勤・通学などの交通の便がよい」(74.2%)、「持ち家のため、住み続けたい」(49.0%)に次いで3位に「緑や街並みなどが整備されている」(35.3%)が挙げられています。

明治以降には多くの学校が文京区内につくられ、森鴎外や夏目漱石など多くの文人が居を構えました。こうした歴史・文化的背景もあり、文京区は文教の街としての顔も持っています。『第24回文京区政に関する世論調査』でも満足している区の施策として、「公園・緑化・景観施策」(31.2%)に次いで「学校教育施策」(26.6%)が挙げられています。また、文京区に住み続けたい理由に「図書館、学校、保育園などの公共機関が整備されている」を32.0%の人が挙げています。

文京区湯島にある湯島天神は、学問の神様といわれる菅原道真公をまつっています。受験シーズンには、多くの受験生やその家族が参拝に足を運びます。江戸時代、湯島には幕府の官立学校である昌平坂学問所が置かれました。文京区の教育環境の充実は、江戸時代がルーツと言えるかもしれません。

夏目漱石旧居跡
夏目漱石旧居跡(画像素材:PIXTA)

高度成長期以降、文京区の人口は減り続けていましたが、1999年に35年ぶりに人口が増加に転じました。職住近接ニーズの高まりや良好な教育環境から人気の街として存在感を高めています。

【文京区のデータ】
 区制施行日…1947年3月15日
 総面積…11.29平方キロメートル
 人口…22万6,458(2021年12月1日現在)
 世帯数…12万3,342(2021年12月1日現在)

住拠点としての文京区の魅力にまず挙げられるのが、交通利便性の高さです。豊島区、新宿区、千代田区などに隣接し、東京メトロ丸ノ内線・南北線・有楽町線・千代田線、都営三田線・大江戸線が利用できるので、都心のビジネス・商業エリアへの移動がスムーズ。湯島聖堂のある文京区湯島1丁目から東京駅までは直線約2.5キロメートル圏で、タクシーでも気軽に往来できる近さです。

再開発が進む春日駅前
再開発が進む春日駅前(画像素材:PIXTA)

東京メトロ丸ノ内線や千代田線、都営三田線は、再開発でビジネスエリアとして発展を遂げている大手町駅や東京駅界隈へのアクセスが良好。東京駅日本橋口から徒歩約1分の場所には、TOKYO TORCH「常盤橋タワー」が2021年に竣工。街区名称が「東京ミッドタウン八重洲」に決定した「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」をはじめ、東京・日本橋エリア周辺では再開発が活発に推進されており、文京区の拠点性がさらに高まりそうです。

再開発が進む東京駅の八重洲口
再開発が進む東京駅の八重洲口

また、子育てしやすい住環境も文京区の魅力です。文京区の地勢は台地と谷で構成されており、高台などには本駒込、本郷、小石川、白山、千石、西片などの閑静な邸宅街が広がっています。学校、図書館などの教育文化施設や、これらと一体となった良好な住宅地の環境の形成や保護を図るためにホテルや劇場などの規制を行っている文教地区に指定されている場所も多く、子育て環境は良好です。

播磨坂の桜並木
播磨坂の桜並木(画像素材:PIXTA)

小学校の中には、歴史ある伝統校もあり、教育環境の良さで文京区に移り住む人もいます。文京区には、東京大学本郷キャンパスがあり、国立の小中一貫校や中高一貫校、高い進学率で知られる有名私立中学校、私立高校などもあります。区内10ヶ所に図書館が設けられ、子どもの知的好奇心を広げる機会も豊富にあります。

教育の森公園と湯立坂
教育の森公園と湯立坂(画像素材:PIXTA)

文京区は、主に高台の住宅地と谷筋の大通り沿いの商業地で構成され、住宅地には戸建てと中・低層のマンションが立地。沿道の商業地には、中高層のマンションの供給が目立ちます。近年は春日駅周辺などの市街地再開発も活発で、春日駅前の「文京ガーデン」のように商業と住宅が一体になった建物の開発も行われています。

一括りに文京区と言っても、沿線や立地によって街の雰囲気は異なり、住宅地の価格もさまざまです。毎年7月1日時点の地価を公表している令和3年都道府県地価調査によれば、住居系の用途地域に指定されている住宅地で最も価格が高いのは本駒込一丁目の1平方メートル当たり194万円。次いで本郷一丁目の177万円、本駒込六丁目の121万円、西片一丁目の114万円、湯島四丁目の107万円となっています。

本駒込六丁目にある六義園
本駒込六丁目にある六義園(画像素材:PIXTA)

歴史ある住宅街だけに、新築戸建て、新築マンションの供給は限られるため、中古戸建てや中古マンションもあわせて検討すべきでしょう。都心近接で子育て層に人気のある街なので、新築戸建ては7,000万円以上の高価格帯のものが中心となります。また、新築マンションの供給も近年は限られ、2LDKタイプでも8,000万円以上の価格帯のマンションが目立ちます。好立地の3LDKタイプなら、1億円前後の予算は準備したいところでしょう。

しかし、中古マンションなら選択肢が増えます。新耐震基準のマンションで、2LDKタイプなら6,000万円前後から検討可能。築年数が古くても相応の価格設定の中古マンションも多く、邸宅街としても認知されているブランドエリアだけに立地次第で資産価値も大きく変わります。

