日本の一昔前の住宅スゴロクといえば、賃貸から分譲マンションを買って、“上がり”は庭付き戸建てを手に入れることでした。日本の場合は「土地神話」が根強いという背景もあったでしょう。しかし近年では、若い世代が賃貸からいきなり庭付き戸建てを手に入れたり、シニア層が庭付き戸建てから都市部のマンションに住み替えたりと、選択肢は多様になっています。どんな住宅をどういった人が買っているのか、実態を見ていきましょう。

【フラット35】で住宅を買った人、住宅の種別でどう違う?

公的金融機関(住宅金融支援機構)と民間金融機関が提携して提供されている住宅ローン【フラット35】。最大の特徴は、35年間などの長期間で金利を固定する「全期間固定金利型」であることです。

住宅金融支援機構では、【フラット35】の利用者の実態を調査しています。「2020年度 フラット35利用者調査」から、新築マンションや土地付き注文住宅などの物件の種類別にプロフィルをまとめたのが下表です。

この分類では、「注文住宅」は所有している土地に注文住宅を建てる(いわゆる建て替え等)場合が該当しますが、「土地付注文住宅」は土地を買って注文住宅を建てる場合が該当します。

2020年度 フラット35利用者調査
住宅金融支援機構「2020年度 フラット35利用者調査」より筆者作成

かつてのスゴロクで“上がり”だった新築の戸建て住宅系では、「土地付注文住宅」の平均年齢が37.6歳とほかの種別より若いことが分かります。「土地付注文住宅」の年齢の内訳は、30代が47.8%と半数近くに達し、次いで40代の21.1%となり、賃貸からすぐに土地を買って注文住宅を建てた人も多いと思われます。

一方、「新築マンション」の平均年齢は42.8歳で、「注文住宅(建て替え等)」に次いで年齢が高くなっています。その内訳は、30代が34.0%、次いで40代の24.5%、50代の17.2%と、40・50代も多くなっています。賃貸脱出組に加えて、マンションからマンション、戸建てからマンションなどの買い替え層、セカンドハウスなどの買い増し層も含まれると見てよいでしょう。

マンションか戸建てか(中古を含む)で明確に違いが出たのは、「世帯人数」です。平均人数が3人台では戸建て系、2人台ではマンション系に分かれます。このことから、子育て家庭が戸建てを志向すると言えそうです。また、新築か中古かで明確に違いが出たのは、「年収倍率」(取得額÷世帯年収)です。中古を選択した人の年収倍率は5倍台に抑えられ、新築を選択した人の年収倍率は7倍前後になりますから、その差はかなり開いています。

筆者は「世帯年収」(本人および収入合算者の年収合計)に最も注目しました。世帯年収が最も高いのは、新築マンションでした。一般的に土地付注文住宅=世帯年収の高い層の選択というイメージがありますが、近年の新築マンションの価格高騰を受けて、土地付注文住宅と新築マンションの取得額にあまり差がない状態になっています。今回の結果を見ると、世帯年収の高い人が「新築マンション」を買い、借入額を増やして年収倍率を上げて頑張った人が「土地付注文住宅」を買う、といったような構図が見え隠れします。

世帯年収1,000万円以上が2割の新築マンション購入層

では、それぞれの世帯年収の内訳を見てみましょう。

フラット35利用者の世帯年収
住宅金融支援機構「2020年度 フラット35利用者調査」より筆者作成

新築マンションでは、世帯年収1,000万円以上(1,200万円未満と1,200万円以上の合計)の占める割合が20.0%と高くなっています。世帯年収1,000万円以上が次に多いのは中古マンションの9.8%で、土地付注文住宅では8.2%に留まりました。

実は、これには地域分布の偏りが影響していると考えられます。新築マンションでは首都圏の購入者が49.8%を占めるのに対して、土地付注文住宅では三大都市圏を除くその他の地域が49.8%を占め、首都圏は24.7%に過ぎません。首都圏に、新築マンションの供給も世帯年収の高い層も多く集まっている、という影響もあるのでしょう。

余裕派の新築マンション、頑張り派の土地付注文住宅?

もう少し詳しく見ていきましょう。地域別の平均値を比較したのが次の表です。地域別に比べてみると、「取得費」や「融資額」は土地付注文住宅のほうが高くなっています。例えば、首都圏で比べると土地付注文住宅の取得費は5,162.0万円、融資額は4,369.6万円ですが、新築マンションの取得費は4,992.7万円、融資額は3,954.7万円ですので、いずれも土地付注文住宅のほうが高くなっています。

一方で、「世帯年収」と「手持金」を見ると、三大都市圏ともに新築マンションのほうが高いことが分かります。手持金が占める資金調達割合(いわゆる頭金の占める割合)では、新築マンションがおおむね17%前後(首都圏と近畿圏)であるのに、土地付注文住宅は10%前後と低くなっている点に注目しました。

少し乱暴な言い方ですが、40代の相対的に世帯年収の高い層が、一定の自己資金を用意して購入しているのが「新築マンション」で、30代が自己資金1割程度で頑張って(高い年収倍率で)購入しているのが「土地付注文住宅」といった、購入者像の違いが見えてくるようです。

フラット35利用者調査(地域別)
住宅金融支援機構「2020年度 フラット35利用者調査」より筆者作成

戸建ては家族のため、マンションは資産価値も意識

ところで、住宅を買う理由はどういったことでしょうか。

リクルートが首都圏の新築マンションと新築分譲戸建てを契約した人に調査したところ、回答率12%を超えて上位に挙がったのは次のようなものでした。

マンション契約者の購入理由

一戸建て契約者の購入理由
リクルート「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査」および「2020年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査」より筆者作成

マンションでも戸建てでも、トップは「子どもや家族のため、家を持ちたい」です。ただし、戸建てでは59.8%と圧倒的に強い理由になっています。家族のために「もっと広い家を」、「気兼ねがない家を」と家族重視の理由も並んでいます。戸建ての場合、実需と言われる実際の居住者が購入する事例が大半なので、家族重視の傾向が強いのでしょう。

これに対して、マンションでは「家族のため」は38.1%に留まり、戸建てではそれほど多くなかった「資産を持ちたいから」などが上位に来るなど、資産性も意識していることが分かります。投資目的というよりも、万一の際にマンションはキャッシュ化しやすい、という見方をしているのでしょう。

実際に家族と住む人が買う新築戸建て系と資産価値も意識した人が買う新築マンションという違いが、世帯年収や手持ち資金、年齢などの違いに表れているのかもしれません。

こうした状況は今後変わっていく可能性もあります。新築マンションの供給量は縮小傾向で、価格は当面高値横ばいと見られています。一方、注文住宅などの戸建ては、カーボンニュートラルを目指す政府の政策が、最新の省エネ基準の適用義務化や太陽光発電システムの設置推奨などに向かうとされています。新築マンションが今より価格上昇が見られず、新築の戸建て系(注文住宅や分譲戸建て)で価格が上昇する可能性もあり、購入者の選択は変わっていくかもしれません。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア

おすすめ記事