近隣トラブルにはさまざまなものがありますが、騒音関係は最も発生しやすいトラブルです。マンションに引っ越しをする際は、誰もが「隣の人が騒がしい人だったらどうしよう」と心配になることでしょう。そこでこの記事では、騒音についての基礎知識をふまえ、防音性の高いマンションの選び方について解説します。

コロナ禍で増える騒音トラブル

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自宅で過ごす時間が長くなったという人も多いでしょう。通常であれば会社や学校などに行っている時間帯に、自宅で過ごす時間が長くなったためか、騒音に関するトラブルが増えています。子どもの声や足音、ウェブ会議の音などへの苦情が管理会社のみならず、警察に通報されることも少なくないようです。警視庁によると、昨年5月には都内で1万7,000件余りの通報があり、過去5年間で最も多くなったということです。

騒音トラブルのなかは重大事件に発展した事例もあり、新型コロナウイルスがもたらすさまざまな不安や自由に活動できないストレスが、このような形で噴出しているといえるでしょう。

「何が騒音か」は主観的な要素が大きい

騒音トラブルは増加傾向にあるうえに解決が難しいトラブルです。これは、人によって音の感じ方が異なるため、「何をもって騒音というのか」が、どうしても主観的なものになってしまうからです。しかし、日常生活を送るうえで、いっさい音を出さずにいることなどあり得ません。

騒音かどうかを判断するには客観的なデータや基準が必要です。法的に騒音と認定される際の線引きは、「社会生活を営む上で我慢するべき限度」かどうかになります。「受忍限度」といわれるもので、環境省が示す「騒音に係る環境基準」が一つの基準になります。

掃除機の音がだいたい60デシベル

これによると、用途地域や道路に面しているかどうか、また昼間と夜間の別で基準値は変わりますが、住宅地の騒音基準は40~60デシベル以下です。40デシベルは図書館内や昼間の静かな住宅地などに相当し、会話に支障がないレベルです。これに対し、60デシベルになると、1メートルの距離での洗濯機、掃除機、トイレの洗浄音などの音が相当し、3メートル以内の距離でも大声を上げないと会話が成り立たず、うるさいと感じるレベルになります。

(出典)騒音に係る環境基準について

騒音には空気音と固体音がある

騒音には「空気音」と「固体音」の2種類があり、その対策もそれぞれ異なります。以下、解説します。

空気音(空気伝搬音)

空気音(空気伝搬音)とは、空気の振動として伝わる音のことです。人の話し声やペットの鳴き声、ステレオやテレビの音、車の音などはいずれも空気音になります。隣の部屋から聞こえる騒音も、ほとんどの場合が空気音です。空気音は音源に近ければ近いほど騒音レベルが高くなり、遠ざかればレベルが下がります。

空気音は音を伝える空気をシャットアウトすることで防音効果が得られるため、比較的防音対策を講じやすい音といえます。音を遮るように塀や壁、防音扉を設置することで、騒音を防ぐことができます。

固体音(固体伝搬音)

固体音(固体伝搬音)とは、力や振動が床や壁、天井などに入り、振動として固体の中を伝わり、離れた住戸の空間で聞こえる音のことです。上の階から聞こえる歩行音、椅子を引く音などは固体音に当たります。ほかにも、エレベーターの機械音や換気扇の回転音、水道管内を流れる水の音なども固体音です。物質を介して振動が伝播する固体音は、空気音に比べて防音対策が難しい騒音になります。

固体音にも「軽量衝撃音」「重量衝撃音」の2種類があります。「軽量衝撃音」は比較的軽めで高音域の音で、ナイフやフォークなどを落としたときの音が一例です。「重量衝撃音」は鈍くて低い音で、上階の人がドスンと床に飛び下りたり、ドスドス歩いたりしたときの音が典型的なものです。

鉄筋コンクリート造なら心配いらないのか

鉄筋コンクリート造のマンションは、木造や軽量鉄骨造のアパートに比べて音が伝わりにくく、騒音が少ないイメージがあるかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。

空気音を遮るのは戸境壁

空気音の伝わり方は「戸境壁」(こざかいかべ)の構造で決まります。戸境壁とは、集合住宅の隣の住戸との間にある壁のことで、厚みが大きいほど遮音性能が高まります。木造や軽量鉄骨造の集合住宅の戸境壁は、合板などの軽い素材が多いため、空気音が伝わりやすくなります。