次に、筆者おすすめの文京区内のエリアを3つ紹介します。

通勤利便性と再開発で注目の春日駅界隈

通勤利便性や生活利便性で考えるなら、春日駅に注目です。都営大江戸線・都営三田線が利用可能で、東京メトロ丸ノ内線・南北線が通る後楽園駅へも接続できます。駅前には「文京シビックセンター」があり、26階建ての建物の中には文京区役所や都税事務所、大ホールやキッズルーム、展望ラウンジなどが入っており便利です。また、第一種市街地再開発事業により2021年には商業・業務・住宅などの複合施設である「文京ガーデン」が駅前に誕生。もともと、白山通り周辺には、スーパーや商店街があり生活関連施設は揃っていましたが、さらに充実しました。

後楽園駅周辺
後楽園駅周辺(画像素材:PIXTA)

春日の名称は、三代将軍徳川家光の乳母である春日局が由来とされているように、春日には歴史を継承した場所も多く存在します。水戸藩の上屋敷だった小石川後楽園や徳川家康の生母である於大の方の菩提寺である伝通院なども身近にあります。また、東京ドームなどのレジャースポットも近く、アクティブな暮らしができるロケーションです。

文京ガーデン内の街並み
文京ガーデン内の街並み

駅周辺には多くのマンションが建ち並んでいますが、生活利便性や交通利便性の高さから人気があり、新築・中古ともに3LDKなら1億円を上回る予算は必要です。とはいえ、千代田区や港区のマンション相場に比べると手が届きやすく、世帯年収の高い共働き層には人気があります。

上野恩賜公園が生活圏に 根津・千駄木は医療施設も充実

次におすすめしたいのが根津・千駄木エリアです。不忍池のほとりから続く不忍通り沿いは、飲食店やスーパー、商店などさまざまなお店が並び、台東区の谷中エリアとあわせて谷根千エリアとして観光スポットにもなっています。不忍通りから東には細い路地も残っていて、個性的な商店や飲食店が軒を連ねています。西側は、高台へ向かう坂になっており、東京大学のキャンパスや根津神社、鴎外記念館などがあります。

このエリアの魅力は、台東区の上野恩賜公園や上野動物園にも程近く、豊かな自然があること。文京区は、起伏のある地勢であるためか1万平方メートルを超えるような大きな公園は限られます。他区ではありますが、身近に広々した憩いのスポットがあるため、余暇も過ごしやすいでしょう。また、日本医科大学付属病院や東京大学医学部付属病院などの医療施設が身近にある点も安心感があります。

不忍池と桜並木
不忍池と桜並木(画像素材:PIXTA)

不忍通り沿いには、多くのマンションが建てられており、中古マンションの流通も活発です。春日駅周辺に比べると価格も抑えられているので、共働き層なら十分検討できるエリアと言えるでしょう。主要アクセスとなる東京メトロ千代田線は、千駄木駅の1駅手前にある西日暮里駅で山手線に乗り換える人も多いので、通勤時も混雑度合いが緩和されます。根津駅から大手町駅までは、わずか3駅なので通勤利便性を求める人にはとても便利です。

江戸川公園や肥後細川庭園など豊かな自然が身近にある江戸川橋

3つ目は、江戸川橋エリアです。神田川が近くに流れる自然が身近な場所で、洒落た飲食店が建ち並ぶ神楽坂エリアも徒歩圏です。東京メトロ有楽町線で池袋や有楽町へ直通アクセスが可能。江戸川橋駅から1駅の飯田橋駅からは、都営大江戸線、東京メトロ東西線・南北線、JR総武線が利用可能で、東西南北どの方向へも行きやすい場所です。

また、神田川沿いには、1万平方メートル超の広さを誇る江戸川公園や、かつて熊本54万石の細川公の下屋敷があった池泉回遊式庭園「肥後細川庭園」があります。四季折々の庭園が楽しめるホテル椿山荘も身近にあり、文京区の中でも豊かな自然が楽しめる街です。

肥後細川庭園
肥後細川庭園(画像素材:PIXTA)

目白通りを進むと邸宅が広がる目白台方面へ、音羽通りを進むと護国寺方面へつながります。護国寺周辺にはお茶の水女子大や日本女子大などの大学のキャンパスや小中学校の校舎も点在し、文教エリアとしての顔も持ちます。春日のような繁華性はありませんが、落ち着いた環境で暮らしたい人には好適の場所です。

価格は、新耐震基準の中古マンションで2LDKタイプが5,000万円台から検討できます。新宿区との区境でもあるので、文京区アドレスにこだわらなければ選択肢を増やすことも可能です。

都心アクセスが良好で、教育施設や落ち着いた住環境が広がる文京区。その中で留意点を挙げるとすれば、坂や墓地が多いことでしょう。しかし、歌川広重が名所江戸百景に団子坂を描いたように、歴史の舞台でもあった多くの坂や寺社は、文京区の魅力でもあります。中央区、港区といった東京湾に面した地域は街の姿が一変していますが、美しい風景が継承されているのも文京区の良さ。都市の利便性を享受しながら、落ち着いた暮らしを実現したい人におすすめの街です。

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