木造住宅・家屋の基本構造│工法による違いや木の家の魅力とは?

国土交通省が発表した「建築着工統計調査報告書」によると、2020年の新設住宅着工戸数のうち90%が木造住宅です。2011年の新設木造住宅の割合は86%だったことから、根強い木造住宅ブームが伺えます。ではその木造住宅の建て方にはどんな種類があるのかご存じでしょうか。今回は、木造住宅について、工法による違いや木の家の魅力を解説していきます。

 

木造住宅の種類

木造住宅のつくり方は軸組式「木造軸組工法(在来軸組構法)」と壁式「木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法や木質パネル工法)」に分けることができます。木造軸組工法は柱を立て、梁を水平に渡し、筋交いという斜めの材を入れて家を建てます。空間上の点を結ぶようにして建物を構成するのが特徴です。
木造壁式工法は面を組み立てて構造物をつくっていく工法です。それぞれの特徴は以下の通りです。

 

項目

木造軸組工法

木造枠組壁工法

建築コスト

自由度が高い分、高くなりがち

各施工業者により異なる

建物を支える建材

柱・梁・筋交い・耐力壁

壁4面・天井・床

工期

フルオーダーが可能なため、比較的長くなる傾向あり

規格化されているので短い

間取り

自由度が高い

自由度は低い

開口部

大きく取れる

さまざまな種類から選べる

規格化されているため制限あり

壁の強度を保つため、あまり大きくは取れない

将来的なリノベーション

増築や減築も可能

間取りの変更も容易

大規模リノベーションは難しい

取扱業者

取扱業者は多いが、業者の技術力によって品質に差が生まれる

ハウスメーカーが主体

規格化されているので品質は安定

 

木造軸組工法

木造軸組工法は、日本の神社仏閣の建築にも採用されており、「在来工法」とも呼ばれています。

柱と梁で建物を支える木造軸組工法は、狭い敷地や変形した土地でも建てやすく、自由度が高い設計が可能です。ただし、フルオーダーでキッチンや窓の位置まで細かくこだわることができるため、工期と予算が高くなる側面もあります。また、安心できる施工業者と出会えるかもポイントです。

近年多く見られる、子どもが独立した後の減築や、介護のためのリフォームなどは比較的容易でしょう。

 

木造軸組工法の施工の流れ

木造軸組工法の大まかな流れは以下のように進んでいきます。

基礎工事
建物の土台となる基礎をつくる工事です。地盤を固め、鉄筋を配置し、コンクリートを打っていきます。鉄筋の太さ、数量、間隔をチェックする配筋検査、コンクリートの養生期間等もあるため、1ヶ月ほどかかる場合もあります。

建方工事
木材を家の形に組み立てていく作業です。最近は工場でプレカットされた木材を現場で組み立てるので、組み立てから上棟までにかかる期間は1〜2週間ほどです。

仕上げ工事
組み上がった構造材に屋根材や外壁材を取り付け、内装仕上げのための下地をつくっていく作業です。順序としては、まず資材を濡らさないように屋根工事からスタートし、その後サッシを設置、中間検査を受けます。

内装仕上げ工事
内装を仕上げていく工程です。クロスや床を貼り、建具や収納棚などの取り付けを行います。ユニットバスやシステムキッチンなど設備の取り付けも行うため、かなり多くの人が出入りします。

完成
竣工検査の合格を経て、物件の引渡しとなります。

 

木造枠組壁工法(2×4工法)

木造枠組壁工法は通称2×4工法(ツーバイフォー工法)と呼ばれ、戦後の北米で効率よく家を建てることを目的に開発されました。日本では明治時代から流通しています。2インチ×4インチの構造材でつくった木枠に構造用合板を打ちつけたパネルを使用して建てていきます。

面で建物を支えるため、木造軸組工法の建物に比べて耐震性・機密性・断熱性に優れており、部材の多くが工場生産なので工期が短いというのが特徴です。

主にハウスメーカーが主体となって供給しているため、間取りや各種パーツが規格化されており、品質にも差異はないといえます。しかし、壁で重量を支えるという仕組み上、壁に設ける窓や入り口の大きさに制限があるため、大規模なリノベーションは難しいという面があります。

 

木造枠組壁工法の施工の流れ

木造枠組壁工法による施工の流れも在来工法と同じく「基礎工事〜建方工事〜仕上げ工事〜内装仕上げ工事〜完成・引渡し」と進んでいきます。ただし、この工法では面で建物を建てていくので、「建方工事」の進め方が在来工法とは異なります。

木造枠組壁工法による「建方工事」は1階の床組からはじまります。柱を建てる前に床に断熱材を敷き詰め、合板を貼り付け、その後工場で生産された壁のパネルを1階外壁→内壁の順に建てていきます。

