長期化するコロナ禍でも住宅購入意欲は変わらず。でも、「家の定義」は変化?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が今なお続き、その影響が長期化しています。「先の見えない状況下で住宅購入をする人はそう多くないのでは?」と、住宅市場への影響を気にしている人もいるのではないでしょうか? 最近の調査結果なども参考にして、コロナ禍の住宅市場について考えてみましょう。

新型コロナの流行長期化でも住宅の購入意欲は落ちていない?

野村不動産ソリューションズ株式会社が2021年7月20日~8月1日に実施した「住宅購入に関する意識調査(21回目)」を見ていきましょう。

流行の長期化で「購入の検討を休止中」という人が29.6%いますが、「コロナ前から引き続き探している=影響していない」という人が過半数の53.6%に達しています。また、流行の長期化によって購入の検討を休止した人もいれば、いったん休止していた購入の検討を再開した人もいます。コロナの流行が長期化したからと言って、住宅購入の意欲が落ちているわけではないのです。

【図表1】お住まいの購入検討に変化はありましたか。

出典:野村不動産ソリューションズ「住宅購入に関する意識調査(21回目)」

また、リノベる株式会社が実施した「単身世帯の中古住宅購入検討者への意識調査」でも、約4割が住宅購入に対して前向きで、そのうち約2割が購入したり検討を始めたりといった行動を起こしているという結果になっています。

 

出典:リノベる「単身世帯の中古住宅購入検討者への意識調査」

コロナ禍でも住宅の購入意欲が続く理由とは

コロナ禍でも住宅購入への意欲が継続する要因はいろいろあります。

まず、住宅購入を思い立つのが、「結婚」や「子どもの誕生」、「子どもの進学」などのライフステージの変化、または「就職」や「転勤」など、勤務地の変化によるところが大きいことも要因の一つです。新型コロナの流行が長期化しているといえども、ライフステージは変化するので、生活の基盤となる住まいを家族の成長や変化などに応じて住み替えようという需要が常にあるわけです。

さらに、おうち時間が長くなったこともあって、自宅の居住環境に対する関心が高まっています。その影響で、住み替えを思い立つ人もいます。

「脱・賃貸」も要因の一つです。特に、コロナ禍でリモートワークが推奨され、在宅勤務をする人が増えました。自室で仕事をしたりオンライン会議に参加したりしてみると、近隣の騒音が気になるという理由で、賃貸住宅から遮音性や断熱性などの高い持ち家に住み替える人が多かったといわれています。

また、前出の「単身世帯の中古住宅購入検討者への意識調査」を見ると、住宅購入に前向きになった人は、「中古住宅購入」への興味が高まったと約8割(「非常に高まった)31.8%+「高まった」56.1%)の人が回答しています。「中古住宅を購入したい(した)理由」を聞くと、1位は「新築よりも費用を抑えられるから」(56.2%)で、2位が「同じ予算でも新築より条件(立地・間取りなど)の良い家に住めるから」(45.1%)でした。

このように、価格的に手が届きやすい中古住宅への興味が高まったことも要因の一つでしょう。コロナ禍で在宅勤務を経験したり、在宅時間が長くなったりして、住まいの広さや部屋数のニーズが高まっています。今の住まいより広い家を手に入れるのに、中古住宅なら無理をせずに買えるという背景もありそうです。

新型コロナの感染拡大で、「家の定義」が変化

ほかにも、「家の定義」が変化したことも指摘されています。

株式会社カウネットが「<ウィズコロナの時代>これからの生活様式(家での過ごし方編)」と題した調査を実施したところ、新型コロナウイルス感染拡大前後で「家」の定義が変わったと回答したのは、在宅勤務している人で46.4%、在宅勤務していない人で22.2%でした。

出典:カウネット「<ウィズコロナの時代>これからの生活様式(家での過ごし方編)」調査

「家の定義」が変わった理由は、在宅勤務をしている人を中心に「家で仕事をするようになった」ことのほか、「家族・同居人と過ごす時間」や「家で食事をする回数」が増えたことが大きく影響しています。

出典:カウネット「<ウィズコロナの時代>これからの生活様式(家での過ごし方編)」調査

コロナ禍が長引くことで、家は仕事をする場であったり、頻度高く家族一緒に食事をする場であったり、楽しむことができる場であったりと、調査結果から家での過ごし方が変わってきた様子が分かります。

また、アルヒ株式会社とクックパッド株式会社がリリースした『料理と暮らし白書2021』によると、「次に住まいを選ぶ時」に住宅に求める条件が、「今の住まいを選んだ時」と比べて、重視度合いがかなり変わっていることが分かります。特に以前はそれほど重視していなかった「キッチンの使いやすさ」や「防音性・遮音性」、「家事動線のスムーズさ」などを重視する度合いが高くなるなど、住まいに対する意識の変化が見て取れます。

Q.住まいを選ぶ際、「住宅に求める条件」は?(複数回答)

出典:アルヒ株式会社・クックパッド株式会社による『料理と暮らし白書2021

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家をどう定義するかが、それぞれの家庭の課題に

私たちはこれまでに経験したことのないほど、暮らし方の変化を長期的に強いられています。以前は仕事や勉強に疲れた体を休めたり、家族で団らんを楽しんだりするのが家の定義だったでしょうが、今は家で仕事や会議をしたり、オンライン授業を受けたり、適度な運動をしたり、レジャーを楽しんだりと、家庭の状況に応じてさまざまな機能が求められるようになっています。

一方で、家族の在宅時間が長くなったことで、全員が集まって食事をする回数が増えたり、洗い物や掃除の頻度が増えたりと、家事時間は長くなっています。小さな子どものいる家庭は、自宅学習が増えて育児の時間も長くなっているでしょう。最新設備やスマート家電を活用する、家事・育児動線を短くするなど、増える家事・育児の負担を軽減する機能も、これまで以上に住まいに求められています。

こうした新しい住まいへのニーズに優先順位をつけて、家庭ごとに「家の定義」を見直すことも大切なことでしょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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