窓辺や玄関、廊下、キッチンなどでアリを発見。いつの間にか列を成していて、退治しても次から次へとやって来る…といった経験はありませんか。食べこぼしなどに群がる様子を不快に感じる人も多いでしょう。場合によっては、かまれることもあります。そこで今回は、アリの侵入経路や、家の中で見つけたときの対処法について、アース製薬研究所の有吉立さんへの取材を基に解説します。

家の中に入ってくる可能性のあるアリの種類

日本には、約300種類ものアリがいるといわれていますが、そのうち、家の中で見掛けるのは2~3ミリメートル程度の小さいアリです。

アリは、その食性から、「雑食性」と「吸蜜性」に大きく分けられます。

「雑食性」のアリ

虫の死骸を好みますが、砂糖や植物の蜜も食べています。餌を持って運んでいるのは、大抵がこのタイプで、民家の周辺でよく見られます。

「吸蜜性」のアリ

主に砂糖やアブラムシが分泌する蜜を食べています。餌を持って運ぶことはあまりなく、雑木林といった緑の多い所に多くいます。

家の中に、どちらのアリが入ってくるかというと、実は両方とも可能性大。というのも、人間の食品は、アリにとって大変なごちそうとなるからです。家は自然界ではあり得ない糖分や、上質なたんぱく源の宝庫であり、ごちそう目当てにやって来るのも無理はありません。

近年は、「雑食性」でもともとは外来種のイエヒメアリによる被害が国内で増えています。イエヒメアリは、土がなくても巣を作れるため、壁紙の裏やちょっとした隙間など、家の中で増えることもできるやっかいもの。一度大繁殖すると、駆除が難しいといわれています。

1匹見つけたら要注意? 仲間が侵入してくる可能性は?

アリはフェロモンを使って“道しるべ”を作るので、1匹見つけたら、仲間がいると思ってOK

アリは、女王アリを中心に、おすアリ、兵隊アリ、働きアリなどが集団で生活する、社会性を持つ昆虫です。働きアリの数が一番多く、巣作りや餌の確保、幼虫の世話などの役割を担っています。餌担当の働きアリは、食料を日常的に探索しており、見つけると持ち帰ったり、仲間に知らせたりします。1匹見掛けたら、近くに巣があったり、仲間がいたりすると思っていいでしょう。(外出先から帰宅した人の衣服に付いたアリの可能性も考えられますので必ずとは言い切れません)

アリは、複数のフェロモンをうまく使い分け、情報交換する昆虫です。同じ種類でも、巣ごとに違うフェロモンを使う、高度なコミュニケーション技術を持っています。

餌を見つけた働きアリは、餌を持ち運ぶための体内組織「社会胃」に餌をためて巣に持ち帰りますが、同時に、フェロモンを使って巣までの道しるべを残します。仲間はそれをたどってやって来るため、行列ができるのです。

このフェロモンの道しるべが残っているうちは、次から次へとやって来ます。実は、巣の外にいるアリは巣全体のほんの一部といわれています。巣の中で多くのアリが予備軍として待機しているので、見えるアリだけを退治してもきりがない、というわけです。

アリの侵入経路を断つには?

アリは、小さな穴や隙間から家の中に侵入すると考えられます。もし、侵入口が特定できるなら、パテで埋めるなどして塞ぐことで阻止できます。

しかし実際には、人が確認しづらい場所だったり、サイズだったりするので、特定は簡単ではありません。そんなときは、玄関やアルミサッシなど、アリが入って来そうな場所や、以前見掛けた場所に、侵入防止効果や殺虫効果のある薬剤を使用してみましょう。スプレータイプや粉末タイプがあるので、場所によって使い分け、侵入を防ぎます。

ただし、外からやって来ていると思っていたら、家の中やベランダのプランターなどに巣を作っているケースもあるので注意が必要です。

やっぱり巣ごと退治したい!

持ち帰らせるタイプの毒餌剤を置くと巣ごと駆除できる可能性大

侵入口と思われる箇所を塞ぎ、見えているアリを駆除したとしても、フェロモンが残っていれば、また仲間がやって来ます。その際には、巣の丸ごと退治を検討しましょう。

巣の場所がわかる場合は、その近くにまくシャワータイプの駆除剤や、巣穴にノズルを差し込んで全滅させるエアゾールタイプが有効です。巣の場所が不明なら、巣に持ち帰らせるタイプの毒餌剤を置くことで、巣ごと全滅させることが可能です。

また、家の中にいるアリを発見したとき、すぐに退治できる速効性のスプレーを常備しておくと便利です。

アリの駆除には、さまざまな商品がバラエティー豊富に販売されています。それらを用途によって使い分けること、さらには組み合わせると、より高い効果を得られるでしょう。

まとめ

巣の外で活動するほんの一部のアリたちは、残りの仲間を養うために必死です。餌を探し出し、見つけたら教え合って、協力して持ち帰ろうとします。次から次へとやって来て、不快に思うかもしれませんが、見方を変えれば、けなげな生き物ともいえます。まずは、食べこぼしなどを片づけ、侵入経路を塞ぐなどして、室内への侵入を阻止しましょう。それでも入ってきてしまったら、薬剤による駆除がお薦めです。

 

取材協力
アース製薬研究所生物研究課
課長 有吉立さん
東京の美術専門学校を卒業後、家具店店員、陶芸教室講師などを経て入社し、害虫の飼育員になったという、めずらしい経歴の持ち主。
有吉さんが働く研究所があるのは、兵庫県赤穂市。瀬戸内海に面した風光明媚な場所に建つ近代的な施設で、ゴキブリだけでも18種100万匹を飼育。ほかにも、蚊とハエで10万匹、ダニ1億匹など、約100種の害虫を飼育し、研究しています。
著書に幻冬舎刊『きらいになれない害虫図鑑』があります。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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