コロナ禍でも住宅の取得意欲はそれほど落ちていません。リモートワークが普及したことで、郊外への転居や戸建てなどへの住み替えなどの新しい需要も生まれ、住宅の売買が活発になっています。一方で、住宅市場の品薄感も指摘されています。今の市況で住宅を買うなら、どういった点に気を付ければよいのでしょう。

住宅市場は首都圏でも近畿圏でも品薄状態

コロナ禍において、特に最初の緊急事態宣言が出された2020年4~5月は、新築のモデルルームや不動産会社の営業店の休業などが相次ぎ、一時的に新築住宅の供給減少や中古住宅の媒介減少などがありましたが、その後、住宅市場は元に戻りました。

と言っても、新築マンションの供給量は、人口や世帯数の減少などにより縮小傾向にあります。2021年の新築マンションの販売戸数は、首都圏で約3.2万戸、近畿圏で約1.8万戸と予測され、元に戻ったとはいえ2019年と同程度で横ばいが続く見込みです。

一方で、中古マンションの人気が高まっています。新築・中古ともに戸建てにも安定した需要が見込まれます。

東日本不動産流通機構(以下、東日本レインズ)の「季報Market Watchサマリーレポート2021年7~9月期」を見ると、首都圏の中古マンション、中古戸建てともに、2020年4~5月で大きく落ち込んではいるものの、契約が成立した件数(成約件数)は比較的堅調な状況です。
直近の7~9月は、もともと成約件数の少ない夏の時期であることに加え、デルタ株の感染拡大による4度目の緊急事態宣言の影響が見られるものの、中古マンションでは2018年同期程度、中古戸建てでは2018・2019年同期以上の成約件数になるなど、コロナ前の市場規模と同程度となっています。その一方で、物件情報を新たに登録する新規登録件数は減少傾向が続いています。

これは、コロナ禍で売る気になれないといった気分的なことや、新型コロナウイルス感染のリスクを考えて外部の人が自宅を見学に来るのを避けるといったことなどが影響していると考えられます。新たな売り物件が少ないことから、市場に出回っていた在庫物件が売れたために、市場の在庫戸数も減るという状況になっています。

出典:東日本レインズ「季報Market Watchサマリーレポート2021年7~9月期

こういった傾向は、首都圏だけではありません。近畿圏不動産流通機構(以下、近畿レインズ)の「近畿圏不動産流通市場の動向について(2021年7~9月期)」で、近畿圏の中古マンションと中古戸建ての市場を見ても、同じような品薄の傾向が見られます。

つまり、大都市圏では売買の対象となる住宅の数が減少して、品薄状態になっているということです。

住宅市場が品薄の場合、早く決断することが必要に

では、品薄の住宅市場で注意したい点は、どういったことでしょうか。

住宅の買い手は減っていませんので、自分が買いたいと思う住宅に対して競争相手が出てくる可能性が高くなります。立地や間取りなどの条件の良い住宅であれば、じっくり検討している間にほかの人が買ってしまうということが起こりえます。それを避けるためには、買うかどうか「早く決断をする」ことが大切です。

不動産会社の担当者も「急いで結論を出してください」と言うかもしれません。これは、競争客がいて本当に急いだほうが良い場合もあれば、早く成約させるための常套句の場合もあります。早く結論を出そうとして焦ってしまい、後悔するようなことは避けたいものです。

早く結論を出すためにはノウハウがありますので、説明していきましょう。

希望条件を整理して、優先順位をつけておく

結論を出せるかどうかは、マイホームでどんな生活がしたいかイメージができていて、そのための条件が整理されていることかがカギになります。家を探し始める段階から、希望条件を具体的に挙げておき、優先順位をつけるようにしましょう。

希望条件というと、「日常の買い物に便利」あるいは「家の近くに食料品や日用品が買える店がある」といった条件を挙げる人が多いでしょう。ところが、週末に車で買い出しに行くのか、毎日帰り道に食料品などを買うのか、それぞれの生活スタイルによって店舗の条件も変わります。できる限り具体的に条件を挙げることが大切です。

※筆者作成

希望条件を具体化していくと、例えば「通勤時間が40分程度」といった条件をもう一歩踏み込んで、40分以内で通勤できる沿線・駅まで調べるようにすると、見落としていた駅に気づく場合もあります。予算や広さの希望条件が、見落としていた駅ならクリアしやすいといったこともありますから、できるだけ希望条件を具体的にすることをおすすめします。

また、当初の希望条件は、物件をいくつか見て不動産会社のアドバイスを聞いたりするうちに、変わる場合もあります。マンションで「リビング12畳以上」の条件が、「リビング10畳以上+隣室と一体化可能」など、代替案がある場合も多いので、柔軟に希望条件を見直すようにしましょう。

また、「駅に近い」ことと「閑静な住宅地」であることは、まれに両立するエリアもありますが、一般的には両立しません。どちらも魅力的な条件ですが、自分にとってはどちらがより重要なのかを見極める必要があります。

そのうえで、絶対に譲れない条件は何かを考えて、優先順位をつけておきましょう。通常は、すべての希望条件を満たす住宅は見つかりません。譲ってもよい条件にこだわりすぎて、絶対に譲れない条件を譲ってしまう人もいます。絶対に譲れない条件は1つでも譲らない、あったらよい条件はプラス評価の材料にするなど、希望条件をどのように判断するかがイメージできれば、「早く結論を出す」ことができるようになるでしょう。

最低でも3物件は見学して比較検討しよう

早く決断するためには、ある程度の物件を見学して、比較検討する経験を積む必要があります。実は、1物件だけ見て決めてしまう人も多くいます。リクルートの調査結果によると平均見学数は3.4件で、少なくとも2~3物件は見学している人が多いことがわかります。複数物件を比較検討することで得られる情報量は知識を増やしてくれます。複数物件を見学して、物件の担当者にいろいろ質問をして情報を引き出し、積極的に購入に関する知識を増やすことが大切です。

出典:リクルート「2020年 首都圏 新築マンション契約者動向調査」

たくさん見学したらそれだけ情報が集まるから、「数多く見学したほうがよいか」というと、そうでもありません。以前出会った人は50物件も見学し続けて、住宅評論家のようになってしまい、収拾がつかなくなっていました。今はインターネットなどで見学前に情報を収集することもできますから、ある程度絞り込んで見学に行き、その中から納得できる住宅に決めるのがよいでしょう。

また、品薄の市場なら「売り出す物件が増えるまで待とう」と考える人もいるかもしれません。新型コロナウイルスの感染拡大が緩和されて経済活動が元のように戻れば、住宅の品薄状況も改善されるでしょうし、ウィズコロナの生活はしばらく続きそうですので、外的要因を予測するのは難しい状況です。家を買おうと思った理由が、家族が増えたり子どもが成長したりといったことであれば、それぞれの家庭の事情が何よりも優先されます。家族が快適に過ごせる家を手に入れるタイミングを逃さないほうがよいでしょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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