新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、人々の住宅に対するニーズ、考え方などが大きく変わりつつあるといわれています。物件の形態別に見ると、マンションより戸建て、新築より中古住宅を検討する人が増えているようです。なぜなのでしょうか。

コロナ禍で戸建て検討者が増える傾向に

リクルートは新型コロナウイルス感染症第3波の真っただ中の2020年12月、「『住宅購入・検討者』調査(2020年)」を実施しました。その主眼はコロナ禍で住宅取得に関する消費者の意識がどう変わってきたのかを把握することに置かれているようです。

それによると、たとえば住宅の取得を検討するうえで戸建て住宅かマンションかの選択に関しては、図表1のようになっています。19年の調査では、「ぜったい一戸建て」と「どちらかといえば一戸建て」の合計は59%だったのが、20年調査では60%とつづき、逆に「ぜったい集合住宅」と「どちらかといえば集合住宅」の合計は28%から25%に減っています。

戸建て派そのものの数字はさほど変化はありませんが、戸建て派の合計から集合住宅派の合計を引いたポイントは、19年はプラス31ポイントに対して、20年はプラス35ポイントに増えています。後に詳しく触れるように、住宅形態に関する検討対象は、20年のコロナ禍で戸建てにシフトしつつあるといっていいでしょう。

出典:株式会社リクルート「『住宅購入・建築検討者』調査(2020年)

東海や関西地方で戸建て検討者増加が目立つ

これをエリア別に見ると、首都圏では「ぜったい一戸建て」「どちからかといえば戸建て」の戸建て派は52%に対して、「ぜったい集合住宅」「どちらかといえば集合住宅」の合計は30%で、その差は22ポイントでした。

これに対して東海では戸建て派が75%に達する一方で、集合住宅派は12%にとどまり、その差は63ポイントにまで開いています。関西は東海ほどではありませんが、それでも戸建て派が68%で、集合住宅派は20%ですから、48ポイントの差があります。

首都圏でも戸建て派のほうが多いのですが、東海や関西に比べると集合住宅派の割合が高く、その対極が東海とことができます。東海圏では、格段に戸建てを検討する人の割合が高いのです。

名古屋圏ではもともと戸建て志向が強い

戸建てかマンションかの選択について、もともと三大都市圏の中では、東海地方が最も戸建て取得の意向が強く、マンションよりも戸建てを希望する人が多いといわれています。コロナ禍でもそれは変わらないようです。

国土交通省が毎年実施している「令和元年度『土地問題に関する国民の意識調査』」によると、図表2にあるように、今後望ましい住宅形態として、全国平均では「戸建て」60.3%、「マンション」13.6%、名古屋圏で「戸建て」64.0%、「マンション」9.0%となっています。

東京圏と大阪圏では「戸建て」派の割合が全国平均を下回る5割強にとどまっていますが、名古屋圏では6割を超え、3人に2人近くは戸建てを希望しているのです。もともと戸建て住宅を希望する人が多い土地柄であるだけに、コロナ禍でいっそうその思いが高まっているのかもしれません。というのも、次に見るように、さまざまな面で戸建て住宅のほうがコロナ禍に対応しやすいというメリットがあるからです。

出典:国土交通省「令和元年度『土地問題に関する国民の意識調査』

新型コロナ対策にはマンションより戸建てが適している?

コロナ禍で住宅に対するニーズにどんな変化が起こっているかを整理すると、次のような点に集約できそうです。

1. 在宅勤務の増加などでワークスペースの必要性など、広い住まいが求められるようになっている
→ 全般的にマンションより戸建ての住宅面積が広い

2. コロナ禍で先行き不透明感が強いので、予算を抑えたいという思いが強くなっている
→高騰しているマンションに比べて戸建てのほうが安くて負担を軽減できる

3. マンションに比べて戸建てのほうがコロナ対策を取りやすい
→ 外部の人間や家族以外との接触機会が少ないなど

4. 在宅時間が長くなり、子どもが騒ぐなど生活音の問題が気になる
→ 戸建てなら上下階や両隣の物音をさほど気にしなくてよい

マンション価格高騰で戸建ての優位性が高まる

まず、1の価格に関して、2020年の首都圏のデータで比較してみると、新築マンションの平均価格は不動産経済研究所の調査では6,083万円で、東日本不動産流通機構による新築戸建ての成約価格の平均は3,486万円です。中古住宅を見ても、やはり東日本不動産流通機構による中古マンションは3,599万円で、中古戸建ては3,110万円です。

