年収の何倍でマイホーム予算を組むべき? 「年収倍率」と「返済負担率」で考える住宅価格

マイホームの購入を検討する際、多くの人にとって一番気になるのは購入価格。自身の世帯年収で買えるのか、住宅ローンを利用した場合には月々の返済ができるのかといったお金に関する心配事は、マイホーム購入における大きな問題です。無理なく購入可能な住宅価格の目安を知る指標の一つに「年収倍率」があります。今回は年収倍率や返済負担率(返済比率)をキーワードに、住宅購入の予算や住宅ローン借り入れ額について考えていきましょう。

年収倍率とは

住宅購入予算を決めるうえで基準となる数字の一つに「年収倍率」があります。年収倍率とは、購入者(または世帯全体)の年収に対する物件購入価格の比率を表す数字のこと。たとえば、年収1,000万円の人が4,000万円の住宅の購入を検討する場合、年収倍率は4,000万円÷1,000万円=4倍ということになります。当然のことながら、同じ購入価格でも高年収の人のほうが年収倍率は低く抑えられるということです。

また、金融機関が住宅ローン申し込みの審査をする際、融資の判断基準の一つとしても年収倍率が用いられます。よく「住宅の購入価格は年収の4倍から5倍程度が妥当」などといわれますが、実際のところはどうなのでしょうか。続いては、年収倍率の実態について深掘りしていきましょう。

年収倍率の全国平均は

年収倍率の実態を確認するため、住宅購入者のデータを分析した調査結果から全国の平均値を見ていきます。

【フラット35】利用者調査から

まずは、住宅金融支援機構の「2019年【フラット35】利用者調査」をもとに、年収倍率に関するデータを分析してみましょう。この調査は、【フラット35】を利用して物件を購入した世帯のデータをベースにしているので、年収倍率の実態をよりリアルに示した数字といえます。

出典:2019年度【フラット35】利用者調査※注文住宅については予定建設費と土地取得費を合計した金額、それ以外の住宅の購入については購入価額を指す。

全体の集計件数は83,513件。融資区分別(建物種類別)に年収倍率を見てみると、注文住宅6.5倍、土地付注文住宅7.3倍、建売住宅6.7倍、マンション(新築)7.1倍、中古戸建て5.5倍、中古マンション5.8倍となりました。

調査結果から、新築に比べ中古のほうが年収倍率は低めであることがわかります。新築のなかでも土地付注文住宅や新築マンションは購入者年収・年収倍率ともに高め。全体を通して見ると、年収倍率はおおむね6~7倍に集中しています。

東京カンテイ「新築マンション年収倍率」調査から

新築マンションの年収倍率は高い傾向

続いて、2020年10月29日に東京カンテイが発表した「新築マンション年収倍率」の調査結果を見ていきましょう。この年収倍率は、各都道府県で分譲された新築マンション価格を70平方メートルあたりの価格に換算したうえで、都道府県ごとの平均年収(内閣府発表「県民経済計算」を基にした予測値)で割ったものです。

前節の【フラット35】利用者調査は実際に住宅を購入した世帯の数字です。一方、こちらは新築マンションの販売価格を平均年収で割って求めた数字なので、実際に購入されたものではないことに注意が必要です。

全国で最も年収倍率が高かったのは東京都で、実に13.26倍に達しました。東京都は全国一の平均年収を誇りますが、新築マンションの価格も群を抜いて全国一。平均年収の水準以上に、新築マンション価格が高いということがわかります。

東京都のほかに年収倍率が10倍を超えているのは、秋田県・福島県・神奈川県・京都府・大阪府・沖縄県の6府県。宮城県や石川県も10倍に迫っています。前年の数字と比較すると首都圏と近畿圏、中部圏の年収倍率は縮小傾向にありますが、そのほかの地方では拡大傾向が見て取れる点には注目です。

