高知県民はなぜ「私立中学」を選ぶ? 四国・中国、九州地方の中学受験事情

中学受験といえば、首都圏や関西圏などの都市部で繰り広げられるものと考えられがちです。ところが、地方都市でも私立中学に進学する子どもの割合は案外少なくありません。今回は全国の私立中学への通学する子どもの割合が多い都道府県ランキングTOP10から高知県と広島県、そして九州有数の大都市でありながらランク外の福岡県の中学受験事情をお届けします。

中国・四国、九州地方で私立中学へ通学する子どもが多い県は?

まずは私立中学に通う子どもの割合が高い都道府県ランキングを確認してみましょう。

私立中学に通う子どもの割合が多い都道府県ランキング
出典:文部科学省「学校基本調査/令和2年度 『75 学年別生徒数』」文部科学省「学校基本調査/令和2年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校《報告書掲載集計》 卒業後の状況調査 高等学校 全日制・定時制」より筆者算出(小数点第3位を四捨五入)

トップの東京都は予想通りですが、予想外なのは2位に高知県がランクインしている点です。東京都と同じく中学受験が盛んな神奈川県を大きく上回っています。また広島県が大阪府や兵庫県を超えている点、大学進学率がそれほど高くない宮崎県でも私立中学への通学が多い点も少し意外に感じます。

高知県で私立中学に通う子どもが多いのはなぜ?

高知市
学力レベルの高い私立中学がひしめき合う高知市(画像素材:PIXTA)

高知県の私立中学通学率は17.87%で全国2位です。では、なぜ私立中学を選択する子どもが多いのでしょうか。

高知県のトップ高校は私立

私立中学への通学率を考える際に重要になるのが、公立高校のレベルです。多くの地方都市では「トップ校」は公立高校であるため、わざわざ私立中学に入学する必要がないと考える家庭が少なくありません。

ところが高知県でトップ校とされているのが、土佐高等学校や土佐塾高等学校などの私立高校です。優秀な子どもをハイレベルな高校で学ばせたければ、私立中学に入学させる必要があります。トップ私立校は高校募集もあるものの、人数はそれほど多くありません。したがって、ハイレベル校への切符を勝ち取るための主戦場が中学受験というわけなのです。このあたりの事情は東京に似ています。

現在は学力レベルが高い公立高校もあるものの、高知県で育った親の多くは「優秀な子どもは私立」という認識があるようです。私立校には長年蓄積した実績とノウハウ、信頼があります。ハイレベルな私立高校は高校時の募集が少ないため、中学から私立中学への進学を選択する子どもが多いようです。

高知県民は働き者&女性が自立している

私立中学の通学率が高い高知県ですが、大学進学率は52.52%と全国平均を下回っています。高校卒業後に浪人や無職状態になる割合も全国平均より低い傾向です。

高校卒業後に働かない人の割合
・全国平均4.64%
・高知県3.64%
出典:文部科学省「学校基本調査/令和2年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校《報告書掲載集計》 卒業後の状況調査 高等学校 全日制・定時制」より筆者算出(小数点第3位を四捨五入)

高校卒業後に働かない人の割合が少ない理由として、浪人生が少ないことも挙げられますが、高知県では多くの人が「働くこと」を重視しているからとも考えられます。それを表しているのが高知県の女性の労働力率の高さです。

15〜64歳女性の労働力率
・全国平均67.3%
・高知県72.1%
25〜44歳女性の労働力率
・全国平均75.6%
・高知県83.3%
出典:厚生労働省雇用均等・児童家庭局

高知県の女性は高い労働力率を誇り、子育て中に働く女性が少なくありません。一般的に日本の女性の労働力率は、「M字カーブ」を描くとされています。アルファベットのMのように、30代から40代の子育て世代の女性が一線から退くのです。ですが、高知県ではM字をほとんど描いておらず、子育て中も働き続けていることが推測できます。

また帝国データバンクの調査によると、高知県の女性社長の割合は全国有数。全国平均は8.0%ですが、高知県は9.9%。統計データからも高知の女性のたくましさが伝わってきます。

伝統ある広島大学を擁する広島県の中学受験

広島市
広島市はじめ、圏内に4つの広大附属中学を擁する広島県(画像素材:PIXTA)

広島県の私立中学通学率および、大学進学率の高さは全国屈指。私立中学通学率は9.98%で6位、大学進学率は61.35%で5位です。

広島県の私立中学への通学率の高さとともに注目すべきは、ハイレベルな国立中学の多さです。広島県内には4つの広島大学附属中学(広島大学附属中学校・広島大学附属東雲中学校・広島大学附属三原中学校・広島大学附属福山中学校)があり、いずれも質が高い教育を提供しています。広島県の国立中学への通学率は1.66%、全国平均は0.86%と約2倍となっています。

私立中学の通学率の高さは、国立中学の多さと倍率の高さに関係していると言えるでしょう。広島県の国立中学の倍率は5倍から10倍と非常に狭き門。国立中学の合格を目指しながら、トップ私立への合格も目指す子どもが多いようです。

福岡県はハイレベル公立高校が多く、私立中学受験組は少ない

福岡県の私立中学通学率は5.32%で全国14位です。私立中学受験といえば都市圏に多い傾向ですが、宮崎県や佐賀県、長崎県などの九州各県よりも低い通学率です。

【九州地方】 私立中学に通う 子どもの割合が多い都道府県ランキング
出典:文部科学省「学校基本調査/令和2年度 『75 学年別生徒数』」より筆者算出(小数点第3位を四捨五入)

福岡県にはレベルの高い私立中学および国立の中高一貫校が多くあります。私立の久留米大学附設中学校に福岡大学付属大濠中学校、国立の福岡教育大学附属中学校などです。一方、高校は最上位校1校を除くと公立の強さが目立ちます。つまり私立中学には通わず、公立中学からレベルの高い公立高校を目指す子どもや保護者も少なからず存在すると考えられます。

まとめ

私立中学への通学率をひもとく中で、各地方によって異なる子どもの受験事情が見えてきました。あなたの住んでいる地域の受験事情はどうなっているでしょうか。これを機会にぜひリサーチしてみてくださいね。

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