女性の生涯年収はどのくらい? 出産後も定年退職まで働き続けるには?

女性が退職まで働き続けた場合、生涯年収はどれくらいになるのでしょうか。女性はライフスタイルやライフステージによって働き方が大きく異なります。結婚や出産の有無、出産後に復職するかどうかなどが個人によって違うため、就労状況による収入差も大きくなっています。

今回は、女性の生涯年収について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

女性が退職まで働いた場合の生涯年収は?

女性がフルタイムの正社員で60歳の退職まで働き続けた場合、生涯年収(生涯賃金)はいくらくらいになるのでしょうか。ここでは、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計―労働統計加工指標集―2019」をもとに、女性の生涯年収について解説していきます。

正社員で働いた場合の女性の生涯年収

女性がフルタイムの正社員で退職まで働き続けた場合の生涯年収(退職金を含まない)は、中学卒で1億4,490万円、高校卒で1億5,020万円、高専・短大卒で1億7,590万円、大学・大学院卒で2億1,670万円となっており、学歴が高いほど生涯年収も高くなっていることがわかります。

企業の規模による生涯年収を比べてみても、従業員が多く企業規模が大きいほど、生涯年収が高くなる傾向があります。

また、同一企業で定年退職まで働いた場合との比較は以下のとおりです。

出典:ユースフル労働統計―労働統計加工指標集―2019|独立行政法人労働政策研究・研修機構

このように、同じ企業で定年退職まで働いたほうが、生涯年収が高くなっています。大学・大学院卒の人だけでなく、高専・短大卒の人も2億円を超える生涯年収を得られる可能性があります。

女性の生涯年収を男性と比較すると?

女性の生涯年収を男性と比較した場合、どのような差があるのでしょうか。2017年の男女の生涯年収を比較すると、以下のようになります。

※学校を卒業しただちに就職し、60歳で退職するまでフルタイムの正社員を続ける場合(同一企業継続就業とは限らない) 出典:ユースフル労働統計―労働統計加工指標集―2019|独立行政法人労働政策研究・研修機構

このように、男女の生涯年収を比較すると、男性よりも女性のほうが、生涯年収が低くなっています。

男性はどの学歴でも生涯年収が2億円以上となっていますが、女性で2億円を超えているのは、大学・大学院卒の人のみです。このように、女性は男性よりも大幅に生涯年収が低いことがわかります。

また、学歴別だけでなく、企業規模別にみた場合でも、やはり女性の生涯年収は男性よりも低くなっています。日本では、生涯賃金における男女差はかなり大きいといえるでしょう。

女性が生涯年収2億円を達成するには?

女性で生涯年収2億円以上を達成できる可能性がある人は、大学・大学院卒で100人以上の企業で働いている人です。大学・大学院卒であれば、100~999人の中規模企業であっても、生涯年収2億円を達成できる可能性があります。

また、1,000人以上の企業における、学歴ごとの生涯年収は以下のようになっています。

出典:ユースフル労働統計―労働統計加工指標集―2019|独立行政法人労働政策研究・研修機構

このことから、1,000人以上規模の企業であれば、「高校卒」や「高専・短大卒」であっても生涯年収2億円を達成できる可能性が高まります。

これらの調査結果を考え合わせると、「学歴が高いこと」と「働く企業規模が大きいこと」の2点が、生涯年収2億円を達成するポイントといえます。

女性の働き方と生涯年収の関係

女性は男性に比べてライフスタイルが多様なため、働き方も個人によって大きく異なります。ただ、生涯年収は「働き方」に大きく影響されます。大きな生涯年収を得たい場合は、どのように働くかということについて、慎重に考えることが大切です。

ここでは、女性の働き方と生涯年収の関係について詳しく解説します。

女性の働き方のパターンと生涯年収

女性の働き方にはさまざまなパターンがあり、それぞれで生涯年収が異なります。ここでは、大卒女性の働き方を3パターン想定し、どのような生涯年収の額になるのかを考えてみましょう。

まず一つ目は、同一企業で定年退職まで働き続けるパターンです。働いている期間に育児休業や時短勤務があった場合、ずっとフルタイムで働くよりも給与が少なくなる場合があるものの、生涯年収が2億円を超える可能性が高いといえます。

二つ目は、大学卒業後に非正規社員として働き、定年退職まで働き続けるパターンです。この場合も、育児休業を取得した場合は生涯年収が下がると予想されますが、それでも生涯年収は1億円以上が見込めます。

三つ目は、出産を機に退職し、非正規社員やパートとして再び働き始めるパターンです。この場合の賃金は、再就職の時期や労働期間によるものの、生涯年収は一番低く、1億円未満となります。

このことから、生涯年収を増やすためには正社員・非正規社員にかかわらず、同じ企業で働き続けることが重要ということがわかります。

出典:大学卒女性の働き方別生涯所得の推計|ニッセイ基礎研究所

正社員は出産後復職するケースが多い

生涯年収を増やすには、出産後に復職し、そのまま60歳の定年まで働き続けることがポイントです。今までは出産後復職しないケースが多かったのですが、最近は出産後に復職し、仕事を続ける人が増えています。

特に、正社員はパートや派遣社員に比べて「育児休業の取得率」や「就業継続率」が高いことが特徴です。

正規の社員とパート・派遣における第1子出産後の就業継続率と、育児休業利用率は以下のようになっています。

出典:第Ⅱ部 夫婦調査の結果概要:第4章 子育ての状況|国立社会保障・人口問題研究所

2010年~2014年に第1子を出産して復職した人の割合は、正規の社員で69.1%です。しかし、パート・派遣では25.2%にとどまっており、両者で大きな差があることがわかります。

また、育児休業取得率は正規の社員で59.0%、パート・派遣社員で10.6%となっています。このことから、正規の社員のほうが育児休業を利用している人が多いことがわかります。

これらの調査結果から、正規社員のほうが育児休業を取得しやすく、ライフスタイルに変化があっても働き続けやすい環境があると判断できます。

女性が出産後も働き続けるためには?

今までの調査データをもとに考えると、同一企業において正社員で働いている場合は、育児休業や短時間勤務を利用しやすいため、出産後も復職しやすいと考えることができます。

ただ、復職後に仕事と育児を両立するには企業の環境だけではなく、保育園への入所が可能であることや、夫などの家族の協力が得やすいことも重要です。

近年は働き方改革により、長時間労働が改善されてきています。また、ライフスタイルに合わせた働き方ができるように、テレワークの導入に取り組む企業も増えてきています。

女性の生涯年収を上げるためには、出産後も働き続ける必要がありますが、就業を継続するには、女性の働きやすい環境が整っているかどうかが大きなポイントです。

女性の就業継続率が上がると、企業としても優秀な人材の確保につながります。そのため、企業にとっても、女性が働きやすい環境を整えることは重要であるといえます。

まとめ

女性が定年まで退職せずに働き続けた場合、生涯年収は多くて2億円ほどです。ただし、女性の生涯年収は就労状況によって大きく変わります。生涯年収を増やすには出産後も働き続けることが大切ですが、そのためには育休や時短勤務を利用できるかどうかや、保育園への入所、家族の協力なども必要です。

定年まで仕事を続けて生涯年収を多くしたい場合は、ライフスタイルに変化があっても働き続けられるような企業を検討するようにしましょう。

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