1階の床兼2階の天井を貼り、同様に2階外壁→内壁の順で壁を建てたら小屋組を行います。この段階で、既に壁があるため、「仕上げ工事」の作業量が少なくなり、工期を短縮できるのです。

 

木造住宅の基礎

住宅を建てるときに土台となるのが「基礎」です。土台となる基礎は建物の下に見えるコンクリート部分を指します。建物に強度があっても、基礎が弱いと沈下してしまったり、建物が傾いたりするなどの危険があるので、建物に最適な基礎をつくることが大切です。

基礎には「布基礎」と「べた基礎」の2種類があり、木造住宅には「べた基礎」が多く用いられています。

 

布基礎

布基礎の部分

布基礎(読み方:ぬのきそ)とは、建物の壁のある位置に沿って設けられる基礎のことです。
比較的強くて良好な地盤面に用いられ、べた基礎よりもコンクリートの量が減るため、コストは抑えられます。

ただし、構造体として基礎と基礎の間の地盤面が鉄筋コンクリートで覆われていないため、べた基礎に比べて防湿対策とシロアリ対策が欠かせません。

 

べた基礎

べた基礎の部分

べた基礎とは、建物の底面全体にコンクリートを敷き詰めてつくる基礎のことです。家の荷重を底面全体で支えるため、地盤への負荷が少なく、布基礎よりも剛性が強いのが特徴です。

かつての木造住宅は布基礎が一般的でしたが、住宅金融支援機構が発表した「【フラット35】住宅仕様実態調査報告(平成29年度)の概要」によると、全国でフラット35を利用して建てられた戸建てのうち90%がべた基礎を採用していることがわかります。

 

布基礎よりべた基礎が選ばれる主な理由は?
べた基礎が好まれるようになった主な理由は不同沈下(建物の各部位が不均一に沈下すること)とシロアリです。不同沈下の原因は地下資源の採取などさまざまですが、特に埋立地では起きやすく、もし起こった場合、構造部材にヒビが入り、建物が傾いて使えなくなるなどの不具合が起きてしまいます。べた基礎なら、万が一地盤の一部が沈下しても、面で建物を支えているため歪みが生じづらくなります。

また、べた基礎は床下がすべてコンクリートで覆われているため、シロアリが侵入しづらいつくりでもあります。ただし、コンクリートや配管の隙間からシロアリが侵入してくることもあるので、10年に1回程度の定期点検は必要でしょう。

 

木造住宅の魅力とは?

人気のある木造住宅ですが、具体的にどのような魅力があるのでしょうか。ここでは、木造住宅ならではの魅力について解説します。木造住宅の魅力を理解したうえで着工するのがおすすめです。

 

木造住宅の魅力1 木の温もりで癒される

木材には天然の木の香り成分が多く含まれ、人々の心を癒してくれる効果があります。2021年4月の日刊木材新聞では、「ヒノキの香りを嗅ぐと、脳の活動が沈静化され、寝ているときやリラックスしている状態と同じように副交感神経の活動が優位になる」という研究結果を紹介しています。

仕上げ材として木の床材を使用したり、構造材を表に出したりすることで、そんな木のリラックス効果を感じることが可能です。

 

木造住宅の魅力2 デザインの自由度が高い

在来工法では、間取りなどの空間設計の自由度が高いです。新築時だけではなく、将来的な大規模リフォームや減築を行う際にも、木造住宅のほうが自由度の高い増改築をすることができます。

また、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて対応できる工務店が圧倒的に多いため、施工会社の選択の幅が広いという意味でも自由が高いと言えるでしょう。

 

木造住宅の魅力3 断熱性・吸湿性・放湿性

木はコンクリートに比べて熱伝導率が低く、断熱性が高い素材です。断熱剤の開発も進み、鉄筋コンクリート住宅でも「夏は暑く冬寒い」という住宅は少なくなりましたが、断熱性能を高めるための処置が必要になるので、費用が高くなります。また、木は吸湿性も高く、湿度の高い季節にも対応できるため、ダニやカビの予防にもつながります。

 

木造住宅の魅力4 比較的材料費が安く済む

木材は鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて材料費が安く、基礎工事にかかる手間もかかりません。内装デザインや設備に予算をかけたい場合は建築費用を抑えるという意味でも木造住宅は心強い味方になるでしょう。

 

まとめ

木造住宅とひと口に言っても、工法や建てるエリアによって、その正解はさまざまです。土地の下調べから、施工会社選びまで、下準備は欠かせないと言えるでしょう。木造住宅の魅力を存分に発揮できるよう正しく情報収集をして、快適なマイホームを建てることをおすすめします。

(最終更新日:2021.09.29)
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