新築にしろ、中古にしろ、マンションよりは戸建てのほうが安く手に入り、その分、住宅ローンの負担が軽減されます。特にこの数年、マンションの価格高騰が目立っているだけに、相対的に戸建てが割安感を増していると見ることもできるでしょう。

コロナ禍で先行きが不透明で、収入減少などのリスクが従来以上に高まっていますから、住宅を取得するにしても、できるだけ負担を小さくしておきたいところ。その点では、マンションよりは戸建てということでしょう。

住宅面積は戸建てのほうが30平方メートル以上広い

次に住宅の広さを見ると、国土交通省の調査結果は図表3の通りでます。分譲戸建て住宅(建売住宅)の平均は108.5平方メートルに対して、分譲マンションは74.2平方メートルですから、34.3平方メートルも建売住宅のほうが広くなっています。

中古住宅についても同様で、中古戸建が112.5平方メートルに対して、中古マンションは71.4平方メートルですから、戸建のほうが41.1平方メートルも広いのです。これだけの差があれば、ワークスペースも、長い在宅時間を有意義に過ごすための趣味やフィットネスのスペースなども取れるでしょうし、家族も適度な距離感で日常を過ごせます。

コロナ禍で家族全員が狭い住まいで鼻を突き合わせる時間が長くなった結果、家族関係がうまくいかなくなったり、崩壊したりするケースが少なくないといわれています。ゆったりとした戸建てなら、その心配が少なくなるのではないでしょうか。

出典:国土交通省「令和2年度住宅市場動向調査

新築より中古住宅を検討する割合が高まっている

同じ戸建て住宅でも、中古住宅なら、さらに安くて広い住まいを求めやすくなります。

このリクルートの調査では、図表4にあるようには住宅の形態別の検討者の割合について2020年の結果から19年の結果を引いたポイントを示しています。ポイントが高ければ、コロナ禍の20年には検討する人の割合が高まったことになり、、ポイントが低ければ、検討する人の割合が減ったことになります。

「新築戸建て」においては、全体としてはマイナス1ポイントですが、東海はプラス11ポイントと飛び抜けて高くなっています。先にも触れたように、東海地方での戸建て志向の強さを物語っています。

なかでも、注目されるのが、「中古戸建て」。各都市圏ともに検討者が増加しており、とりわけ東海ではプラス10ポイントになっています。

また、中古マンションも首都圏がプラス4ポイント、関西プラス2ポイントと検討者が増えるなど、中古住宅を検討する人たちも増えているのです。

資料:リクルート「住宅購入・建築検討者調査(2020年)

 

戸建てならコロナ対策も取りやすくなる

以上のように、戸建て住宅、なかでも中古戸建てへの関心が高まっているのですが、それには、コロナ対策という面での優位性も挙げられそうです。

マンションではエントランス、エレベーター、共用廊下など家族以外との接触機会が多くなりますし、住居内でも家族間の距離がとりくにい面があります。

それに対して、戸建てなら外部の人と接触する機会を少なくできますし、万一、家族の誰かが濃厚接触を疑われる事態になっても、1階と2階でゾーニングするなど、距離を取りやすくなります。

もちろん、いつまでもコロナ禍が続くものではなく、いずれは収束するでしょうが、いきなりコロナ禍以前の生活に戻れるわけではないでしょう。当面はソーシャルディスタンスなど、ニューノーマルの生活が求められるでしょうから、戸建てや中古住宅の優位性は当分揺らぐことはないのかもしれません。

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