リモートワークのメリット・デメリットとは? 働き手と企業の両方から考える

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今や日常光景となったリモートワーク。ここ数年で働き方が大きく変わったと感じる人も多いのではないでしょうか。政府が推進するリモートワークは、コロナ収束後も多くの業種で継続が見込まれます。

今回は、リモートワークのメリット・デメリットについて働き手・企業2つの視点から考察します。

そもそもリモートワークとは?

まずは、リモートワークの定義や以前から知られていた「テレワーク」との違いについて改めて解説します。

リモートワークとは何か

リモートワークはremote(=遠隔・遠い)とwork(=働く)を組み合わせた言葉です。その名の通り、勤務先のオフィスではなく、自宅やコワーキングスペース、サテライトオフィス、カフェなどで仕事をするという働き方を指します。

複数人で会話できるテレビ電話やチャットツールなどを駆使して、離れていても出社しているときと同様に仕事が行えます。

テレワークとはどう違う?

tele(=離れた)とwork(=働く)を組み合わせたのがテレワーク。リモートワークと同じく、オフィスから離れた場所で働くことを指す言葉です。しかし、歴史はこちらの方が古く、1973年にアメリカの物理学者が提唱したことから広まりました。

テレワークには以下のような定義が示されています。

「テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。」

出典:一般社団法人日本テレワーク協会 テレワークとは

また、テレワークにはいくつか種類があります。自宅を仕事場所とする「在宅勤務」や新幹線・飛行機など移動中に行う「モバイルワーク」、サテライトオフィスでの「サテライト」やコアワーキングスペースでの「コワーキング」などもテレワークの一種です。

リモートワークのメリット

リモートワークは、働き手と企業双方にメリットをもたらします。具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか。

通勤にかかる時間やストレスの削減

通勤ストレスからの解放がリモートワークの最大の魅力
通勤ストレスからの解放がリモートワークの最大の魅力(画像素材:PIXTA)

まず挙げられるのが、通勤にかかる時間やストレスの削減です。リモートワークの導入に伴い、出社日が減った、もしくは出社の必要がなくなったことで、多くの人が通勤時のストレスから解放されたと感じています。

ザイマックス総研が2019年6月4日に発表した「通勤ストレスがワーカーの満足度に与える影響」によると、首都圏在住のワーカーの平均通勤時間は49分。通勤時間が長ければ長いほどストレスが増すことがわかりました。

さらに通勤ストレスは、生産性やエンゲージメント(会社への愛着心)といった仕事の質にもマイナスの影響を与えることがわかっています。

出典:ザイマックス総研 通勤ストレスがワーカーの満足度に与える影響

通勤ラッシュ時の電車を利用せずに済むという点も大きなメリットです。満員電車がもたらすストレスについても、新型コロナウイルス流行以前から問題視されていました。

ワーク・ライフ・バランスの向上

リモートワークでは、自分のライフスタイルに合わせた働き方を実践できるのもメリットの一つです。時間や場所の自由度が高く、柔軟な働き方ができるリモートワークなら、育児や介護との両立も可能になります。

このように「仕事と生活の調和」をはかることを、ワーク・ライフ・バランスと呼びます。リモートワークは、一人一人がやりがいや充実感を感じながら働きつつ、充足した家庭・地域生活も営める、多様性を実現する働き方なのです。

コストの削減

リモートワークを導入することで企業側が得られるメリットの一つが、コストの削減です。

たとえば、通勤する社員の割合が減ったことを受け、通勤手当を廃止し交通費を実費支給に切り替えることを検討している企業も出てきています。

また、すべての社員にワークスペースを用意する必要がなくなるため、オフィスの縮小による賃料のカットも可能です。近年では、誰でも利用できる自由なデスクを置く「フリーアドレス制」を導入する企業も増えています。

優秀な人材の確保

優秀な人材確保は企業にとっての生命線
優秀な人材確保は企業にとっての生命線(画像素材:PIXTA)

