昨年から続くコロナ禍において、私たちのお金に関する環境も大きく変化しました。「ボーナスが減ってしまった」という人もいれば、「飲み会や旅行の機会が減ってお金がたまった」という人もいるでしょう。自分のお金のことは自分が一番わかっていますが、気になるのはほかの人はどうなのか、ということ。今回はデータを基に家計のお金について見ていきましょう。

家計の金融資産は過去最高?

日本銀行が発表した4~6月期の資金循環統計によると、今年の6月末時点で家計が保有する金融資産の残高が前年から6.3%増加して1,992兆円となり、過去最高を更新しました。この結果を聞いて、どのような感想を持つかは人によってそれぞれでしょう。冒頭に述べたように、コロナ禍で収入が減った人は驚くかもしれませんが、資産が増えた人は逆に意外性がないニュースに映るかと思います。

(出所)※日本銀行「資金循環統計」のデータを基に株式会社マネネが作成

それでは、どのような理由で家計の金融資産が過去最高を記録したのか。内訳を見ていきましょう。まず「現金・預金」が前年から4.0%増加して1,072兆円となっています。これは季節要因やコロナ禍の影響もあり、夏季賞与が振り込まれたことや、外出自粛に伴い支出が抑制されたことなどが挙げられます。

内訳を見ていてもう1つ気になるのが、普通預金などが含まれる流動性預金に17兆円もの資金が流入した一方で、定期預金からは2兆円も流出していることです。定期預金から資金が流出するのはこれで22四半期連続です。

銀行預金には普通預金と定期預金があり、定期預金は引き出しに制限がかかっている代わりに、いつでも自由に引き出せる普通預金よりも金利が高いという特徴があります。しかし、現在は超低金利時代のため、定期預金であってもほとんど金利が付きません。そこで、引き出し制限のある定期預金から普通預金へと資金が移動しているのです。

次回は2,000兆円の大台に乗る可能性

6月末時点で1,992兆円まで積み上がった家計の金融資産ですが、このまま行けば次回(7~9月期)はついに2,000兆円の大台に乗るのかに注目が集まります。今回(4~6月期)の内訳をさらに見ていくと、株や投資信託といった、いわゆるリスク性資産への投資フローも増えました。株式などへは0.3兆円の純流入、投資信託へは1.2兆円の純流入となっています。

在宅勤務をする人が増えたことや、株高傾向を背景に余剰資金を投資に回す人が増えたと考えられますが、実は4~6月期は株式市場が横ばいの推移になっていることが下図からわかります。

(出所)※日本取引所のデータを基に株式会社マネネが作成

図からもわかる通り、9月に入り株式市場が急騰しましたので、7~9月期にリスク性資産が膨らみ2,000兆円の大台を突破する要因の一つになることが期待されます。

一方で、前述の通り、次回は夏季賞与などの一時的な支給がない期間であるため、その分の押し上げはなくなってしまいます。仮に7~9月期に大台を突破できなくても、足元では下図の通り賞与の額が減少傾向にありますが、国内の新規陽性者数も減少しており、ワクチン接種率も高まっていることから、年末にかけて国内経済が回復すれば、年末賞与が振り込まれるタイミングでの2,000兆円突破ということも考えられます。

(出所)※日本経済団体連合会のデータを基に株式会社マネネが作成

少しずつ世界の流れが変わってきている

家計の金融資産の動向を現預金、株や投資信託などのリスク性資産などの内訳に分解して見てきましたが、簡単にまとめると、外出自粛に伴い支出が減る一方で、臨時収入などもあり一部の資金が投資に回ったということでした。個人的には日本で投資をする人が増えることは良いことだと思っていますが、少しずつ世界の流れが変わってきていることには注意してほしいと思います。

たとえば、連日ニュースで「リーマンショックの再来か?」と報じられる中国不動産大手の恒大集団のデフォルト(債務不履行)問題、そして中国人民銀行が仮想通貨に関連する取引を禁止にしたことによって、株式市場やビットコインが大きく下落しました。また、欧米各国では目標としている水準よりもインフレ率が高まっていることから、経済支援の一環として行われていた金融緩和や財政政策の出口戦略を議論し始めており、世界中の投資家がどのタイミングでテーパリング(緩和の縮小)を開始するかに注目しています。

このように、アベノミクスやトランプ相場、バイデン政権誕生など、ずっと株式市場が堅調だった時期しか知らない投資経験が長くない個人投資家にとっては、未体験の相場展開が訪れる可能性もあります。

資産運用は基本から離れるべからず

なにも不安をあおろうとしているわけではありません。先ほど述べた通り、筆者は個人投資家が増えることは良いことだと思いますので、必要以上に大きなリスクを取って痛い目を見てほしくないのです。

それでは、どうすればよいのか? 答えは意外とシンプルだと思います。それは長期運用の基本である「長期・分散・積み立て」の3つのポイントを意識し、基本を忠実に守るということです。おそらく、今後は相場の動きも激しくなる局面が多々あるでしょう。投資をやっていれば株価の値動きに興味を持つのはわかりますが、値動きが荒くなってくるとついついリスクを取って勝負しにいきたくなってしまうものです。しかし、そのようなときは得てして良い結果は訪れません。

どれだけ相場が荒れても、その様子に興味を持つのは構いませんが、自分の投資行動は全く別物であると考えましょう。投資先がしっかりと分散され、かつコストの低い投資信託を、一定のタイミングで定額積み立てて投資をしていく。この基本に忠実に投資を続けることをお勧めします。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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