24時間換気は「常時オン」が正解! 窓開け換気だけじゃない、換気の基本

コロナ禍で、住まいの「換気」に関する意識が高まっています。暑くなると、換気で室温が上がるのを気にする人も多いでしょう。住まいの換気について、正しい知識を持っていると適切な換気ができるようになりますよ。

換気は窓開けだけじゃない? 押さえておきたい換気の基本

まず、換気の基本を理解しましょう。換気は、家の中に外から新鮮な空気を取り込んで、家の中の汚れた空気を外に出すことです。つまり、風の入り口と出口を用意して、家の中に風の通り道を作って、全体の空気を入れ替えるというのが基本です。

締め切った家の中では、空気中のウイルスや細菌などが室内にとどまり続け、増殖するリスクもありますから、定期的に空気を入れ替えるための換気が必要なわけです。

コロナ禍で知られるようになりましたが、家庭用エアコンには換気の機能はありません。室内の空気を吸い込んで、冷房では冷やして、暖房では暖めてから室内に戻すという仕組みだからです。

では、どうやって換気をすればいいのでしょうか?
株式会社CoLifeが2020年3月に東京都の30歳以上1,000人に調査した結果を見ると、室内を換気する際、実に62.1%が「窓を開ける」と回答しています。換気=窓開けと思っている人が多いということでしょう。

住まいの室内を換気する場合に行うこと

出典:CoLife実施調査(2020年3月実施)

次に多いのが「(レンジフードや浴室・トイレの)換気扇をつける」の18.6%で、「換気口を開ける」はわずか2.0%でした。換気口は住宅の居室の壁などに換気のために開けられた穴で、参考としてわが家の換気口を例示しておきます。最近はカバー付きの換気口が主流になっています。

わが家(マンション)の換気口(カバーのない古いタイプ)。つまみを回して開け閉めできます(筆者撮影)

実は、住宅は換気口や換気扇などを使って、窓を開けなくても換気ができるようになっていて、必要な換気量を確保するように設計されています。換気の方法は、入り口(給気)と出口(排気)の組み合わせによって次の3つに分かれます。なお、窓や換気口を開けて換気をすることを「自然換気」と呼び、キッチンや浴室の換気扇のように機械を使って換気することを「機械換気」と呼びます。

・第1種換気:給気/機械換気、排気/機械換気
・第2種換気:給気/機械換気、排気/自然換気
・第3種換気:給気/自然換気、排気/機械換気

では、住まいで最も多い換気の方法はどれでしょう? 
現時点では、「第3種換気」が多いといわれています。わが家の場合も第3種換気です。給気は換気口を開けることで、排気はキッチンのレンジフードや浴室、洗面所、トイレの換気扇をつけることで行います。

コロナ禍ではこまめな換気が求められています。意識的に住宅内に風の通り道を作るように窓開けをしたり、給気口を開けてキッチンの換気扇などを動かして換気したりを定期的に行うとよいでしょう。なお、居室や水回りの扉は、下の部分に隙間をつくることで、扉を開けなくても風が通るように設計されています。

第3種換気の場合は意識的に住んでいる人が換気を行う必要がありますが、実は、新しい住宅では「第1種換気」が採用されています。それには理由があります。

2003年7月以降の住宅には「24時間換気システム」が義務付け

「シックハウス症候群」というワードを聞いたことがあるのではないでしょうか。住宅が高気密化したことで、建材や家具などから化学物質が発散され、室内の空気を汚染し、そのことで居住者の健康が損なわれるもので、一時大きな社会問題になりました。

これを防ぐために、内装仕上げに使用する建材に制限を加えるとともに、「24時間換気システム」の設置を義務付けるという、建築基準法の改正が行われました。2003年7月に改正法が施行され、これ以降に着工された住宅は、図のように給気ファンと排気ファンを使う「機械換気設備」が必ず設置され、1時間当たりに住宅の空気の半分が入れ替わる(換気回数0.5回/hといいます)換気量が確保されています。

つまり、24時間換気システムをオンにしておけば、常に2時間ごとに住宅の空気が入れ替わるように換気されるというわけです。

改定建築基準法に基づくシックハウス対策(戸建て)

出典:国土交通省「快適で健康的な住宅で暮らすためにー改正建築基準法に基づくシックハウス対策―

もちろん、窓を開けるなどして、積極的に換気を行うことも大切です。特に今はコロナ禍で、こまめな換気が奨励されています。厚生労働省では、商業施設向けの情報ではありますが、窓開けによる換気について、「2方向の窓」を「1回」「数分間」全開にする換気を毎時2回以上確保することを推奨しています。

感染リスクを下げるためには、24時間換気システムに加え、適宜窓開け換気をするのがよいでしょう。

24時間換気システムも正しく使わないと機能しない

しかし、「24時間換気システム」が正しく使われていないことが多いのです。

旭化成建材株式会社が2021年3月に「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査を実施したところ、「24 時間換気が法律で義務付けられていること」を「聞いたこともない」・「聞いたことはあるが意味は知らない」と回答した人は 69.0%でした。さらに、住宅の築年数別に見ていくと、確実に24時間換気システムが設置されているであろう「築10年以内」の住宅に住んでいる人でも、48.5%が義務化について知らないという結果になりました。

 

出典:旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果について

また、換気方法について聞いたところ、24時間換気システムを利用しているという人は「築10年以内」の人でも63.4%で、利用していない、あるいは設置されていることを知らないという人も多いことがうかがえます。

また、先ほどのCoLifeの調査で「24時間換気システムについて、『換気口』を常時開けておくことが必要だと知っていたか」と聞いた結果、「知っていた」のは35.3%だけでした。

24時間換気システムについて、換気口を常時開けておくことが必要だと知っていたか

出典:CoLife実施調査(2020年3月実施)

24時間換気システムを正しく利用するには、常時オンにしておき、換気口を開けておくことが大切です。また効率的に換気をするためには、換気扇や換気口にフィルターが付いている場合は、定期的なフィルターの掃除や交換も求められます。
ゆっくりではあっても外気を取り込むために、夏は暑く冬は寒くなることを嫌う人や、電気代がもったいないと思う人などがいて、スイッチを切ってしまうことも多いようです。スイッチをオンにしてこそ効果を発揮するのが、24時間換気システムです。なぜ設置されているのかを理解して、上手に活用するようにしましょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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