大手住宅メーカーを中心とする業界団体の住宅生産団体連合会では、毎年「戸建注文住宅の顧客実態調査」を実施しており、このほど、最新版の2020年度版の結果が公表されました。都市圏別の特徴を見ることができるようになっていて、同じ注文住宅といっても、都市圏によってさまざまな違いがあることが分かります。

名古屋圏は東京圏より世帯主の年齢が5歳若い

大手住宅メーカーで戸建注文住宅を建てた人の平均像は図表1にある通りです。特に世帯主年齢、世帯年収、建築費などに大きな差があります。

世帯主年齢は東京圏が42.1歳と最も高く、名古屋圏が37.0歳と一番若くなっています。両者には5歳以上の開きがあり、大阪圏は39.8歳、地方都市圏は38.1歳、とほぼ中間に位置します。

世帯年収は東京圏が1,027万円と最も高く、次いで大阪圏が1,022万円と僅差で追っています。それに対して、名古屋圏は878万円と150万円ほど少なくなっていて、地方都市圏の904万円より低い水準です。
建築費をみても、建て替えを含めた全平均は東京圏4,083万円、大阪圏3,970万円に対して、名古屋圏は3,563万円と比較的安い価格帯で注文住宅を建てています。

戸建て注文住宅の平均顧客像
出典:一般社団法人住宅生産団体連合会「2020年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」

名古屋圏では9割近くが変動金利型を利用している

都市圏別の違いを整理すると、名古屋圏では注文住宅の建築費が比較的安いこともあって、30歳代後半の若くて、まだ年収がさほど高くないうちに家を建てています。反対に東京圏では家を建てられるのは40歳代まで待たなければならず、年収も1,000万円以上必要などの違いが浮き彫りになっています。

資金調達の手段として住宅ローンを利用する人が多いのですが、その住宅ローンの金利タイプの利用状況にも大きな違いがあります。

やはり最も特徴的なのは名古屋圏です。

利用者の全国平均では全期間固定金利型が11.2%で、変動金利型が79.4%、固定金利期間選択型が8.4%などとなっています。都市圏別にみると、名古屋圏では、全期間固定金利型はわずか3.4%にとどまり、変動金利型が86.4%と9割近くに達しているのです。それに対して、大阪圏では全期間固定金利型の利用率が15.7%と、三大都市圏のなかで最も高くなっています。

長期優良住宅などの認定住宅の割合が高い名古屋圏

大阪圏では多少金利が高くなっても、金利リスクのない全期間固定金利型を利用する人が比較的多く、堅実な考え方が強いのかもしれません。一方、名古屋圏では多少のリスクは承知で、最も金利の低い変動金利型を利用するという実利派が多いのではないでしょうか。(あくまでも筆者の想像です。)

名古屋圏の人たちは、全国的にみると少ない予算で、金利が低く、返済負担が少なくてすむ変動金利型を利用して注文住宅を建てる人が多いわけです。でも、だからといって、建てる住宅のレベルが低くなるのかといえば、決してそんなことありません。限られた条件のなかでも、シッカリといい住宅を建てている人が多いようです。

図表2にあるように、長期優良住宅の認定を受けている割合は名古屋圏では93.0%です。全国平均の84.3%、東京圏の78.6%、大阪圏の87.4%を大きく上回っているのです。

長期優良住宅というのは、数世代にわたり住宅の構造躯体を使用できることなどの厳しい基準を満たす必要がありますが、そうした長持ちする住まいを建てる人が多いわけです。

長期優良住宅、低炭素住宅の適用
出典:一般社団法人住宅生産団体連合会「2020年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」

住宅性能表示制度の利用率も名古屋圏がトップ

長期優良住宅の認定制度とは別に、住宅の基本性能を確認するための手段として、住宅性能表示制度があります。これは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に従って実施されているもので、この制度を利用するかどうかは任意になっています。建売住宅などでは分譲会社などが決めますが、注文住宅では施主である購入者が住宅メーカーや工務店と相談して決めることになっています。

全国一律の基準で住宅の性能を比較検討できるようにするために実施されており、建築士などの専門家が評価しますから、この制度を利用して、高い等級を取得しておくことが、居住性や安全性の確保につながります。

その住宅性能表示制度の採用率をみると、全国平均は66.2%で、東京圏は62.8%、名古屋圏が72.8%、大阪圏71.7%となっています。認定住宅同様に、名古屋圏が最も高くなっています。それだけ建てる注文住宅へのこだわりが強いといっていいのではないでしょうか。

住宅ローン減税額が最も多いのは価格の高い東京圏

都市圏によって建築費に差がありますから、住宅ローンの利用額も異なり、その結果、住宅ローン減税の減税額にも差が出てきます。

2020年度に住宅を建てた人の場合、ローン減税額は一般の住宅だと13年間で最大480万円、長期優良住宅などの認定住宅で600万円でした。この上限額の範囲内で、ローン残高や所得税・住民税の納税額によって減税額が決まってきます。

そのため、図表3でも分かるように、全国平均は417万円ですが、都市圏別にみると建築費が高く、世帯年収も高い東京圏が434万円と一番多くなっています。次いで大阪圏420万円、名古屋圏374万円という結果でした。

減税額帯別にみると、東京圏では500万円以上が34.0%で、400~500万円未満が25.8%などとなっています。それに対して、名古屋圏では300~400万円未満が29.6%と最も多く、次いで200~300万円未満が22.8%で、500万円以上は18.8%にとどまっています。

建築費が高く、世帯年収も高い東京圏では、それだけローン利用額が増え、税負担も多いため、返ってくる税金も多くなるわけです。反対に、建築費が比較的安く、世帯年収も低い名古屋圏では、その分だけ減税額が少なくなるということです。

住宅減税の減税額
出典:一般社団法人住宅生産団体連合会「2020年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」

贈与利用率は名古屋圏が高いが贈与額は少ない

住宅取得に当たっては、親などから贈与を受ける人が少なくありません。特に、現在は住宅取得資金として両親や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合には、最高1,500万円まで非課税になる特例が実施されています。これを利用して、家を建てている人が少なくありませんが、その利用状況にも都市圏別の違いがあります。

全国的には、贈与を受けている人の割合は図表4にあるように15.8%です。都市圏別にみると、東京圏は13.8%で、名古屋圏が19.3%、大阪圏が17.6%となっています。

しかし、贈与額をみると全国平均は1,535万円に対して、東京圏1,527万円、名古屋圏1,389万円、大阪圏1,635万円となっています。一番多い大阪圏と名古屋圏との間には250
万円ほどの差があります。名古屋圏は贈与を受ける割合は高くても、贈与額そのものは全国平均と比べると多くないのが実情のようです。

贈与有の場合
出典:一般社団法人住宅生産団体連合会「2020年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」

上手に地域特性に合った住まいを建てる

注文住宅の建て方には、さまざまな面で地域差があります。それぞれの実情に合った価格帯、資金の調達方法、建物の性能への考え方などはかなり違ってきます。

あくまでも全体的な傾向ですから、必ずしもそれにこだわる必要はありませんが、データを参考にしながら、上手に地域特性に合った住まいを建てていただきたいものです。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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