また、前節で紹介した【フラット35】の調査でも触れましたが、新築マンションは年収倍率が高い傾向にあることが浮き彫りになった結果ともいえるでしょう。

(出典)東京カンテイ プレスリリース 新築マンション年収倍率

年収は手取りと違うことに注意

年収と手取りは違う

年収倍率を確認するうえで気をつけなければならないのが、「年収」とは給料の手取り額ではないという点です。年収とは、税金や社会保険料が差し引かれる前の年間総支給額のこと。企業に勤める人や公務員のような給与所得者の場合、賞与(ボーナス)や諸手当などの所得も含まれます。

月々の住宅ローン返済は手取りから支払うものなので、年収倍率のみで判断してしまうと、実際の返済額が思った以上に高額になってしまう危険性があるため注意が必要です。

無理なく返済できることが基本

住宅ローンは無理なく返済できることが大前提

年収倍率は、あくまでも世帯の年収額だけをベースに購入できそうな住宅価格を示した基準です。実際には、同じ年収であっても世帯ごとや個人ごとに月々の支出は異なるため、年収倍率だけで購入予算や住宅ローン借り入れ額を考えることはできません。

年収倍率に余裕があっても、ほかの支出額が大きい世帯ではローン返済が困難になる危険性もあります。一番の問題は、現在の支出状況で住宅ローンを毎月無理なく返済し続けられるかどうかなのです。

返済負担率とは

月々のローン返済額を検証するうえで指標となるのが「返済負担率」です。返済負担率とは「年収に対する住宅ローンの年間返済額の割合」を指す数字のこと。たとえば、年収1,000万円の人が月々15万円(年間180万円)の住宅ローンを返済する場合、返済負担率は18%ということになります。返済負担率が高くなるほど、返済が困難になるリスクも高まるといえるのです。

金融機関はどう見ているのか

住宅ローンの審査においては、融資対象者の返済能力を表す指標として返済負担率が重視されます。一般的に、返済負担率30~35%程度を借り入れ限度額として設定している金融機関が多いようです。月収30万円の人であれば、月々の返済額が9~10.5万円程度になる金額までしか借り入れられないということになります。

たとえば、【フラット35】の返済負担率は「年収400万円未満で30%以下」「年収400万円以上で35%以下」と定められています。年収が低いと返済負担率が厳しめになる点は要注意です。

金融機関によっては返済負担率50%以下といった設定をしているところもありますが、おおむね30~35%程度を借り入れ限度額と考えればいいでしょう。

借り入れ限度額だけで考えない

借り入れ限度額はあくまでも住宅ローンで借り入れられる上限の金額です。借り入れができるからといって、将来にわたって確実に返済できるという保証はありません。

当然のことながら、住宅費用以外にも月々の支出はたくさんあります。収入に対して住宅費用が占める割合が大きすぎると、生活水準を下げざるを得なくなるかもしれません。理想の生活を求めてマイホームを購入したにもかかわらず、日々の生活に困るようでは本末転倒です。さらに、子どもの誕生や進学といったライフイベントによって支出が増えることもあるでしょう。

将来も無理なく返済を続けていくためには、余裕のある借り入れ額を検討すべきなのです。

返済負担率は25%を目安に

住宅ローンを組む際の借り入れ限度額は、返済負担率30~35%程度が目安とお話ししました。しかし、借り入れ限度額いっぱいで住宅ローンを組んでしまうと将来返済が困難になるリスクがあります。加えて、自動車ローンや教育ローンといった住宅費用以外のローンを組む余地も残しておきたいところです。ライフステージに合わせて無理なく返済し続けていくためには、住宅ローンの返済負担率を25%以下に設定すべきとされています。

まとめ

多くの人にとって、マイホームは一生で一番の買い物です。金額が大きいだけに、理想を追求するあまり無理をしてしまうと、生活全般に影響する大きなリスクを背負うことになりかねません。マイホームを取得する際には、年収倍率と返済負担率を考慮した無理のない資金計画を立てるようにしましょう。

(最終更新日:2022.01.27)
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