鉄筋コンクリート造のマンションは、壁がコンクリート造で厚みもあるように思えますが、実際はどうでしょうか。

高級なタワーマンションでも戸境壁は乾式が採用されている

中低層マンションの場合は戸境壁もコンクリート造が多いのですが、タワーマンションの壁はほとんどの場合、コンクリート造ではありません。高層のタワーマンションは、壁をコンクリートにしてしまうと、自重が大きくなり過ぎてしまいます。自重が大きくなると、それを支えるための梁や柱も大きくせざるを得ず、コスト高になります。このため、コンクリートに比べて軽量である「乾式壁」を採用しています。乾式壁は、鉄骨を石膏ボードで挟んで、その中に吸音材を充てんしたものです。

一方、軽量鉄骨造の集合住宅では、戸境壁にALC(軽量気泡コンクリート)を採用するケースが増えています。なかには、木造でもALCパネルを採用している物件もあります。ALCはコンクリートでありながら軽量であり、耐火性、断熱性に優れているだけでなく、遮音性も高い建材です。

このように、建材などの性能は年々向上しているため、必ずしも軽量鉄骨造は防音性が低く、鉄筋コンクリート造であれば高いとは言い切れなくなっているのです。

固体音は建物自体に響く

上の階の住人が飛び跳ねるなど、直接床を振動させることで発生する固体音は、鉄筋コンクリートのように堅牢な造りの建物でも生じてしまいます。固体音は壁や天井の全体を振動させるため、発生源の特定が難しいのも特徴です。上から音が聞こえているように思われても、発生源は必ずしも上階とは限りません。効果的な防音対策を講じているマンションを見極めることも、マンション選びのポイントになりそうです。

防音性の高いマンションを選ぶには

騒音トラブルは被害者になる場合もあれば、加害者になってしまう場合もあります。騒音に悩まされたり、トラブルに巻き込まれたりしないためにも、物件選びは慎重に行いましょう。ここでは鉄筋コンクリート造であることを前提に、防音性の高いマンションを選ぶ際のチェック項目を列挙します。

戸境壁の構造をチェックする

前述したように、空気音を防ぐには戸境壁がポイントになります。戸境壁の構造がコンクリートであれば、壁厚が最低でも150ミリメートル、できれば180ミリメートル以上ある物件を選ぶようにしましょう。

壁厚150ミリメートルは一般的なマンションで、180ミリメートル以上であれば遮音性が高いマンションと見ることができます。

戸境壁の構造が乾式壁であれば、遮音等級がD-50以上を選ぶことをおすすめします。遮音等級とは、JIS(日本工業規格)で定められた遮音性能のことで、隣室の話し声などをどのくらい遮断するかを表しています。「D値」と「L値」があり、D値が空気音の遮音性能の指標、L値が固体音の遮音性能の指標です。D値は値が高いほど遮音性能が高く、L値は値が小さいほど遮音性能が高くなります。

床スラブは厚みが決め手

固体音のうち、重量衝撃音を防止するには、建物の構造体である床スラブの厚みが重要になります。「スラブ」とは、鉄筋コンクリートの床のことです。スラブの厚みは、通常で180ミリメートル、子どもが走り回るなら200ミリメートル以上のものを選ぶと良いでしょう。

重量衝撃音と軽量衝撃音の遮音等級は、それぞれLHとLLで表示されます。いずれも数値が小さいほど遮音性が高くなりますが、LH50、LL45が日本建築学会の学会推奨標準です。

遮音マットは軽量衝撃音対策として有効な方法

軽量衝撃音対策として、近年では「二重床工法」(浮床工法)も多く採用されています。これは、スラブと床板の間に空間を作ることで、遮音性を高める工法です。また、二重床工法は遮音性に優れているだけでなく、断熱にも効果があります。さらに入居者が自力で行う対策として、遮音シートや遮音マット、遮音フローリングなどがあり、より高い防音効果が期待できます。

まとめ

快適なマンションライフを送るためには、立地や間取りだけでなく、防音性能も物件選びのポイントにしたいところです。物件の構造や採用されている工法、建材などをチェックすることで、騒音トラブルに巻き込まれるリスクが低減します。専門用語など、わからないことがある場合は、不動産会社に質問するなどして、後悔のない物件選びをしましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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