【比較検証】電気代・ガス代を計算するとオール電化はお得なのか

家を建てる際は、外観や部屋の間取り以外にも決めなければならない要素がたくさんあります。家のエネルギー設備をどうするかもその一つです。オール電化にするか、ガス併用にするかによって導入する設備も変わってきます。
また、光熱費を考慮してガス併用からオール電化へのリフォームを考えている人もいるでしょう。トータルに考えるとオール電化とガス併用はどちらがおすすめなのかについて、詳しく解説します。

オール電化とは?

住宅の購入や、リフォームを検討している際などにも耳にする「オール電化」ですが、そもそもどのようなものなのでしょうか。

オール電化とは、建物で使用するエネルギーをすべて電気で賄うことを指します。日常生活には、調理、照明、空調、給湯などのさまざまな設備が欠かせません。これらの設備を安定的に働かせるためにはエネルギーが必要です。オール電化住宅は、これらの生活に必要なエネルギー源をすべて電気に統一した住宅を指します。近年のエコブームや脱炭素化の動きのなかでオール電化を検討する人が増えています。

オール電化とガス併用の料金を比較

新築ではオール電化住宅が増えているものの、中古の物件ではガスを併用している住宅が多い状況です。光熱費は世帯人数、地域、使い方で大きく変わりますが、オール電化住宅と電気・ガス併用住宅の光熱費はどちらがお得なのでしょうか。

また、電力会社やガス会社もさまざまな試算を公表していて、混乱してしまいます。ここでは統計上の数字を示し、一つの判断材料を提示します。

エネルギー単価を比較

オール電化とガス併用のどちらがお得かを考えるうえで、まずはそれぞれの価格を比較してみましょう。ここでは思い切り単純化して、エネルギー単価で比較します。エネルギー単価とは、エネルギー単位ごとの価格のことですが、ここでは、消費電力(kW)に使用時間(h)を乗じて算出される消費電力量(kWh)を用いた1kWhあたりの価格を比較します。

石油連盟が試算している「1kWhあたりのエネルギー別単価比較」によると、エネルギー単価は以下の通りになります。

全国平均(2021年9月) エネルギー別単価比較<1kWh当りのエネルギー単価(税込み)>

灯油を1とした場合の比率
・プロパンガス(LPガス)…2.07
・都市ガス…1.32
・電気(夜間)…1.43
・電気(昼間)…3.25
・電気(従量電灯)…2.69
出典:石油連盟  1kWhあたりのエネルギー別単価比較

この単価には、電気、ガスともに基本料金が含まれないため、単純に単価だけで結論を出すことはできません。ただし、都市ガス、電気(夜間)、プロパンガス、電気(従量電灯B(※))、電気(昼間)の順に単価が安いのがわかります。

(※)一般の家庭向け電気料金プラン。

3人世帯の光熱費を比較

ここでは、3人世帯の1ヶ月あたりの光熱費をサンプルとして比較してみましょう。まずは、電気とガスを併用している一般家庭の光熱費を下記に提示します。

出典:総務省 家計調査(家計収支編)2020年

続いて、3人世帯のオール電化住宅の光熱費から電気代を見てみます。

出典:関西電力 オール電化の電気代平均額と節約方法

数字だけ比較すると、オール電化のほうがわずかながらも安いことがわかります。ただし、前述のようにガスには都市ガスとプロパンガスがあります。都市ガスはプロパンガスより料金が安いので、世帯によってはオール電化よりも電気+都市ガスのほうが安くなるケースもあります。

初期費用を比較

エコキュートなど初期費用の高さがネックのオール電化

オール電化にする場合は、給湯をエコキュート(ヒートポンプ技術により空気の熱でお湯を沸かす高効率給湯機)、キッチンコンロをIH(induction heating:電磁誘導加熱)クッキングヒーターにするのが一般的です。初期費用は、導入する機種にもよりますが、工事費込みで60~80万円程度です。さらに、蓄熱暖房機を導入した場合は100万円を超えることも少なくありません。

一方、ガス(ここでは都市ガス)併用の場合は、ガス給湯器とガスコンロを設置するのが標準です。こちらも機種によるものの、配管工事込みで20~50万円程度が相場になります。プロパンガスの場合でも、給湯器とコンロで使用する際の工事費は15万円程度であるため、オール電化の初期費用は、ガスに比較してかなり高額であることがわかります。

オール電化が向いている人

ここでは、オール電化住宅に向いている人の特徴について説明します。

プロパンガスを利用している

一般的に、プロパンガスは都市ガスに比べてガス代がかさみます。したがって、プロパンガスの供給エリアの場合は、電気とガスを併用すると割高になるケースが多く、オール電化にすることで光熱費が安くなる可能性があります。

仕事などで日中家にいないことが多い

オール電化用の電気料金プランは、昼間の使用料金が高く、夜間は安くなる設定です。このため、仕事などで日中は家を空けることが多く、昼間の電気使用が少ない人にとってはオール電化の割安感が大きくなるでしょう。

小さな子どもや高齢者がいる

小さなお子さんがいる家庭はオール電化が安心

ガスコンロは炎が出るため、キッチンに熱がこもりやすく、空気も汚れます。さらに、火が燃え移って火事になるリスクもありますし、ガス漏れが生じるおそれもあります。オール電化でIHコンロにすると、それらのリスクが回避できるので、小さい子どもや高齢者がいる家庭にとっては安心感が生まれます。

ただし、IHのような電気機器にも漏電などがあるため、絶対に火災が起きないというわけではありません。

電気代の節約が苦でない

オール電化にすると、光熱費を一本化できるのもメリットです。請求や基本料金も一元化できて、一度に光熱費の請求額が把握できます。エネルギーの使用量なども把握しやすくなるので、省エネや節電も行いやすくなるでしょう。省エネ・節電に熱心な人に向いているといえます。

ガス併用が向いている人

続いて、電気とガスの併用が向いている人について考察してみましょう。

都市ガスを利用している

都市ガスを利用している家庭であれば、通常の使い方をしている限りオール電化より光熱費が安くなる場合が多いでしょう。

強火で料理をしたい

強火の調理をしたい人にはガスが必要

料理好きな人にとっては、ガスコンロが使えるガス併用のほうが向いているかもしれません。IHクッキングヒーターの場合は使用できる調理器具が限定されてしまい、たとえば土鍋や耐熱ガラスなどは使えません。また、IHは強火にしてフライパンを振るような炒め物には不向きです。ガスコンロのほうが火加減を見やすいというメリットもあります。

初期費用を抑えたい

ガス併用の際に導入される給湯器やコンロに比べて、オール電化のエコキュートとIHクッキングヒーターは工事費を含めても割高になります。初期費用を抑えたい場合にはガス併用のほうが良いでしょう。

まとめ

家を建てる際、オール電化にするか、電気とガスの併用にするかは悩ましい問題です。それぞれにメリットとデメリットがあるので、目先のコストだけにとらわれず、家族のライフスタイルや長い目で見て、どちらが良いのかを考えてみる必要があるでしょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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