8月12日から西日本を中心に大雨が降り続き、各地で土砂崩れや川の氾濫など大きな被害をもたらしました。7月には豪雨によって熱海市で大規模な土石流災害が起きました。近年、大雨や台風で水害・土砂災害が多発しているので、これから住宅購入を考えている人は、できるだけ災害リスクの低いところを選ぶべきでしょう。

熱海の土砂災害は発生後1ヶ月以上がたち、被害の全体像も概ねわかってきています。

さまざまな災害の具体的な対策を提供する、だいち災害リスク研究所の横山芳春所長 はこの災害についてこう言います。

「被害が大きかった伊豆山は、土地の成り立ちを記した土地条件図という地図を見ると、「土石流堆」という地域に区分されています。土石流堆とは土石流がくり返し起きることで、この土地ができたという場所です。次に、ハザードマップを見ると、『警戒区域・土石流』と一致しています。つまり、ノーマークだった場所ではなかったということになります」

自然の原理原則に基づいて災害が起きている

近年の傾向について、横山さんはこう指摘します。

「水害については、河川がいつ氾濫してもおかしくない『氾濫危険水位』を超える事例が増えています。ここ最近の台風・長雨等の災害は、同時多発的かつ広域に被害が発生しています。そして、水害・土砂災害が起きて不思議だという場所では起きていません。崖は当然のように崩れ、水は低い所に集まり、川は溢れて土を下流側に運んで豊かな農地を作るという機能がありますが、自然の原理原則に基づいて災害が起きやすい場所で起きています」

温暖化のような気候変動、そして熱海の例にあるように土地の人工改変(盛土など)が被害増大に拍車をかけているようです。裏を返せば、人間の方から自然災害が起きやすい場所を宅地開発して住んでいるといえそうです。

災害リスクの低い立地を知るべき

よく、「日本は台風や地震が多く自然災害大国だから、どこに住んでも災害による被害を受ける可能性があるのでは」という声を聞きます。しかし、横山さんは「立地によって災害リスクはまったく違う」と断言します。災害リスクの低い立地を知ることで、自分が築こうとしている住まいが被災する恐れを最大限抑えられるわけです。

「自宅が危険な場所にあるのかどうか、どんな対策をしたらよいのかを考えて避難の必要性を考えます。できれば家を購入する前に、どんな災害に注意すべきかを知っておくことが望ましいです」(横山さん)

今年5月20日に「改正災害対策基本法」が施行されたことにより、従来の「避難勧告」が廃止されて、「避難指示」に一本化されました。避難指示の意味は、「危険な場所から避難」ですが、そもそも「危険な場所」とはどこでしょうか。

「例えば、水害リスクに関しては、水防法に基づくハザードマップが作成されている自治体では、これを確認しましょう。『家屋倒壊等氾濫想定区域』は、近くの堤防が決壊した場合などに、一般的な建築物(家屋)が倒壊・流出する危険性が高い区域を示しています。この区域では、直ちに区域外への避難が必要です。次に注意すべきが、水害の際に想定される水の深さ『想定浸水深』が自分の住まいの床の高さを超えている場合です。この場合も区域外への避難が必要です」(横山さん)

出典:だいち災害リスク研究所

東京都では「浸水リスク検索サービス」 をネットで公開しており、横山さんは「センチ単位の想定浸水深、浸水継続時間、地盤高が表示されるので使いやすい」と評価します。よくありがちな「想定浸水深1メートル以上3メートル未満」などの大まかな表示ではなく、「想定浸水深1.77メートル」のようにピンポイントで表示されるので、浸水対策に活用しやすいと言います。

 

土砂災害で警戒するべき地域は?

出典:だいち災害リスク研究所

土砂災害は法的に、主に3つに分かれています。

「1.急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)、2.土石流、3.地すべり、の3つです。それぞれ原因がまったく違います。一番気をつける必要があるのは土石流です。大量の土砂が一気に山から谷へと流れるため、河川地域はレッドゾーンに指定されています。このゾーンは『住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるところ』です。また、土石流に関しては、イエローゾーンでも可能な限り避難が必要です」(横山さん)

土砂災害の可能性があると予想される地域は「土砂災害警戒区域」として指定され、イエローゾーンは正式には「土砂災害警戒区域」、レッドゾーンは「土砂災害特別警戒区域」といいます。

ハザードマップを利用するときの注意点

ハザードマップは住宅をピンポイントでリスク判定する目的で作られたものではありません。「雨量が何ミリ」のように何らかの想定で作られているので、将来的にその想定自体が変わることはあり得ます。必ず“想定外”があるということに気をつけましょう。

ハザードマップで「色が付いている場所(浸水等が想定されている区域)=要注意、色が付いていない場所=安全」と画一的に受け止めることはできません。

「静岡大学の調査によると、洪水や河川の増水によって亡くなった方の59%は、想定浸水区域の外で遭難された事例があるそうです。一方、遭難した場所は、92%が低地と呼ばれる川沿いの低い土地だったことがわかっていますので、地形情報をしっかり見れば、場合によってはハザードマップ以上にしっかり災害リスクを知ることができます。この調査では、土砂災害でも24%が区域外で遭難したということを報告しています。ハザードマップがないときでも、どういう災害が起きているのか、すべて傾向がありますので、それを知れば自分の住んでいる場所からどんな災害に注意すべきかがわかります」(横山さん)

出典:だいち災害リスク研究所

現在は住宅を購入する際、不動産業者に水害リスクの説明が義務付けられています。不動産取引において説明しなければならない重要事項に「水害ハザードマップ」を活用した水害リスクの説明が追加された形です。しかし、既に住んでいる区域の水害リスクについては自ら情報を集めるしかありません。本格的な台風シーズンの前に一度、自治体に水害ハザードマップの有無を問い合わせてみてください。

取材協力:だいち災害リスク研究所

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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