優秀な人材の確保もまた、リモートワークの大きなメリットです。

従来の働き方では、仕事への意欲や能力が十分であっても、家庭の事情などで休職・離職を選択せざるを得ない人が少なくありませんでした。

さらに、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、リモートワークを行う企業に転職を希望する人も増えています。

リモートワークを導入すれば、ワーク・ライフ・バランスを重視する優秀な人材の離職を防ぎ、フルタイム制では就業がかなわなかった人材の発掘も可能です。

生産性の向上

生産性の向上も、リモートワークの見逃せないメリットです。

リモートワーク導入に伴い、多くの企業が資料・書類のデジタル化や業務プロセスの見直しを行っています。従来の働き方では見逃されていた無駄を取り除けば、生産性の向上が期待できるでしょう。

また、リモートワークは社員のモチベーションアップ、ひいては生産性向上に一役買っています。

「人間関係などのストレスに悩まされず、自分のペースで仕事に集中できる」「無駄な会議が減った」など、これまでの仕事で感じていたフラストレーションが取り除かれたことが大きな要因です。

リモートワークのデメリット

一方、リモートワークにはどんなデメリットがあるのでしょうか。ここからは、リモートワークのデメリットを働き手側・企業側の目線で考察します。

コミュニケーション不足になる

コミュニケーション不足から働き手の孤立感を招くことも
コミュニケーション不足から働き手の孤立感を招くことも(画像素材:PIXTA)

まず挙げられるのがコミュニケーション不足の問題です。

同僚や上司と対面する機会が減ることで、チーム内における信頼関係の構築が以前より難しくなります。コミュニケーション不足により、意思疎通や相互理解の齟齬が起こり得るためです。

また、上司や同僚の目が届かない場所での仕事は、モチベーションの低下や、孤独感による生産性の低下を招くおそれもあります。

オンオフの切り替えが難しい

仕事のオンオフの切り替えが難しいのも、リモートワークにおけるデメリットの一つです。

特にそのおそれがあるのは在宅勤務。これまではリラックススペースだった自宅では、仕事とプライベートの切り替えが難しくなります。

多いのは、仕事に手が付かずついサボってしまったり、反対に仕事を切り上げられず出社時よりも労働時間が増えたりするケース。時間管理・自己管理はリモートワークの大きな課題といえるでしょう。

従業員の勤怠管理が難しい

リモートワークにおける会社側のデメリットの一つが、従業員の勤怠管理の難しさです。

一人一人が離れた場所で仕事をするリモートワークでは、始業・終業時間に加え、在席中・離席中などの確認が取りづらくなります。加えて、リモートワーカーとオフィスに出社する従業員が分かれている場合、従来の勤務評価では不公平感が募るおそれもあります。

これらのデメリットをカバーするためには、リモートワーク導入に応じて勤怠管理ルールや評価制度を見直す必要があるでしょう。

情報漏えいのリスク

情報漏えいのリスクも、リモートワークでは留意しておきたいデメリットです。

仕事でのやり取りがインターネットを通じたものになるため、メールの誤送信、マルウェアやフィッシング詐欺などでの情報漏えいのリスクが懸念されます。特に、こうしたリモートワークを狙ったサイバー攻撃は近年増加しているため、適切な対策は大変重要です。

また、社用スマホやタブレットを導入している場合も、紛失による個人情報の漏えいが心配されるところです。

仕事の進捗状況の管理が難しい

仕事の進捗管理も、リモートワークにおける大きな課題の一つです。

働き手同士が直接コミュニケーションを取れないリモートワークでは、プロジェクト・タスクの具体的な進捗が把握しづらく、進捗管理が難しくなります。

このデメリットに対処するためには、定期的な進捗確認ミーティングを行う、タスク管理ツールを導入するなど、リモートワークならではの管理方法を検討しなければなりません。

まとめ

この記事では、リモートワークのメリット・デメリットを働き手・企業の視点から解説しました。リモートワークのメリットを重視し、今後も導入を継続する企業は多い見通しです。

今回解説した内容を意識しつつ、リモートワークを活用して働きやすい環境を実現してみてはいかがでしょうか。

(最終更新日:2022.01.18)
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